• ブランド
    特設サイト
公開日 2016/06/09 11:47

GIGA MUSIC独占先行配信!アン・ルイスのセルフカバー・ベスト「me-mySELF-ann-i “refreshed” 」を聴く

連続企画:日本コロムビアのハイレゾ音源レビュー
大橋伸太郎
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

音楽配信サイト「GIGA MUSIC」にて、名門・日本コロムビアが擁する選りすぐりの未ハイレゾ化音源が、続々とハイレゾで登場することとなった。しかも独占先行配信。既に庄野真代、いしだあゆみの配信が始まっており、この後も様々なアーティストが予定されているという。

Phile-webではこのハイレゾ音源を連続レビューする企画をスタート。リリース当時のエピソードや、ハイレゾになったからこそ注目したい聴きどころをたっぷりとご紹介したい。




me-mySELF-ann-i “refreshed” / アン・ルイス
96kHz/24bit FLAC
購入ページはこちら

※本作品は「44.1kHz/16bit」のオリジナルマスター音源を、日本コロムビアが独自に開発した“ORTマスタリング”技術を用いてリマスタリングし「96kHz/24bit」音源で配信しています(“ORT マスタリング”についてはこちらのサイトをご参照ください)


心と肉体のあやういバランスを歌い上げエンターテインメントに昇華した
歌謡曲史上に永遠に名を残す偉大なシンガー


アン・ルイスの歌をほんの間近で聞いたことがある。筆者が大学生の頃だ。晴海で催されたモーターイベントのアトラクションに彼女が出演し、輸入車好きの筆者はそこにたまたま居合わせた。まだアイドル時代のアン・ルイスの華やかで可愛かったこと!現れた瞬間、殺風景な晴海国際見本市会場がエデンの楽園に変わったようだった。そしてあの美声。倍音が何オクターブも乗ったような明るく甘い艶のある華やかな声だ。天の賜物といっていい(実際は日米軍事同盟の賜物なのだが)。二十年もしくは三十年に一度現れる、男声なら沢田研二に匹敵する美声だ。

彼女が自分と同年の生まれ(昭和31年)であることは知っていた。華があるというのはこういうことか…。世界の輝く対極を、陰気でパッとしないオタク(という言葉はまだなかったが)な大学生の筆者は、口をあんぐりと開け(多分)ただただ呆然と見つめていた。

その日彼女は「グッド・バイ・マイ・ラブ」ともう一曲歌い終わると「ありがとやんした」と言い残しそそくさとステージを降りて去っていった。あっけらかんとさばけてノンシャラン − 今でいうと少々ちゃらい感じ。当時彼女はアイドル真っ最中だったが優等生ぶらず開けっぴろげで飾らない天然な女性、いや案外中身は奥手でシャイな娘かも…と、畏れ多くて恋はしなかったけれど、とりこになってしまった。

それから十年後。かつての天然娘はアイドルを卒業、結婚、出産そして離婚を経験し「六本木心中」「天使よ故郷を見よ」「WOMAN」「あゝ無情」のヒット曲を連発し歌謡ロックの女王に進化した。

当時「夜のヒットスタジオ」(CX)という歌番組に主演したアン・ルイスが歌舞伎の鏡獅子を真似て鬘を振り回し「六本木心中」を熱唱するのを見ていた筆者は、はたと思った。陽気な外面とうらはらにこの人は深いダークサイドを抱えているのではないか、と。分厚い鬱を燃料に点火して躁のパフォーマンスを演じているのだろうと。心に無彩色の虚無を隠しているからうわべに原色を塗りたくるのだろうと。だからパフォーマンスに迫力がある。かつてのアイドル、アン・ルイスはかくして本物のパフォーマー、表現者に変わった。その可能性に気付いたディレクターや作詞作曲チームの慧眼、そしてある意味彼女を追い込む〈残酷性〉は凄い。

アン・ルイスの歌の世界観やヒロイン像は旧来の歌謡曲のそれとさほど変わらない。こわもてで威勢がいいが、実像は恋愛至上主義の「見かけより尽すタイプ」の可愛い女たちだ。レズビアンを暗示する歌詞がみられないことも特徴。愛の対象も憎しみの対象も男。つまりウーマニズムであってフェミニズムではない。女性特有の心と肉体のあやういバランス、ああもう壊れそうという臨界感覚を率直かつ過激に歌い演じエンターテインメントに昇華した歌謡曲史上に永遠に名を残す偉大なシンガーだ(その後に椎名林檎らが続く)。

表現者が自分と虚構を重ね合わせれば当然そこには代償が付き纏う。心を切り売りしているようなものだ。’90年代半ばにパニック障害を発症し次第に病状が悪化、声の負担の大きい絶叫型の楽曲を歌い続けて持ち前の美声に翳りがみえたこともありアメリカへ去ってしまった。いったん帰国するも2013年に正式に芸能界を引退、彼女は燃え尽きたのだ。かくして私達はそして日本はアン・ルイスを失ってしまったのだ。

次ページ代表曲をセルフカバーした2004年の新録がハイレゾで登場

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 女子プロゴルフ「大東建託・いい部屋ネットレディス」7/18から4日間の放送・配信予定
2 iPhoneユーザーがブラウザ「Safari」を選ぶメリットとは?プライバシー保護の観点から考える
3 「音良すぎだろ…」。VGPコスパ大賞イヤホン、SOUNDPEATS「Capsule3 Pro+」レビュー【割引クーポン有】
4 4年経っても色褪せない価値がある。改めて識りたい、デノン周年機「A110シリーズ」の魅力
5 “イタリアの至宝”ソナス・ファベールの「Lumina Amator」。美しい仕上げと有機的な音色に惚れる
6 グランツ、フラグシップトーンアーム「MH-12 KATANA」(刀)。税込440万円
7 『君たちはどう生きるか』4K UHD BD版のDolby Vision映像に不備。メタデータ設定に誤り
8 【ミニレビュー】AUDIOQUEST RCAケーブル「Black Beauty RCA」
9 シンプル&コンパクトで圧巻のサウンド!オーディオテクニカの「AT-SP3X」でレコードを楽しみ尽くす
10 ソニー、テレビ/サウンドバー/カメラなど一部製品を値上げ。8月1日出荷分から
7/18 10:50 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー193号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.193
オーディオアクセサリー大全2024~2025
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2024~2025
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.21 2023 WINTER
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.21
プレミアムヘッドホンガイド Vol.31 2024 SPRING
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.31(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2024年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2023受賞製品お買い物ガイド(2023年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2023年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX