公開日 2021/07/23 07:10
SFPポートがなくても“光アイソレート”は実現できる! ネットワークハブとメディコンの役割を解説
【SFP徹底研究】第2回 ハブとメディコンの違いにも注意
■RJ-45の環境下で、“光アイソレート”を組み込むためには?
前回のおさらいを簡単にまとめておこう。ネットワークオーディオ機器に「SFPポート」が搭載されているモデルが増えてきており、SFPモジュールと光ファイバーケーブルを活用することで、ノイズの回り込みを排除し、 “光アイソレート” が実現できるということを整理した。
しかし、世の中にある圧倒的多数のネットワークプレーヤーはRJ-45(四角いLAN端子)しか搭載しておらず、ルーターもRJ-45を使用していることがほとんどだ。しかし、そういう環境でも “光アイソレート” を導入する方法がある。
それが、光ファイバーとLANケーブルを変換する「ネットワークハブ」または「メディアコンバータ―」の導入である。ざっくり説明すると、「メタルケーブル(LANケーブル)」を一旦「光ファイバー」に変換し、再び「光ファイバー」から「メタルケーブル(LANケーブル)」に戻す、この2回変換システムをネットワーク環境の中に組み込むということだ。
具体的な接続方法に入る前に、まず「ネットワークハブ」と「メディアコンバータ―」について、基本的なところを押さえておこう。
ネットワークハブは、いわゆるハブ、ネットワークスイッチ、スイッチングハブなどとも呼ばれる。複数の有線ネットワーク機器を中継する役割を果たしており、LANポートの増設などに多く使われる。
ネットワークオーディオの世界では、ルーターからのノイズを遮断するという意味でネットワークハブの導入には大きな意味がある。オーディオグレードのハブも多く登場してきており、たとえばEnglish Electricの「8Switch」、NuPrimeの「Omnia SW-8」などが知られる。また業務用ユースのM12コネクタを活用したテレガートナーの「M12 SWITCH IE GOLD」も30万円を超える弩級のハブだが、発売以来ロングセラーを記録している。ただし、これらはすべてメタル導体のケーブルを利用しており、 “光アイソレート” には利用できない。
“光アイソレート” を実現するためには、「SFPポート」を搭載したネットワークハブの導入が必須となる。SFPポートを搭載したネットワークハブは非・オーディオグレードのものも含めるとさまざまなブランドから発売されており、バッファローの「BS-GS2016」や、TP LINK、PLANEXといったPC周辺機器メーカーが多く発売している。オーディオ的な音質対策が施されたものとしては、DELAの「S10」「S100」、SOtMの「sNH-10G」などが知られる。オーディオグレードの製品は高周波ノイズ対策や電源部の強化などが図られており、汎用製品に比べると若干高価にはなる。
■メディアコンバーターはLANと光を “変換する” 役割
また、もうひとつ「メディアコンバーター」と呼ばれる、LANケーブルと光ファイバーを “変換する”(=コンバート)アイテムもある。これも汎用製品としてTP LINKや10Gtek、バッファローなどから、安いものでは数千円から用意されている。また、オーディオ的な音質対策が施されたものとしてSONOREの「opticalModule Deluxe」は世界的にも評価が高い。
このメディアコンバーターは、あくまで1対1、つまりLANで入ってきた信号を光に変換し出力する(あるいは光で入ってきた信号をLANに出力する)ものである。ネットワークハブとの違いはこの点にあり、ハブは複数のLANポート並びにSFPポートを相互に変換、また分配が可能だが、メディアコンバーターは「入ってきたものを出す」機能に特化している。
もし手持ちのネットワークプレーヤーがRJ-45しか搭載していない場合、先述したとおり、LAN→光の変換と、光→LANの変換の2つのデバイスが必要になる。具体的には、「SFPポートを搭載するネットワークハブ+メディアコンバーター」あるいは「メディアコンバーターを2台」組み合わせる必要がある。
なおハブ+ハブという組み合わせも不可能ではない。たとえばDELAの「S100」とSOtMの「sNH-10G」の2台で “光アイソレート” を完了させるということも可能だが、その分コストが掛かってしまう。SFPポートを搭載するハブ+メディアコンバーター/メディアコンバーター×2、あるいは汎用ハブ+オーディオグレードハブという組み合わせがお財布には優しい。
また、このLAN→光と光→LANの変換を1台のボックスにまとめてしまったのが、香港・Ediscreationの「FIBER BOX」である。内部の変換メカニズムについての詳細は公表されていないが、つまるところこのボックス内で上記の2回の変換を完了させてしまうもので、入出力はRJ-45のLANポートのみ。手持ちのLANケーブルだけで接続できる導入しやすさも魅力だ。
■オートネゴシエーション非搭載のアイテムには注意
基本的な理解についてはここまでで大丈夫だが、トラブルが起こりやすいポイントとして、もうひとつ頭に入れておいてほしいのが、「回線速度」の問題である。
ネットワーク機器のスペック欄を見ると、「100BASE-T」「1000BASE-T」といった記載がある。これは製品それぞれが持つネットワーク通信の最大速度のことを指し、例えば1000BASE-Tならば、データ転送速度が(理論値として)最大1000Mbps(=1Gbps)を実現できるということだ。
この数値は製品によって異なり、たとえばTEACの「NT-505」は100BASE-Tだが、エソテリックの「N-03T」は1000BASE-Tと公表されている。fidataのオーディオサーバーは「1000BASE-T/100BASE-T/10BASE-T」それぞれに自動で対応する。
多くのネットワークハブ/メディアコンバーターは「オートネゴシエーション」という機能を搭載しており、速度の異なるネットワーク回線を自動で調整し、滞りなくネットワークが導通できるようになっている。そのため、通常はこれらの回線速度の違いをあまり気にする必要はない。
ただし、一部のハブにはこのオートネゴシエーション機能が搭載されていない。(※例えばDELA「S10」「S100」においては、LANポート1〜4は100Mbps固定/アップグレードサービスで変更可能)。また、メディアコンバーターにも「複数のネットワーク速度を調整できる」スイッチ型(ブリッジ型)(例:SONORE「opticalModule Deluxe」)と、調整できない「リピーター型」(例:SONORE「opticalModule」は1000Mbps固定※生産完了)が存在する。
もしオートネゴシエーション機能を非搭載のアイテムを介して異なる最大転送速度を持つ機器同士をつなぐと、場合によってはリンクアップしない、オーディオで言えば「音が出ない」「音が途切れる」状態になる可能性がある。古いタイプの製品や、ECサイトなどで内容を精査せずに購入すると、導通できないおそれもあるため、購入の前にはスペックをきちんと見極めた上で導入するようにしたい。
それでは、既存のシステムの中でどこに “光アイソレート” を実現するのが効果的だろうか? 次回は、LINNのKLIMAX DSMをベースに、光アイソレートのより実践的な組み込み方を研究したい。
▶▶▶SFP徹底研究第3回 ネットオーディオ、「光アイソレート」はどこに組み込むのが効果的? KLIMAX DSMで徹底検証!
前回のおさらいを簡単にまとめておこう。ネットワークオーディオ機器に「SFPポート」が搭載されているモデルが増えてきており、SFPモジュールと光ファイバーケーブルを活用することで、ノイズの回り込みを排除し、 “光アイソレート” が実現できるということを整理した。
しかし、世の中にある圧倒的多数のネットワークプレーヤーはRJ-45(四角いLAN端子)しか搭載しておらず、ルーターもRJ-45を使用していることがほとんどだ。しかし、そういう環境でも “光アイソレート” を導入する方法がある。
それが、光ファイバーとLANケーブルを変換する「ネットワークハブ」または「メディアコンバータ―」の導入である。ざっくり説明すると、「メタルケーブル(LANケーブル)」を一旦「光ファイバー」に変換し、再び「光ファイバー」から「メタルケーブル(LANケーブル)」に戻す、この2回変換システムをネットワーク環境の中に組み込むということだ。
具体的な接続方法に入る前に、まず「ネットワークハブ」と「メディアコンバータ―」について、基本的なところを押さえておこう。
ネットワークハブは、いわゆるハブ、ネットワークスイッチ、スイッチングハブなどとも呼ばれる。複数の有線ネットワーク機器を中継する役割を果たしており、LANポートの増設などに多く使われる。
ネットワークオーディオの世界では、ルーターからのノイズを遮断するという意味でネットワークハブの導入には大きな意味がある。オーディオグレードのハブも多く登場してきており、たとえばEnglish Electricの「8Switch」、NuPrimeの「Omnia SW-8」などが知られる。また業務用ユースのM12コネクタを活用したテレガートナーの「M12 SWITCH IE GOLD」も30万円を超える弩級のハブだが、発売以来ロングセラーを記録している。ただし、これらはすべてメタル導体のケーブルを利用しており、 “光アイソレート” には利用できない。
“光アイソレート” を実現するためには、「SFPポート」を搭載したネットワークハブの導入が必須となる。SFPポートを搭載したネットワークハブは非・オーディオグレードのものも含めるとさまざまなブランドから発売されており、バッファローの「BS-GS2016」や、TP LINK、PLANEXといったPC周辺機器メーカーが多く発売している。オーディオ的な音質対策が施されたものとしては、DELAの「S10」「S100」、SOtMの「sNH-10G」などが知られる。オーディオグレードの製品は高周波ノイズ対策や電源部の強化などが図られており、汎用製品に比べると若干高価にはなる。
■メディアコンバーターはLANと光を “変換する” 役割
また、もうひとつ「メディアコンバーター」と呼ばれる、LANケーブルと光ファイバーを “変換する”(=コンバート)アイテムもある。これも汎用製品としてTP LINKや10Gtek、バッファローなどから、安いものでは数千円から用意されている。また、オーディオ的な音質対策が施されたものとしてSONOREの「opticalModule Deluxe」は世界的にも評価が高い。
このメディアコンバーターは、あくまで1対1、つまりLANで入ってきた信号を光に変換し出力する(あるいは光で入ってきた信号をLANに出力する)ものである。ネットワークハブとの違いはこの点にあり、ハブは複数のLANポート並びにSFPポートを相互に変換、また分配が可能だが、メディアコンバーターは「入ってきたものを出す」機能に特化している。
もし手持ちのネットワークプレーヤーがRJ-45しか搭載していない場合、先述したとおり、LAN→光の変換と、光→LANの変換の2つのデバイスが必要になる。具体的には、「SFPポートを搭載するネットワークハブ+メディアコンバーター」あるいは「メディアコンバーターを2台」組み合わせる必要がある。
なおハブ+ハブという組み合わせも不可能ではない。たとえばDELAの「S100」とSOtMの「sNH-10G」の2台で “光アイソレート” を完了させるということも可能だが、その分コストが掛かってしまう。SFPポートを搭載するハブ+メディアコンバーター/メディアコンバーター×2、あるいは汎用ハブ+オーディオグレードハブという組み合わせがお財布には優しい。
また、このLAN→光と光→LANの変換を1台のボックスにまとめてしまったのが、香港・Ediscreationの「FIBER BOX」である。内部の変換メカニズムについての詳細は公表されていないが、つまるところこのボックス内で上記の2回の変換を完了させてしまうもので、入出力はRJ-45のLANポートのみ。手持ちのLANケーブルだけで接続できる導入しやすさも魅力だ。
■オートネゴシエーション非搭載のアイテムには注意
基本的な理解についてはここまでで大丈夫だが、トラブルが起こりやすいポイントとして、もうひとつ頭に入れておいてほしいのが、「回線速度」の問題である。
ネットワーク機器のスペック欄を見ると、「100BASE-T」「1000BASE-T」といった記載がある。これは製品それぞれが持つネットワーク通信の最大速度のことを指し、例えば1000BASE-Tならば、データ転送速度が(理論値として)最大1000Mbps(=1Gbps)を実現できるということだ。
この数値は製品によって異なり、たとえばTEACの「NT-505」は100BASE-Tだが、エソテリックの「N-03T」は1000BASE-Tと公表されている。fidataのオーディオサーバーは「1000BASE-T/100BASE-T/10BASE-T」それぞれに自動で対応する。
多くのネットワークハブ/メディアコンバーターは「オートネゴシエーション」という機能を搭載しており、速度の異なるネットワーク回線を自動で調整し、滞りなくネットワークが導通できるようになっている。そのため、通常はこれらの回線速度の違いをあまり気にする必要はない。
ただし、一部のハブにはこのオートネゴシエーション機能が搭載されていない。(※例えばDELA「S10」「S100」においては、LANポート1〜4は100Mbps固定/アップグレードサービスで変更可能)。また、メディアコンバーターにも「複数のネットワーク速度を調整できる」スイッチ型(ブリッジ型)(例:SONORE「opticalModule Deluxe」)と、調整できない「リピーター型」(例:SONORE「opticalModule」は1000Mbps固定※生産完了)が存在する。
もしオートネゴシエーション機能を非搭載のアイテムを介して異なる最大転送速度を持つ機器同士をつなぐと、場合によってはリンクアップしない、オーディオで言えば「音が出ない」「音が途切れる」状態になる可能性がある。古いタイプの製品や、ECサイトなどで内容を精査せずに購入すると、導通できないおそれもあるため、購入の前にはスペックをきちんと見極めた上で導入するようにしたい。
それでは、既存のシステムの中でどこに “光アイソレート” を実現するのが効果的だろうか? 次回は、LINNのKLIMAX DSMをベースに、光アイソレートのより実践的な組み込み方を研究したい。
▶▶▶SFP徹底研究第3回 ネットオーディオ、「光アイソレート」はどこに組み込むのが効果的? KLIMAX DSMで徹底検証!