公開日 2025/04/25 07:00

デノンはディスクを諦めない。CD/レコード派こそ最上位「3000NEシリーズ」を手にしてほしい理由

PMA-3000NE、DCD-3000NE、DP-3000NEを一斉試聴

圧倒的な静寂感、S/Nの高さ。CDも緻密で滑らかに再生

試聴のスピーカーにはB&W「802 D4」を用意。DCD-3000NEはデジタル出力やディスプレイを切るピュアダイレクトモード、PMA-3000NEもデジタル回路やディスプレイを切るアナログモード、及びソースダイレクト機能を有効にし、S/N良くアナログ入力の音を聴けるセッティングとした。まずはデジタル系DCD-3000NEでのSACD/CD再生を試す。

今回の試聴にはディスクでしか楽しめない付加価値の高いものとして、ディスク素材やマスターテープからのDSDフラット・トランスファーという高音質追求型のSHM仕様SACDを選んでみた。クラシックでは諏訪内晶子『シベリウス&ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲』(ユニバーサル:UCGD-9007)からシベリウスのヴァイオリン協奏曲、そしてカルロス・クライバー指揮/ウィーン・フィル『ベートーベン:交響曲第5番/第7番』(ユニバーサル:UCGG-9006)から第7番、ジャズではオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(ユニバーサル:UCGU-9011)から「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」を聴く。 

再生を始めて驚くのは圧倒的な静寂感、S/Nの高さである。諏訪内晶子はオーケストラの佇まい、微小な動きと柔らかく丁寧なタッチで浮き立つソロヴァイオリンとのコントラストの良さを重層的に描く。

ヴァイオリンのボディの響きも有機的に表現し、伸び良くゆったりと響く濃密なハーモニーの深さ、抑揚の良さも耳に残る。管弦楽器の華やかな旋律、低域パートの厚みとのバランスも良い。音場の広がり、奥行き感も自然に感じられ、さらにもう一つ上のクラスのシステムで聴いているかのような安定的なサウンドである。

クライバーの第7番は広がりの良さ、シームレスな空間性を実感。ハリ良く滑らかな管弦楽器の緻密な響き、厚みと密度の高さを感じるハーモニーの荘厳さ、太鼓の制動性も良い。コントロールされた、精緻なオーケストラが目前に展開するが、優雅で厚み良い響きの抑揚感、凝縮されたエネルギーの熱量の高さもダイレクトに捉えている。

オスカー・ピーターソン・トリオの演奏も立体的に感じられ、コシのある中低域が印象的なピアノの温かみある響き、アタックの柔らかさを丁寧に描き出す。どっしりと落ち着き良く捉えたウッドベースの胴鳴りも耳馴染み良くまとめ、弦のニュアンスも粒立ち良く艶やかで、生き生きとした質感をクリアに聴かせてくれる。ドラムセットの密度感、ボディの厚みもしっかりと再現し、スネアブラシのアタックも粒の細かさをつぶすことなく、しなやかに引き出してくれた。

PMA-A110同様に、ギャングエラーやクロストークの面で強みを持つ電子式ボリュームを採用

 

続いては一般的なハイブリッドSACDの小林研一郎・指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団『ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」』(オクタヴィア:OVCL-00652)から「バーバ・ヤーガの小屋」、『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』(F.I.X.:KIGA10)より「届かない恋」「夢であるように」も聴いてみる。

「展覧会の絵」はアビーロード・スタジオでの録音であり、ホールとは違う残響の短さ、楽器の定位の明確さが聴き処の1つだ。管弦楽器の旋律の鮮やかさ、艶感もストレートに表現。金管パートの浮き上がりの良さも印象的だ。

制動良く定位も正確に描く大太鼓の響きは、余韻も滲まず、アタックのダイナミックさを堪能できる。ティンパニやスネアの描き分け、定位の違いも明確であり、リリースのコントロールの良さ、空間再現力の高さを実感した。

弱音部における楽器のディティールの細やかさも見事であり、木管の指使いや小音量での低域パートの描き分けも正確だ。ステージの奥行きも丁寧に引き出し、広がりの自然さも申し分ない。おどろおどろしいドラの怪しげな響きも立体的かつ情感豊かに描いている。

『Pure2』のエネルギッシュなホーンセクションのキレ、鮮やかな立ち上がりのシャープさが楽曲の躍動感をより良く演出。ピアノやシンバルの響きも透明度が高く、リアルなトーンを聴かせる。ウッドベースやキックドラムの密度感、弾力良くスムーズな音運びも耳当たり良く、各パートの分離の良さが際立つ。

「夢であるように」のボーカルは肉付きも程よく、口元のウェットさ、艶良く滑らかな質感を生々しく表現。華やかな響きを持つミュートトランペットの浸透性も、抒情的な表現に彩りを添えている。

ここまでSACDを集中的に聴いてきたが、DSDフォーマットの持つ空間性の高さ、包み込むような柔らかな余韻の心地よさを感じさせつつ、楽曲の芯たる音像の密度、その温度感も損なうことなく、真摯に再現してくれる印象を持った。

さらにUltra AL32 Processingの真価も確認すべく、CDも用意。マイケル・スウィート『I'm not your Suicide』(BIG3 RECORDS:804983950020)から「Coming Home」と、反射膜に純プラチナを用いた、プラチナSHMのエイジア『アルファ+2』(ユニバーサル:UICY-40059)より「嘘りの微笑み」を聴いた。

独自のアナログ波形再現技術「Ultra AL32 Processing」を搭載。PCM音声を最大1.536MHz/32bitへと拡張し、オリジナルのアナログ波形を再現。限りなく原音に近い音で再現するという。

 

マイケル・スウィートはボーカルや楽器の音離れ良い描写性も相まって空間表現の良さが際立つ。リズム隊のフォーカス良く高密度な質感、締まり良いアタック感も音場のクリアさに繋がっている。きめ細やかでエネルギッシュなボーカルはハスキーさも的確に再現し、口元のハリ感、落ち着いた佇まいを滑らかに描く。

スティール・ギターやエレキギターのクリーンなピッキングも丁寧にまとめ、コシの太さと動きのキレもバランス良く両立。個々のパートの分離やディティールをほぐれ良くスムーズに描き分け、余韻の爽やかさ、伸び良くゆとりのある楽器のアコースティックな響きも鮮明に引き出す。

エイジアは80年代らしいリヴァーブの豊かさ、余韻の長さと華やかさが特徴だが、純プラチナ反射膜による効果や3000NEシリーズならではの緻密な空間表現力によって、その透明感、余韻の階調性の細やかさを実感。ボーカルの澄み切ったハリの良い、クリーンでヌケ鮮やかな描写も輝きに満ちている。

シンセサイザーの純度の高さ、シンバルの華やかな響き、エレキギターのクリーントーンの爽やかさもとても心地が良い。そこまで音数は多くないため、音場の奥行きの深さ、透明感を十二分に確認できる。いずれのCDも非常に緻密かつ滑らかなサウンドであり、Ultra AL32 Processingがもたらす情報量の多さ、解像感の高さを味わうことができた。

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