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カセットやレコードだけじゃないレガシー媒体

ティアックはなぜMDデッキを作り続けるのか? そこには “録音を見捨てない” 信念があった

公開日 2017/07/04 10:12 高橋 敦
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小田切氏:そこについてうちには強みがあって、実はこのMD-70CDはティアックの業務用ブランドであるタスカムの「MD-CD1」シリーズがベースなんです。

同社の業務用ブランド・タスカムの技術をベースにしているのだという

ーー ああ、なるほど。タスカムは業務用なのでラックマウント型という違いはありますが、でもドライブやボタンの配置は同じですね。

小田切氏:会議場とか結婚式場とかそういった施設設備として、当時に導入されたカセットデッキやMDデッキからそのまま入れ替えられる代替機が今でも必要とされているんです。それはタスカムとして提供しているわけですが、それをオーディオ向けに落とし込んだのがティアック版のこれというわけです。民生用だけでの展開だと難しいかもしれませんが、実は業務用をベースに民生用も展開してますということなんです。

ーー とはいえMDのドライブメカって、今も製造しているパーツメーカーは……

小田切氏:ありませんね。うちはメカを自社で在庫しているので、それを使っています。その在庫が切れたら終わりですが、現在の需要と照らし合わせれば当面は大丈夫です。

古いメディアのデジタル化やハード修理も、「やるべきこと」の一つ

加藤氏:あとうちではハードウェアの他に「アーカイブ」のサービスも行っています。

ーー ユーザーさんの手元にある、ユーザーさんの現在の環境では再生もダビングもできないようなメディアのデジタルファイル化を代行してくれる、と?

加藤氏:そうです。こういうサービスだとオープンリールやアナログ盤を想像されると思いますが、うちではカセットテープやDAT、もちろんMDからのアーカイブにも対応します。レベル調整やノイズ補正、切れたテープの補修やカビやベタつきを低減させる熱処理など、ユーザーの方では難しい作業もこちらではできますし、データ形式としては192kHz/24bitやDSDにも対応しています。

カセットテープやDAT、MDなどレガシーメディアのアーカイブにも対応している

ーー 個人ユースでも現実的な価格なのでしょうか?

加藤氏:補正や補修、ハイレゾ化などはオプション料金になりますが、基本料金(80分CD-Rへのアーカイブ1枚分)としては、税抜でカセットテープが1本1,500円、MDを含む他のメディアが1本3,000円となります。ご依頼数量が多い場合は別途割引等もございます(詳細は受付窓口のティアックカスタマーソリューションズ(株)まで要問い合わせ)。

ーー たしかに意外とお手軽ですね。そもそもテープの状態が悪いと個人レベルの機材や技術ではダビング自体できないわけですし。

加藤氏:状態の悪いテープ等については、うちでは「とりあえず受ける」のが基本です。例えば「かなりカビてるんです」というお話でも、「おそらく無理ですのでお受けできません」のようなことは避けています。「確実にできるとお約束はできませんが、それでもよろしければお預かりして確認させていただけますか?」といった対応をさせていただくことが多いです。

ティアックがユーザーの最後の希望である理由は、「とりあえず受ける、やってみる」というスタンスにある

ーー 門前払いはされないとなると、ユーザーさんも相談しやすいですね。それに最後の希望というか、ティアックさんにお任せしてだめなら他では受けてもくれないだろうという気がします。

小田切氏:うちはハードウェアの修理についても同様ですね。カセットデッキなんかはもう当時のパーツそのものは手に入りません。そこを実物合わせで「このパーツにはこっちのパーツを流用できるんじゃないか?」みたいな、職人の経験値とトライ&エラーで修理している面があります。実物合わせですから、やってみないと分からないわけです。なのでお客様にも「ケースを開けてやってみないと分かりません。それでもよろしければとりあえず実物を預けていただけますか?」とお願いするしかないんです。

ーー それもありがたい話です。

小田切氏:今回は修理できたとしてもあと数年動けばいい方ですよとか、この部品がなくなったらもう次の修理はできませんよとか、そういうことも事前に説明させていただくんですが、それでも是非修理したいというユーザーさんが多いんですよね。それであれば、これもうちの「やるべきこと」の一つとしてやっていきたいなと。



今回のインタビューは「まだMDデッキ作ってくれてるの?」という単純な驚きからの取材だったが、それを通してティアックというブランドのオーディオファンへの誠実さを知ることができたように思える。派手な製品や取り組みではない。しかしだからこそ、こういった機会により多くの方に知っていただければ幸いだ。

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