公開日 2017/07/04 10:12
カセットやレコードだけじゃないレガシー媒体
ティアックはなぜMDデッキを作り続けるのか? そこには “録音を見捨てない” 信念があった
高橋 敦
■マジでレガシーなMDの最後の希望、TEAC「MD-70CD」
近年アナログなオーディオメディアが注目を集めていることはご存知だろう。十年ほど前に再注目され始めたアナログ盤は、現在は流行ではなく文化として新たに定着した。数年前からはカセットテープもプチブレイクしており、新譜のカセットテープ版を発売するミュージシャンもいるほどだ。それらがマニアックな「オーディオ」ではなく「ミュージックライフ」の文脈での出来事だというのも見逃せない。
そうして時代はハイレゾやストリーミングという現代的なデジタルメディアと、アナログレコードやカセットテープといったレガシーなアナログメディアの二分化に向かい、そしてCDの存在感もまだま……
……ん?何かを忘れているような?あのころ僕らの青春と共にあった、何かを……
…………MDだ!
MD=MiniDiscは、1992年に製品第一弾が発売されたデジタル録音再生メディア。当時CD「R」がまだ普及していなかったCDに対して、録音可能という大きな優位があり、歩行時の衝撃などでの音飛びの低減も嬉しかった。また、当時の録音メディアの主流であったカセットテープに対しては、曲のスキップが可能で物理的にコンパクトという決定的な優位があった。登場当時に学生や新入社員などであった世代であれば、青春の音楽をCDからダビングしたMDと共に過ごした記憶があるのではないだろうか?
しかし2000年代、iPodの登場によって時代は変わった。けれどあの時のMD、捨てるには忍びなく保管してあったりしませんか? ※初出時、MDディスクの生産販売が終了していると記載しておりましたが、これは誤りでした。お詫びして訂正します。
しかし、それを再生できる環境は現在では極めて希少だ。当時のプレーヤーが現在でも完動状態なことは稀だし、現行製品もほとんど無い。レガシーだけれどアナログではなく、音や使い勝手に独特の味わいがあるわけではなく、さらには日本国外ではほとんど普及してないといったことが理由だろうか、とにかく思い出のディスクを聴き返したくても再生できる製品がほとんど無いのだ!
……え、“ほとんど”無い?ということは、例外がある?………ありました!
『往年のファンを裏切らないように、やるべきこととしてやっている。それだけです』
そう語り、例外製品を作り続けているブランド、それがティアックだ。そして、MDに残された最後の希望が、同社のMD対応デッキ「MD-70CD」である。
■なぜMDを作り続けるのか?作り続けられるのか?
今もMDデッキを製造販売し続けるブランド、ティアック。今回はその意図や現状を、ティアック(株)マーケティング本部の小田切一朗氏と、音響機器事業部 コンシューマーオーディオビジネスユニット 企画・販売促進課の加藤丈和氏に聞いた。
ーー CDプレーヤー/MDレコーダーコンビデッキ「MD-70CD」、カセットデッキ/CDプレーヤー「AD-850」、CDレコーダー「CD-RW890MKII」と、こうしたいわゆるレガシーメディアの録音再生機を今もこれだけラインナップに残しているのはティアックくらいです。何か理由があるのでしょうか?
小田切一朗氏(以下、小田切氏):難しい話ではなくて、昔からオーディオを支えてくれてきた方々の手元に残っている、良い録音をしてあるものや思い出のメディアを聴き続けられるようにしておきたいと。商売にはならないんですけど、やるべきこととしてやろうと、社内にはそういう雰囲気があります。
ーー 特にMD対応デッキ「MD-70CD」は日本唯一、ということはおそらく世界でも唯一の現行製品です。カセットは世間的にも盛り上がりがあるようですが、MDは需要としてはどうなんでしょう?
加藤丈和氏(以下、加藤氏):新たな盛り上がりではなく買い替え需要ですね。当時レンタルCDをMDにダビングしてマイベストを作ったり、曲名を一文字ずつ小さな液晶とリモコンのボタンとかで入力したディスクとかが手元にあるわけですよ。それをCDで買い直してPCにリッピングして、NASに入れてネットワーク再生して聴くのかというと、そういうことではないと。そのMDそのものを再生したいと。そういうユーザーさんがいらっしゃるんです。
小田切氏:当時の学生さんは、今30歳ちょっとから上になってる世代ですよね。あとはカーステレオのユーザーさん。MDはカートリッジ入りでCDよりもラフに扱えましたし、カセットより便利でしたし。そちらは40歳代から60歳代くらいでしょうか。
ーー 需要があるにしても、この現在にMDデッキを製品として製造するのって難しくないですか?
近年アナログなオーディオメディアが注目を集めていることはご存知だろう。十年ほど前に再注目され始めたアナログ盤は、現在は流行ではなく文化として新たに定着した。数年前からはカセットテープもプチブレイクしており、新譜のカセットテープ版を発売するミュージシャンもいるほどだ。それらがマニアックな「オーディオ」ではなく「ミュージックライフ」の文脈での出来事だというのも見逃せない。
そうして時代はハイレゾやストリーミングという現代的なデジタルメディアと、アナログレコードやカセットテープといったレガシーなアナログメディアの二分化に向かい、そしてCDの存在感もまだま……
……ん?何かを忘れているような?あのころ僕らの青春と共にあった、何かを……
…………MDだ!
MD=MiniDiscは、1992年に製品第一弾が発売されたデジタル録音再生メディア。当時CD「R」がまだ普及していなかったCDに対して、録音可能という大きな優位があり、歩行時の衝撃などでの音飛びの低減も嬉しかった。また、当時の録音メディアの主流であったカセットテープに対しては、曲のスキップが可能で物理的にコンパクトという決定的な優位があった。登場当時に学生や新入社員などであった世代であれば、青春の音楽をCDからダビングしたMDと共に過ごした記憶があるのではないだろうか?
しかし2000年代、iPodの登場によって時代は変わった。けれどあの時のMD、捨てるには忍びなく保管してあったりしませんか? ※初出時、MDディスクの生産販売が終了していると記載しておりましたが、これは誤りでした。お詫びして訂正します。
しかし、それを再生できる環境は現在では極めて希少だ。当時のプレーヤーが現在でも完動状態なことは稀だし、現行製品もほとんど無い。レガシーだけれどアナログではなく、音や使い勝手に独特の味わいがあるわけではなく、さらには日本国外ではほとんど普及してないといったことが理由だろうか、とにかく思い出のディスクを聴き返したくても再生できる製品がほとんど無いのだ!
……え、“ほとんど”無い?ということは、例外がある?………ありました!
『往年のファンを裏切らないように、やるべきこととしてやっている。それだけです』
そう語り、例外製品を作り続けているブランド、それがティアックだ。そして、MDに残された最後の希望が、同社のMD対応デッキ「MD-70CD」である。
■なぜMDを作り続けるのか?作り続けられるのか?
今もMDデッキを製造販売し続けるブランド、ティアック。今回はその意図や現状を、ティアック(株)マーケティング本部の小田切一朗氏と、音響機器事業部 コンシューマーオーディオビジネスユニット 企画・販売促進課の加藤丈和氏に聞いた。
ーー CDプレーヤー/MDレコーダーコンビデッキ「MD-70CD」、カセットデッキ/CDプレーヤー「AD-850」、CDレコーダー「CD-RW890MKII」と、こうしたいわゆるレガシーメディアの録音再生機を今もこれだけラインナップに残しているのはティアックくらいです。何か理由があるのでしょうか?
小田切一朗氏(以下、小田切氏):難しい話ではなくて、昔からオーディオを支えてくれてきた方々の手元に残っている、良い録音をしてあるものや思い出のメディアを聴き続けられるようにしておきたいと。商売にはならないんですけど、やるべきこととしてやろうと、社内にはそういう雰囲気があります。
ーー 特にMD対応デッキ「MD-70CD」は日本唯一、ということはおそらく世界でも唯一の現行製品です。カセットは世間的にも盛り上がりがあるようですが、MDは需要としてはどうなんでしょう?
加藤丈和氏(以下、加藤氏):新たな盛り上がりではなく買い替え需要ですね。当時レンタルCDをMDにダビングしてマイベストを作ったり、曲名を一文字ずつ小さな液晶とリモコンのボタンとかで入力したディスクとかが手元にあるわけですよ。それをCDで買い直してPCにリッピングして、NASに入れてネットワーク再生して聴くのかというと、そういうことではないと。そのMDそのものを再生したいと。そういうユーザーさんがいらっしゃるんです。
小田切氏:当時の学生さんは、今30歳ちょっとから上になってる世代ですよね。あとはカーステレオのユーザーさん。MDはカートリッジ入りでCDよりもラフに扱えましたし、カセットより便利でしたし。そちらは40歳代から60歳代くらいでしょうか。
ーー 需要があるにしても、この現在にMDデッキを製品として製造するのって難しくないですか?
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