PR3000シリーズの懐の深さを徹底検証
デノン新フラグシップ「3000シリーズ」の実力は? 「PMA-3000NE」「DCD-3000NE」をB&WとDALIで聴き比べ!
昨年、デノンから待望のフラグシップシリーズとして登場したプリメインアンプ「PMA-3000NE」とSACDプレーヤー「DCD-3000NE」。今回は、ヨーロッパを代表する2大スピーカーブランド「B&W」と「DALI」のハイエンドモデルを組み合わせて「3000シリーズ」の懐の深さを徹底検証した。
新作デノンの最新フラグシップ「3000シリーズ」を、現代の高性能スピーカーと組み合わせたらどんな音の世界が見えるのか。今回は、ヨーロッパを代表する人気ブランドBowers & Wilkins(以下、B&W)とDALIを本誌試聴室に並べて比較試聴した。PMA-A110とPMA-SX11が昨年末生産完了となる中、新たなトップモデルとして登場したのがPMA-3000NEだ。これは創立110周年記念モデルPMA-A110をベースとして、全面的に内容を刷新した設計だ。
筆者も愛用するSX1 LIMITEDシリーズは、サウンドマスター山内慎一氏が掲げる「Vivid & Spacious」というコンセプトをフルに具現化したモデルであるが、それをよりお求めやすくしたモデルがA110だった。その後にPMA-900HNEやPMA-1700NEといったミドルクラス機が登場したが、PMA-3000NEは、それらのノウハウを最大限活かしながら、さらなる高みを目指したモデルとなる。
改めてPMA-3000NEを見よう。構成の中心はもちろんUHC MOSシングルプッシュプル増幅回路だ。少ない素子で大電流を取り出すHiFiアンプの理想形であり、回路をシンプルにすることでセパレート機のような抜群の駆動力を持つ。
もうひとつが可変ゲイン型のプリ部で、高精度な電子ボリュームを採用。これによってノイズフロアをぐんと下げ、S/Nを大幅に改善。山内氏によるカスタム高品位パーツの大量投入と入念なサウンドチューニングが冴える。本格的なD/Aコンバーター回路を搭載したことも見逃せないポイントだ。
相棒となるDCD-3000NEは、同じく110周年記念モデルのDCD-A110をベースに、さらなる低ノイズ化、シグナルパスの最短化。そして山内氏渾身のサウンドチューニングで音を磨きあげた新フラグシップSACD/CDプレーヤーである。ディスクドライブには制振性に優れたアドバンスドS.V.Hを搭載。エレクロトニクスでは384kHz/32ビットDACとUltra AL32 Processingにより原音に忠実なCD再生を実現している。高性能DACを4基使ったQuad︲DAC構成を採用する。
続いて組み合わせたスピーカーである。これからのデノンの象徴となる3000シリーズだけに、実力的にも文句なしのハイクラスを用意した。B&Wの「805D4 Signature」は、2ウェイ機805D4の特別バージョンで、シリーズ最上位となる。仕上げも実にラグジュアリーだ。
B&Wに対して、DALIはフラグシップKOREの技術を取り入れた最新モデル「EPIKORE3」である。コアテクノロジーを採用した3ウェイブックシェルフで、ウッドファイバーコーンのウーファーをベースに、EPIKOREミッドレンジとハイブリッドトゥイーターにて構成する。その音作りは好対照といえる。
本誌試聴室でも「リファレンス」として活躍するなど“音を正確に再現する”のがB&Wだとすれば、“音ではなく音楽を楽しむ”つまり「ミュージカリティ」を大事にしているのがDALIなのだ。
本誌試聴室にはB&WとDALIのスピーカーが並ぶ。なかなか壮観だ。どう聴き比べるかだが、前半/後半に分けたのでは印象が薄まるため、作品ごとに1曲聴いたら繋ぎ替えて試聴した。
まず聴き慣れた北欧ジャズの『ア・ハート・フル・オブ・リズム(LIVE)』でそれぞれの傾向を探ろう。大ざっぱにいうと、高級オーディオらしいハイレベルな再生の中にも、B&WはS/Nが良くクセがなくてフラット。低音は締まり気味でやはりモニター的だ。DALIは低音がリッチな傾向。クラシックとの相性は良いが、ジャズの微細音も引き出し、ヴォーカルが艶やかで倍音も拡がる。何より生っぽさが特徴的だ。3000シリーズは、そのスピーカーの持ち味を、ナチュラルに引き出している印象だ。
続いて清涼感のあるドイツリート(ソプラノ)と管弦楽『シェラエザード』だ。このクラシック2曲をまとめて聴くと、B&Wは正統派でS/Nと情報量のバランスが実に良い。声楽やピアノの一音一音の聴きどころが実に鮮明だ。オケの広がりを強調せず、くっきりとした輪郭で音像は立体的で彫りが深い。エネルギーも強く、位置情報が正確なこともB&Wの凄さだろう。
DALIは、リボンのハイブリットトゥイーターらしい空気感のある広がり方で、オーケストラの奥行方向も深い。正確でありながらも、音楽的なニュアンスや旨味が加味される。これを含めての表現力が巧みなのだ。シェエラザード姫役のソロ・ヴァイオリンがエキゾチックに歌いあげた。艶やかに奏でる千夜一夜の物語だ。
次はポップスで、バート・バカラックのナンバーをアルフィというバンドがカバーしたアルバムだ。B&Wは軽々と流す感じで、タイトかつリズムセクションの立ち上がりが力強い。「青い影」ではギターのエフェクトやディストーションが気持ち良い。DALIでは女性ヴォーカルが澄みきりクリーンかつしなやかな透明さが魅力。バックの演奏とのハーモニーも豊かである。いずれも高次元なサウンドでありながら、その魅力を3000シリーズは克明に描き分けていく。
次のジャズはお洒落なピアノトリオのアレッサドロ・ガラティだ。B&Wはサウンドそのものが鮮明かつ立体的で、名手ステファノ・アメリオによる優秀録音ぶりが伝わった。
叙情溢れる演奏を楽しむならDALIだろう。これぞイタリアン・リリシズムの極致。3000シリーズとの相性もバッチリで、美しいリズムとグルーヴが楽しめた。
ラストに角田健一のビッグバンド「幻想交響曲」で、スケール感や大パワーの余裕度をチェック。どちらもブックシェルフと思えない朗々たる鳴り方だ。空間いっぱいに精密な壁画が描かれるようで、熱い感動に包まれた試聴であった。
現代は、B&WやDALIに代表される高性能なスピーカーが続々登場しているが、そのスピーカーに対して、アンプの実力が以前にも増して試されるようになってきている印象だ。いうまでもないが、アンプとスピーカーの片方いずれかが良くても音楽再生は成り立たない。まさにオーディオは「切磋琢磨」。互いに磨きあい高めあいながらオーディオは進化を続けてきた。目の前にあるスピーカーを朗々とドライブしてこそオーディオは楽しいのだ。
また今回は、さまざまなSACDやCDといったディスクメディアを試聴したが、デノンが積み上げてきた長いデジタルディスク再生の歴史が、唯一無二のサウンドとして確立していたと強く実感した次第である。「リファレンス」のB&Wと、「ミュージカリティ」のDALIという対照的なスピーカーを、これほどまでに巧みに鳴らしきった3000シリーズとの組み合わせは、まさに現代の理想のオーディオシステムと言えるのではないだろうか。
●定格出力:80W+80W (8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.07%)、160W+160W(4Ω、1kHz、THD 0.7%)●全高調波歪み率:0.01%(定格出力、-3dB時、負荷8Ω、1kHz)●SN比(Aネットワーク):89dB(PHONO/MM、入力端子短絡、入力信号5mV)、74dB(PHONO/MC、入力端子短絡、入力信号0.5mV)、107dB(CD、NETWORK/AUX、RECORDER、入力端子短絡)●周波数特性:5Hz~100kHz(0~-3dB)●入力感度/入力インピーダンス:2.5mV/47kΩ(PHONO/MM)、200μV/100Ω(PHONO/MC)、150mV/15kΩ(CD、NETWORK/AUX、RECORDER)、1.0V/15kΩ(EXT.PRE)●RIAA偏差(PHONO):±0.5dB(20Hz~20kHz)●最大入力:130mV/1kHz(PHONO/MM)、10mV/1kHz(PHONO/MC)●入力端子:RCA×3、PHONO×1、EXT.PRE×1、USB-B×1、同軸デジタル×1、光デジタル×3●出力端子:RCA(RECORDER)×1、ヘッドフォン×1●その他入出力:IRコントロール×1●サイズ:434W×182H×443Dmm●質量:24.6kg●消費電力:400W(待機時消費電力0.2W)●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス
●再生周波数範囲:2Hz~100kHz(SACD)、2Hz~20kHz(CD)●再生周波数特性:2Hz~50kHz(-3dB/SACD)、2Hz~20kHz(±0.5dB/CD)●SN比:122dB●ダイナミックレンジ:115dB(可聴帯域/SACD)、101dB(CD)●高調波歪み率(1kHz):0.0005%(可聴帯域/SACD)、0.0015%(CD)●ワウ・フラッター:測定限界以下●出力レベル:2.2V(10kΩ)●出力端子:RCA×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1●サイズ:434W×138H×405Dmm●質量:16.8kg●消費電力:35W(待機電力0.3W以下)●取り扱い:ディーアンドエムホールディングス(株)
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事はオーディオアクセサリー196号からの転載です
A110シリーズをベースとしながらさらなる高みを目指した
新作デノンの最新フラグシップ「3000シリーズ」を、現代の高性能スピーカーと組み合わせたらどんな音の世界が見えるのか。今回は、ヨーロッパを代表する人気ブランドBowers & Wilkins(以下、B&W)とDALIを本誌試聴室に並べて比較試聴した。PMA-A110とPMA-SX11が昨年末生産完了となる中、新たなトップモデルとして登場したのがPMA-3000NEだ。これは創立110周年記念モデルPMA-A110をベースとして、全面的に内容を刷新した設計だ。
筆者も愛用するSX1 LIMITEDシリーズは、サウンドマスター山内慎一氏が掲げる「Vivid & Spacious」というコンセプトをフルに具現化したモデルであるが、それをよりお求めやすくしたモデルがA110だった。その後にPMA-900HNEやPMA-1700NEといったミドルクラス機が登場したが、PMA-3000NEは、それらのノウハウを最大限活かしながら、さらなる高みを目指したモデルとなる。
改めてPMA-3000NEを見よう。構成の中心はもちろんUHC MOSシングルプッシュプル増幅回路だ。少ない素子で大電流を取り出すHiFiアンプの理想形であり、回路をシンプルにすることでセパレート機のような抜群の駆動力を持つ。
もうひとつが可変ゲイン型のプリ部で、高精度な電子ボリュームを採用。これによってノイズフロアをぐんと下げ、S/Nを大幅に改善。山内氏によるカスタム高品位パーツの大量投入と入念なサウンドチューニングが冴える。本格的なD/Aコンバーター回路を搭載したことも見逃せないポイントだ。
相棒となるDCD-3000NEは、同じく110周年記念モデルのDCD-A110をベースに、さらなる低ノイズ化、シグナルパスの最短化。そして山内氏渾身のサウンドチューニングで音を磨きあげた新フラグシップSACD/CDプレーヤーである。ディスクドライブには制振性に優れたアドバンスドS.V.Hを搭載。エレクロトニクスでは384kHz/32ビットDACとUltra AL32 Processingにより原音に忠実なCD再生を実現している。高性能DACを4基使ったQuad︲DAC構成を採用する。
続いて組み合わせたスピーカーである。これからのデノンの象徴となる3000シリーズだけに、実力的にも文句なしのハイクラスを用意した。B&Wの「805D4 Signature」は、2ウェイ機805D4の特別バージョンで、シリーズ最上位となる。仕上げも実にラグジュアリーだ。
B&Wに対して、DALIはフラグシップKOREの技術を取り入れた最新モデル「EPIKORE3」である。コアテクノロジーを採用した3ウェイブックシェルフで、ウッドファイバーコーンのウーファーをベースに、EPIKOREミッドレンジとハイブリッドトゥイーターにて構成する。その音作りは好対照といえる。
本誌試聴室でも「リファレンス」として活躍するなど“音を正確に再現する”のがB&Wだとすれば、“音ではなく音楽を楽しむ”つまり「ミュージカリティ」を大事にしているのがDALIなのだ。
S/Nが良くフラットなB&Wと拡がる低音で生っぽいDALI
本誌試聴室にはB&WとDALIのスピーカーが並ぶ。なかなか壮観だ。どう聴き比べるかだが、前半/後半に分けたのでは印象が薄まるため、作品ごとに1曲聴いたら繋ぎ替えて試聴した。
まず聴き慣れた北欧ジャズの『ア・ハート・フル・オブ・リズム(LIVE)』でそれぞれの傾向を探ろう。大ざっぱにいうと、高級オーディオらしいハイレベルな再生の中にも、B&WはS/Nが良くクセがなくてフラット。低音は締まり気味でやはりモニター的だ。DALIは低音がリッチな傾向。クラシックとの相性は良いが、ジャズの微細音も引き出し、ヴォーカルが艶やかで倍音も拡がる。何より生っぽさが特徴的だ。3000シリーズは、そのスピーカーの持ち味を、ナチュラルに引き出している印象だ。
続いて清涼感のあるドイツリート(ソプラノ)と管弦楽『シェラエザード』だ。このクラシック2曲をまとめて聴くと、B&Wは正統派でS/Nと情報量のバランスが実に良い。声楽やピアノの一音一音の聴きどころが実に鮮明だ。オケの広がりを強調せず、くっきりとした輪郭で音像は立体的で彫りが深い。エネルギーも強く、位置情報が正確なこともB&Wの凄さだろう。
DALIは、リボンのハイブリットトゥイーターらしい空気感のある広がり方で、オーケストラの奥行方向も深い。正確でありながらも、音楽的なニュアンスや旨味が加味される。これを含めての表現力が巧みなのだ。シェエラザード姫役のソロ・ヴァイオリンがエキゾチックに歌いあげた。艶やかに奏でる千夜一夜の物語だ。
次はポップスで、バート・バカラックのナンバーをアルフィというバンドがカバーしたアルバムだ。B&Wは軽々と流す感じで、タイトかつリズムセクションの立ち上がりが力強い。「青い影」ではギターのエフェクトやディストーションが気持ち良い。DALIでは女性ヴォーカルが澄みきりクリーンかつしなやかな透明さが魅力。バックの演奏とのハーモニーも豊かである。いずれも高次元なサウンドでありながら、その魅力を3000シリーズは克明に描き分けていく。
次のジャズはお洒落なピアノトリオのアレッサドロ・ガラティだ。B&Wはサウンドそのものが鮮明かつ立体的で、名手ステファノ・アメリオによる優秀録音ぶりが伝わった。
叙情溢れる演奏を楽しむならDALIだろう。これぞイタリアン・リリシズムの極致。3000シリーズとの相性もバッチリで、美しいリズムとグルーヴが楽しめた。
ラストに角田健一のビッグバンド「幻想交響曲」で、スケール感や大パワーの余裕度をチェック。どちらもブックシェルフと思えない朗々たる鳴り方だ。空間いっぱいに精密な壁画が描かれるようで、熱い感動に包まれた試聴であった。
互いに磨きあい高めあいオーディオは進化をした
現代は、B&WやDALIに代表される高性能なスピーカーが続々登場しているが、そのスピーカーに対して、アンプの実力が以前にも増して試されるようになってきている印象だ。いうまでもないが、アンプとスピーカーの片方いずれかが良くても音楽再生は成り立たない。まさにオーディオは「切磋琢磨」。互いに磨きあい高めあいながらオーディオは進化を続けてきた。目の前にあるスピーカーを朗々とドライブしてこそオーディオは楽しいのだ。
また今回は、さまざまなSACDやCDといったディスクメディアを試聴したが、デノンが積み上げてきた長いデジタルディスク再生の歴史が、唯一無二のサウンドとして確立していたと強く実感した次第である。「リファレンス」のB&Wと、「ミュージカリティ」のDALIという対照的なスピーカーを、これほどまでに巧みに鳴らしきった3000シリーズとの組み合わせは、まさに現代の理想のオーディオシステムと言えるのではないだろうか。
「PMA-3000NE」 SPEC
●定格出力:80W+80W (8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.07%)、160W+160W(4Ω、1kHz、THD 0.7%)●全高調波歪み率:0.01%(定格出力、-3dB時、負荷8Ω、1kHz)●SN比(Aネットワーク):89dB(PHONO/MM、入力端子短絡、入力信号5mV)、74dB(PHONO/MC、入力端子短絡、入力信号0.5mV)、107dB(CD、NETWORK/AUX、RECORDER、入力端子短絡)●周波数特性:5Hz~100kHz(0~-3dB)●入力感度/入力インピーダンス:2.5mV/47kΩ(PHONO/MM)、200μV/100Ω(PHONO/MC)、150mV/15kΩ(CD、NETWORK/AUX、RECORDER)、1.0V/15kΩ(EXT.PRE)●RIAA偏差(PHONO):±0.5dB(20Hz~20kHz)●最大入力:130mV/1kHz(PHONO/MM)、10mV/1kHz(PHONO/MC)●入力端子:RCA×3、PHONO×1、EXT.PRE×1、USB-B×1、同軸デジタル×1、光デジタル×3●出力端子:RCA(RECORDER)×1、ヘッドフォン×1●その他入出力:IRコントロール×1●サイズ:434W×182H×443Dmm●質量:24.6kg●消費電力:400W(待機時消費電力0.2W)●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス
「DCD-3000NE」 SPEC
●再生周波数範囲:2Hz~100kHz(SACD)、2Hz~20kHz(CD)●再生周波数特性:2Hz~50kHz(-3dB/SACD)、2Hz~20kHz(±0.5dB/CD)●SN比:122dB●ダイナミックレンジ:115dB(可聴帯域/SACD)、101dB(CD)●高調波歪み率(1kHz):0.0005%(可聴帯域/SACD)、0.0015%(CD)●ワウ・フラッター:測定限界以下●出力レベル:2.2V(10kΩ)●出力端子:RCA×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1●サイズ:434W×138H×405Dmm●質量:16.8kg●消費電力:35W(待機電力0.3W以下)●取り扱い:ディーアンドエムホールディングス(株)
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事はオーディオアクセサリー196号からの転載です