公開日 2022/08/15 11:06
aptX Lossless再生のサウンドも確認
本格化する「Snapdragon Sound」と「LE Audio」、その関係と進化点は?クアルコム責任者に聞く
山本 敦
クアルコムは2022年3月に、ワイヤレスオーディオの独自技術を集めてパッケージ化した「Qualcomm® Snapdragon SoundTM」(以下:Snapdragon Sound)を「S5」と「S3」の2つのラインに分け、それぞれの最新SoCを発表した。
今夏から、aptX Adaptiveコーデックにより、96kHz/24bit対応のハイレゾワイヤレス再生が楽しめるスマホやオーディオデバイスが徐々に出揃ってきた。Snapdragon Soundのプラットフォームはこれからどのように強化されるのか、詳細をクアルコムのオーディオ担当の責任者であるJames Chapman氏にオンラインでインタビューした。
また、Snapdragon Soundに含まれる最新テクノロジー「aptX Lossless」や、Bluetooth LE Audioの「ブロードキャストオーディオ」のデモを体験したインプレッションも報告する。
クアルコム独自のaptX Adaptiveコーデックは、今後Bluetooth LE Audioとどのように連携し、進化を続けるのだろうか。最初にChapman氏へのインタビューを紹介する。
ーー今年3月にバルセロナで開催されたIT・モバイル関連のグローバルイベント「MWC2022」で、Snapdragon Soundの進化に関する発表がありました。2021年に続いて、MWCの開催時期にオーディオの大きな発表を行った理由から聞かせて下さい。
Chapman氏 これまでクアルコムは、CESやIFAの時期に合わせてオーディオに関連する発表を行ってきました。現在はコンシューマーが、オーディオライフにより多くのことを期待しています。クアルコムの技術が従来の音楽リスニングの枠を越え、新たなオーディオの楽しみ方を提案できることを紹介するため、MWCの時期に発表を行いました。
――これまでにもクアルコムは、新たにBluetoothオーディオ市場への本格参入を志す企業を支援してきました。2021年にSnapdragon Soundを発表して以来、どんな反響がありましたか。
Chapman氏 Snapdragon Soundは、オーディオ体験の基本となる「音質」「ロバストネス(接続の安定性)」「低遅延」を向上させます。市場にはベーシックからハイエンドまで、様々な種類のBluetooth対応イヤホン・ヘッドホンがあります。Snapdragon Soundがワイヤレスオーディオに高い付加価値をもたらす技術であることが周知され、様々なパートナーから引き合いを受けています。
■「S5」「S3」ラインがそれぞれのニーズに応える
――今年はSnapdragon Soundが新たに「S5」「S3」というふたつのプラットフォームに枝分かれしました。背景を聞かせて下さい。
Chapman氏 Snapdragon Soundを2種類のラインに分けた理由は、カスタマーからふたつの異なる要望が寄せられていたからです。AIやアクティブノイズキャンセリング(ANC)など、主要機能を独自に作り込み、商品の差別化を押し進めたいブランドには、S5のようにオープンで柔軟性の高いソリューションが必要です。かたやS3はトレンドアイテムとしてのオーディオデバイスを低コストで設計・製造し、いち早くマーケットに投入したいブランドの要望に応えます。
ふたつのプラットフォームはコンピューティングパワーに違いがあります。上位のS5ラインのチップ「QCC517x」シリーズは、デベロッパの方々がハードウェアにフルアクセスし、自由にプログラムを組める点が特徴です。2基のDSPと複数のタスクを同時にこなせる高性能プロセッサーを内蔵しています。
S3ラインのチップ「QCC307x」シリーズも、DSPとプロセッサーは十分にパワフルですが、開発者の方々が複雑なコーディングを行うことなくプログラムを組める仕組みを採り入れています。
――2021年に発表された最初のSnapdragon Sound規格に沿って開発されたモバイル端末と、S5/S3ラインに対応するオーディオデバイスとの互換性は確保されますか。
Chapman氏 はい、大丈夫です。今後もSnapdragon Soundプラットフォームは、過去モデルの後方互換性を確保するべきと考えています。
――現在発売されているSnapdragon Sound非対応の製品が、アップデートによりこれに対応することも可能なのでしょうか。
Chapman氏:メーカーがSnapdragon Soundのロゴを取得するためには、クアルコムのテストラボにおいて、厳しい品質評価ガイドラインに沿ったパフォーマンスと互換性の試験をクリアしなければなりません(関連レポート)。既に発売されている製品について、これから仕様を変更し、Snapdragon Soundに対応することを望むメーカーは多くないように思います。
今夏から、aptX Adaptiveコーデックにより、96kHz/24bit対応のハイレゾワイヤレス再生が楽しめるスマホやオーディオデバイスが徐々に出揃ってきた。Snapdragon Soundのプラットフォームはこれからどのように強化されるのか、詳細をクアルコムのオーディオ担当の責任者であるJames Chapman氏にオンラインでインタビューした。
また、Snapdragon Soundに含まれる最新テクノロジー「aptX Lossless」や、Bluetooth LE Audioの「ブロードキャストオーディオ」のデモを体験したインプレッションも報告する。
■広く注目を浴びるSnapdragon Sound
クアルコム独自のaptX Adaptiveコーデックは、今後Bluetooth LE Audioとどのように連携し、進化を続けるのだろうか。最初にChapman氏へのインタビューを紹介する。
ーー今年3月にバルセロナで開催されたIT・モバイル関連のグローバルイベント「MWC2022」で、Snapdragon Soundの進化に関する発表がありました。2021年に続いて、MWCの開催時期にオーディオの大きな発表を行った理由から聞かせて下さい。
Chapman氏 これまでクアルコムは、CESやIFAの時期に合わせてオーディオに関連する発表を行ってきました。現在はコンシューマーが、オーディオライフにより多くのことを期待しています。クアルコムの技術が従来の音楽リスニングの枠を越え、新たなオーディオの楽しみ方を提案できることを紹介するため、MWCの時期に発表を行いました。
――これまでにもクアルコムは、新たにBluetoothオーディオ市場への本格参入を志す企業を支援してきました。2021年にSnapdragon Soundを発表して以来、どんな反響がありましたか。
Chapman氏 Snapdragon Soundは、オーディオ体験の基本となる「音質」「ロバストネス(接続の安定性)」「低遅延」を向上させます。市場にはベーシックからハイエンドまで、様々な種類のBluetooth対応イヤホン・ヘッドホンがあります。Snapdragon Soundがワイヤレスオーディオに高い付加価値をもたらす技術であることが周知され、様々なパートナーから引き合いを受けています。
■「S5」「S3」ラインがそれぞれのニーズに応える
――今年はSnapdragon Soundが新たに「S5」「S3」というふたつのプラットフォームに枝分かれしました。背景を聞かせて下さい。
Chapman氏 Snapdragon Soundを2種類のラインに分けた理由は、カスタマーからふたつの異なる要望が寄せられていたからです。AIやアクティブノイズキャンセリング(ANC)など、主要機能を独自に作り込み、商品の差別化を押し進めたいブランドには、S5のようにオープンで柔軟性の高いソリューションが必要です。かたやS3はトレンドアイテムとしてのオーディオデバイスを低コストで設計・製造し、いち早くマーケットに投入したいブランドの要望に応えます。
ふたつのプラットフォームはコンピューティングパワーに違いがあります。上位のS5ラインのチップ「QCC517x」シリーズは、デベロッパの方々がハードウェアにフルアクセスし、自由にプログラムを組める点が特徴です。2基のDSPと複数のタスクを同時にこなせる高性能プロセッサーを内蔵しています。
S3ラインのチップ「QCC307x」シリーズも、DSPとプロセッサーは十分にパワフルですが、開発者の方々が複雑なコーディングを行うことなくプログラムを組める仕組みを採り入れています。
――2021年に発表された最初のSnapdragon Sound規格に沿って開発されたモバイル端末と、S5/S3ラインに対応するオーディオデバイスとの互換性は確保されますか。
Chapman氏 はい、大丈夫です。今後もSnapdragon Soundプラットフォームは、過去モデルの後方互換性を確保するべきと考えています。
――現在発売されているSnapdragon Sound非対応の製品が、アップデートによりこれに対応することも可能なのでしょうか。
Chapman氏:メーカーがSnapdragon Soundのロゴを取得するためには、クアルコムのテストラボにおいて、厳しい品質評価ガイドラインに沿ったパフォーマンスと互換性の試験をクリアしなければなりません(関連レポート)。既に発売されている製品について、これから仕様を変更し、Snapdragon Soundに対応することを望むメーカーは多くないように思います。