[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第56回】USB-DAC/ヘッドホンアンプの基礎知識ナビ<基本スペック編>
<基本スペック/USB-DAC部分>
では次はUSB-DAC部分の基本スペックだ。こちらはまずは、いわゆる「192kHz/24bit」などのように使われる以下のふたつを押さえておこう。
●サンプリング周波数(単位:kHz 。例:192kHz)
サンプリング周波数とはデジタル録音において、音声信号を1秒間に何回の頻度というか密度というかでデジタルの数値に変換して記録する=サンプリングするかを表す数値。96kHzなら1秒につき9万6000回の密度でサンプリングが行われている。サンプリング周波数が高いほど、より短い周期の波形=より高い音声信号までを正確に記録できる。
USB-DACにおいては、どの数値のサンプリング周波数の信号までをそのスペックのままで受け取って再生できるかを表す数値となっている。
CD音源や一般の配信音源は44.1kHz。それを超えるサンプリング周波数、96kHzや176.4kHzや192kHzといったいわゆるハイレゾ音源をそのスペックを損なわずに再生するには、ハイレゾのサンプリング周波数に対応するUSB-DACが必要だ。
●量子化ビット深度(単位:bit。例:24bit)
同じくデジタル録音において、音量の大小(ダイナミクス)を何分割して記録するかを表す数値。16bitなら6万5,536段階、24bitなら1677万7,216段階での記録となる。24bitの方が音の大小をより細やかに記録、そして再生できる。
これもサンプリング周波数と同じように、USB-DACにおいてはそのデータを受け取って再生することができるかを表す数値。CD音源や一般の配信音源は16bit。ハイレゾ配信では24bitが一般的。
USB-DACにおいては、PCとDACの間のUSB転送の方式も重要なポイントだ。USBにおいてオーディオデータの転送には、途切れのないリアルタイム転送のために用意されたアイソクロナス転送というモードが利用される。そのアイソクロナス転送の中にさらにまた数種類のモードが用意されている。
●アダプティブ転送(同期転送)
PC側がオーディオデータをパケット(小分け)にして送り出してくるタイミングを元にして、DAC側でオーディオデータの処理の基準になるクロックを生成。ざっくり言うとPC側主導の転送。
●アシンクロナス転送(非同期転送)
DAC側に搭載されている正確なクロックを基準にPC側も含めてデータ転送のタイミングを制御。ざっくり言うとDAC側主導の転送。
というような違いがあり、オーディオ処理の基準となるクロックが安定することから、音質面では後者のアシンクロナス転送が優位とされている。アシンクロナス転送を採用している製品はその点を売り文句として明記している場合が多いので、要チェック項目だ。
●DSDネイティブ再生
DSDネイティブ再生対応は現時点では必須の機能ではない。なので対応製品が限られており、だからこそそこを製品選びの大きなポイントに挙げる方もいるだろう。
まずDSDについておさらいしておくと、サンプリング周波数とビット量子数で表されるリニアPCM方式のデジタル音声とは方式が異なる、別系統のデジタル音声方式だ。数年前まではSACDへの採用でのみその名前が知られているような状況だったが、最近はハイレゾ配信の一方式として注目を集めている。リニアPCMとは異なる感触の音質を高く評価する声も多い。
そのDSD方式の音源ファイルをDSDからリニアPCMへの変換等を経ずにネイティブに再生するには、DSD対応のUSB-DACが必要だ。そしてPC→USB-DAC間のDSDデータ転送には、主にふたつの方式が存在している。
●ASIO 2.1
定評あるオーディオドライバーシステムASIOの最新版は、実は以前からDSD転送にも対応。安定性や安全性に優れるDSD伝送方式だ。しかしOS X(Mac)はこれに対応していない。
●DoP(DSD over PCM)
DSDデータをPCMデータに見せかけてDACに転送した後、DAC側でDSDとして認識して再生する。OS Xを含めて比較的環境を選ばずに利用できる。しかし新しくトリッキーな手法なため、安定性や安全性の確保には高い実装技術を要する。
Macの場合は選択の余地なくDoP対応製品を選ぶことになるが、Windowsの場合は選択肢が広がるということだ。なお音質面において特にどちらかが優れるということは、僕の実感としてはない。