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PR3000シリーズの懐の深さを徹底検証

デノン新フラグシップ「3000シリーズ」の実力は? 「PMA-3000NE」「DCD-3000NE」をB&WとDALIで聴き比べ!

公開日 2025/03/21 09:35 林 正儀
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昨年、デノンから待望のフラグシップシリーズとして登場したプリメインアンプ「PMA-3000NE」とSACDプレーヤー「DCD-3000NE」。今回は、ヨーロッパを代表する2大スピーカーブランド「B&W」と「DALI」のハイエンドモデルを組み合わせて「3000シリーズ」の懐の深さを徹底検証した。

DENON プリメインアンプ「PMA-3000NE」528,000円/税込 (写真、上)、SACDプレーヤー「DCD-3000NE」462,000円/税込(写真、下)

A110シリーズをベースとしながらさらなる高みを目指した


新作デノンの最新フラグシップ「3000シリーズ」を、現代の高性能スピーカーと組み合わせたらどんな音の世界が見えるのか。今回は、ヨーロッパを代表する人気ブランドBowers & Wilkins(以下、B&W)とDALIを本誌試聴室に並べて比較試聴した。PMA-A110とPMA-SX11が昨年末生産完了となる中、新たなトップモデルとして登場したのがPMA-3000NEだ。これは創立110周年記念モデルPMA-A110をベースとして、全面的に内容を刷新した設計だ。

PMA-3000NE

筆者も愛用するSX1 LIMITEDシリーズは、サウンドマスター山内慎一氏が掲げる「Vivid & Spacious」というコンセプトをフルに具現化したモデルであるが、それをよりお求めやすくしたモデルがA110だった。その後にPMA-900HNEやPMA-1700NEといったミドルクラス機が登場したが、PMA-3000NEは、それらのノウハウを最大限活かしながら、さらなる高みを目指したモデルとなる。

改めてPMA-3000NEを見よう。構成の中心はもちろんUHC MOSシングルプッシュプル増幅回路だ。少ない素子で大電流を取り出すHiFiアンプの理想形であり、回路をシンプルにすることでセパレート機のような抜群の駆動力を持つ。

スピーカー端子には、経年劣化を防ぐ金メッキ処理の高品位な端子を採用。2系統のスピーカー端子を装備しておりバイワイヤリング接続にも対応する。アナログ音声入出力端子には、高剛性な真鍮削り出しタイプを採用する

デジタル回路用およびスタンバイ用の電源回路は、プリアンプやパワーアンプ用電源回路から独立させて相互干渉を排除。回路間および基板間の主要部の接続には、ワイヤーを用いない設計を採用しノイズの輻射や飛び込みを抑制。ワイヤーの引き回しから生じる音質の個体差も排除している


出力段には微小領域から大電流領域までのリニアリティに優れ、大電流を流すことができる増幅素子「UHC-MOS FET」をシングルプッシュプルで用いるシンプルな回路を採用。高い次元での「繊細さと力強さ」の両立を図った

ノイズの原因である漏洩磁束の影響を打ち消すために、2つのトランスを対向配置するLCマウント方式を採用した、大容量かつ高品位なEIコアトランスを搭載。整流回路には低損失、低ノイズなショットキーバリアダイオードを採用する

もうひとつが可変ゲイン型のプリ部で、高精度な電子ボリュームを採用。これによってノイズフロアをぐんと下げ、S/Nを大幅に改善。山内氏によるカスタム高品位パーツの大量投入と入念なサウンドチューニングが冴える。本格的なD/Aコンバーター回路を搭載したことも見逃せないポイントだ。

相棒となるDCD-3000NEは、同じく110周年記念モデルのDCD-A110をベースに、さらなる低ノイズ化、シグナルパスの最短化。そして山内氏渾身のサウンドチューニングで音を磨きあげた新フラグシップSACD/CDプレーヤーである。ディスクドライブには制振性に優れたアドバンスドS.V.Hを搭載。エレクロトニクスでは384kHz/32ビットDACとUltra AL32 Processingにより原音に忠実なCD再生を実現している。高性能DACを4基使ったQuad︲DAC構成を採用する。

DCD-3000NE


リアパネルには、真鍮削り出し金メッキが施されたRCA出力のほか、同軸デジタルと光デジタルを1系統ずつ装備する

ベースモデルDCD-A110で用いられていたデジタル電源基板やデジタルオーディオ基板、アナログオーディオ基板の間のワイヤーを極力廃止し、小基板を用いた基板間の接続を採用。ノイズの影響の最小化や、ワイヤーの処理のばらつきに起因する音質の個体差を排除することにつながっている


制振性に優れた独自開発の「Advanced S.V.H. Mechanism」を搭載。メカカバーには、新たに1 . 5 m m 厚のアルミニウム合金(A6061)、ディスクトレイにはアルミダイキャスト、メカニズムブラケットには2mm厚のスチールを採用した

同社のアナログ波形再生技術の最上位バージョン「Ultra AL32 Processing」を搭載。PCMデジタル入力信号に対して、前世代の2倍となる1.536MHzへのアップサンプリングと32ビットへのビット拡張処理を行い高音質化を図っている

続いて組み合わせたスピーカーである。これからのデノンの象徴となる3000シリーズだけに、実力的にも文句なしのハイクラスを用意した。B&Wの「805D4 Signature」は、2ウェイ機805D4の特別バージョンで、シリーズ最上位となる。仕上げも実にラグジュアリーだ。


DALI「EPIKORE3」 (2,200,000円・ペア/税込)
SPEC●ユニット:トゥイーター:35mmソフトドーム+リボン、180mmウッドファイバーコーン×1●周波数特性(±3dB):42Hz~34kHz●感度(2.83V/1m):85dB●公称インピーダンス: 6Ω●クロスオーバー周波数:2,800/12,500Hz●サイズ:250W×470H×420Dmm●質量:22kg●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス

B&Wに対して、DALIはフラグシップKOREの技術を取り入れた最新モデル「EPIKORE3」である。コアテクノロジーを採用した3ウェイブックシェルフで、ウッドファイバーコーンのウーファーをベースに、EPIKOREミッドレンジとハイブリッドトゥイーターにて構成する。その音作りは好対照といえる。


B&W「805D4 Signature」 (1,848,000円・ペア/税込)
SPEC●ユニット:25mmダイヤモンド・ドーム・トゥイーター、165mmコンティニュアム コーン・バス/ミッドレンジ●周波数範囲( - 6 d B ): 3 4 H z 〜 3 5 k H z ● 感度(2.83V/1m):88dB●公称インピーダンス:8Ω(最小4.6Ω)●サイズ:240W×440D×373Hmm●質量:15.55kg●取り扱い: (株)ディーアンドエムホールディングス

本誌試聴室でも「リファレンス」として活躍するなど“音を正確に再現する”のがB&Wだとすれば、“音ではなく音楽を楽しむ”つまり「ミュージカリティ」を大事にしているのがDALIなのだ。

S/Nが良くフラットなB&Wと拡がる低音で生っぽいDALI


本誌試聴室にはB&WとDALIのスピーカーが並ぶ。なかなか壮観だ。どう聴き比べるかだが、前半/後半に分けたのでは印象が薄まるため、作品ごとに1曲聴いたら繋ぎ替えて試聴した。


試聴ソフト
(1)【SACD】『リムスキー=コルサコフ;交響組曲「シェエラザード」』井上道義指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団 (2)【SACD】『角田健一ビッグバンド結成30周年「無観客ライブ at 紀尾井ホール」』角田健一 (3)【SACD】『プレイズ・スタンダード vol.1』アレッサンドロ・ガラティ・トリオ (4)【CD】『LIVE - Heart full of Rhythm 』カーリン・ランディンほか (5)【CD】『The Songs Of Burt Bacharach』Alfie! (6)【CD】『シューマン&ブラームス歌曲集』エディット・マティス

まず聴き慣れた北欧ジャズの『ア・ハート・フル・オブ・リズム(LIVE)』でそれぞれの傾向を探ろう。大ざっぱにいうと、高級オーディオらしいハイレベルな再生の中にも、B&WはS/Nが良くクセがなくてフラット。低音は締まり気味でやはりモニター的だ。DALIは低音がリッチな傾向。クラシックとの相性は良いが、ジャズの微細音も引き出し、ヴォーカルが艶やかで倍音も拡がる。何より生っぽさが特徴的だ。3000シリーズは、そのスピーカーの持ち味を、ナチュラルに引き出している印象だ。

続いて清涼感のあるドイツリート(ソプラノ)と管弦楽『シェラエザード』だ。このクラシック2曲をまとめて聴くと、B&Wは正統派でS/Nと情報量のバランスが実に良い。声楽やピアノの一音一音の聴きどころが実に鮮明だ。オケの広がりを強調せず、くっきりとした輪郭で音像は立体的で彫りが深い。エネルギーも強く、位置情報が正確なこともB&Wの凄さだろう。

DALIは、リボンのハイブリットトゥイーターらしい空気感のある広がり方で、オーケストラの奥行方向も深い。正確でありながらも、音楽的なニュアンスや旨味が加味される。これを含めての表現力が巧みなのだ。シェエラザード姫役のソロ・ヴァイオリンがエキゾチックに歌いあげた。艶やかに奏でる千夜一夜の物語だ。


次はポップスで、バート・バカラックのナンバーをアルフィというバンドがカバーしたアルバムだ。B&Wは軽々と流す感じで、タイトかつリズムセクションの立ち上がりが力強い。「青い影」ではギターのエフェクトやディストーションが気持ち良い。DALIでは女性ヴォーカルが澄みきりクリーンかつしなやかな透明さが魅力。バックの演奏とのハーモニーも豊かである。いずれも高次元なサウンドでありながら、その魅力を3000シリーズは克明に描き分けていく。

次のジャズはお洒落なピアノトリオのアレッサドロ・ガラティだ。B&Wはサウンドそのものが鮮明かつ立体的で、名手ステファノ・アメリオによる優秀録音ぶりが伝わった。

叙情溢れる演奏を楽しむならDALIだろう。これぞイタリアン・リリシズムの極致。3000シリーズとの相性もバッチリで、美しいリズムとグルーヴが楽しめた。

ラストに角田健一のビッグバンド「幻想交響曲」で、スケール感や大パワーの余裕度をチェック。どちらもブックシェルフと思えない朗々たる鳴り方だ。空間いっぱいに精密な壁画が描かれるようで、熱い感動に包まれた試聴であった。


互いに磨きあい高めあいオーディオは進化をした


現代は、B&WやDALIに代表される高性能なスピーカーが続々登場しているが、そのスピーカーに対して、アンプの実力が以前にも増して試されるようになってきている印象だ。いうまでもないが、アンプとスピーカーの片方いずれかが良くても音楽再生は成り立たない。まさにオーディオは「切磋琢磨」。互いに磨きあい高めあいながらオーディオは進化を続けてきた。目の前にあるスピーカーを朗々とドライブしてこそオーディオは楽しいのだ。

また今回は、さまざまなSACDやCDといったディスクメディアを試聴したが、デノンが積み上げてきた長いデジタルディスク再生の歴史が、唯一無二のサウンドとして確立していたと強く実感した次第である。「リファレンス」のB&Wと、「ミュージカリティ」のDALIという対照的なスピーカーを、これほどまでに巧みに鳴らしきった3000シリーズとの組み合わせは、まさに現代の理想のオーディオシステムと言えるのではないだろうか。


「PMA-3000NE」 SPEC


●定格出力:80W+80W (8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.07%)、160W+160W(4Ω、1kHz、THD 0.7%)●全高調波歪み率:0.01%(定格出力、-3dB時、負荷8Ω、1kHz)●SN比(Aネットワーク):89dB(PHONO/MM、入力端子短絡、入力信号5mV)、74dB(PHONO/MC、入力端子短絡、入力信号0.5mV)、107dB(CD、NETWORK/AUX、RECORDER、入力端子短絡)●周波数特性:5Hz~100kHz(0~-3dB)●入力感度/入力インピーダンス:2.5mV/47kΩ(PHONO/MM)、200μV/100Ω(PHONO/MC)、150mV/15kΩ(CD、NETWORK/AUX、RECORDER)、1.0V/15kΩ(EXT.PRE)●RIAA偏差(PHONO):±0.5dB(20Hz~20kHz)●最大入力:130mV/1kHz(PHONO/MM)、10mV/1kHz(PHONO/MC)●入力端子:RCA×3、PHONO×1、EXT.PRE×1、USB-B×1、同軸デジタル×1、光デジタル×3●出力端子:RCA(RECORDER)×1、ヘッドフォン×1●その他入出力:IRコントロール×1●サイズ:434W×182H×443Dmm●質量:24.6kg●消費電力:400W(待機時消費電力0.2W)●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス

「DCD-3000NE」 SPEC


●再生周波数範囲:2Hz~100kHz(SACD)、2Hz~20kHz(CD)●再生周波数特性:2Hz~50kHz(-3dB/SACD)、2Hz~20kHz(±0.5dB/CD)●SN比:122dB●ダイナミックレンジ:115dB(可聴帯域/SACD)、101dB(CD)●高調波歪み率(1kHz):0.0005%(可聴帯域/SACD)、0.0015%(CD)●ワウ・フラッター:測定限界以下●出力レベル:2.2V(10kΩ)●出力端子:RCA×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1●サイズ:434W×138H×405Dmm●質量:16.8kg●消費電力:35W(待機電力0.3W以下)●取り扱い:ディーアンドエムホールディングス(株)

(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)

本記事はオーディオアクセサリー196号からの転載です

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