aptX Lossless再生のサウンドも確認
本格化する「Snapdragon Sound」と「LE Audio」、その関係と進化点は?クアルコム責任者に聞く
■aptX Lossless再生のサウンドを聴いた
今回の取材ではクアルコム日本法人のオフィスに足を運び、Snapdragon Soundの最新テクノロジーであるaptX Losslessと、LE Audioによるブロードキャストオーディオのデモを体験する機会を得た。クアルコム CDMAテクノロジーズ 製品マーケティング スタッフマネージャーの大島勉氏に、技術の特徴も解説していただいた。
最初にaptX Losslessのサウンドを体験した。Snapdragon Sound対応のAndroidスマホに、シンク側デバイスになるワイヤレスイヤホン等を想定してSoC「QCC5171」を組み込んだ評価ボードと、これにスピーカーシステムをつないだ環境が用意された。
aptX Adaptiveの最新バージョンにはaptX Losslessのコーデックが組み込まれ、接続された機器同士で44.1kHz/16bitのロスレス再生が楽しめる。
今回のデモのために用意されたスマートフォンでは、Bluetoothオーディオの接続がロスレスに切り替わった際、画面にステータスが表示される仕様となっていた。接続した直後ではなく、通信環境が安定した時点でロスレス再生に切り替わることが確認できた。
サウンドは情報量が豊富で、楽器の音色や声の繊細なニュアンスの再現力が高い。リズムの起伏にも富んでいる。ロスレス再生の醍醐味を確かに感じさせてくれた。
aptX Adaptiveによる96kHz/24bitのハイレゾワイヤレス再生は、リスニング環境に応じて接続の安定性を優先しながら、音声を非可逆圧縮(ロッシー)で伝送する。クアルコムの大島氏は「aptX Adaptiveのコーデックは誕生以来、一歩ずつ着実な成長を遂げてきた。現在のロスレス伝送は44.1kHz/16bitまでだが、今後のBluetoothオーディオの技術革新とともに、コーデックもさらに成長を遂げられるよう、研究開発を続けている。将来にもぜひ期待してほしい」と呼びかけた。
■LE Audioのブロードキャストオーディオが果たす役割
続いて、LE Audioのブロードキャストオーディオを体験した。システムは先ほどと同じSnapdragon Sound対応Androidスマホと、QCC5171のチップを載せた評価ボードに接続したスピーカーシステム等だが、これを複数のシンク側デバイスで同時に利用することを想定し、計3セット揃えてもらった。
Androidの設定メニューには、今回のデモンストレーション用として特別に追加された「ブロードキャスト」のトグルがあり、これをオンにするとブロードキャスティングが開始される。今回のデモンストレーションでは、シンク側デバイスの受信設定は送信側であるスマホから1台ずつ個別に設定する手順としていた。
最初にソース側デバイスをシンク側デバイスとBluetoothでつなぎ、ブロードキャストの同期設定を完了させる。スマホやタブレットは音声ストリームサービスを探して選択、イヤホンなどシンク側デバイスへの接続アシストのみを担う。
その後はLE Audioのブロードキャストオーディオ技術により、機器同士のBluetooth接続を切断した後もオーディオストリームを受信し続ける。不特定多数の視聴者がラジオやテレビの放送を聴取するようなイメージだ。例えばエンターテインメント的なコンテンツに限らず、大規模な国際会議に持参したイヤホン・ヘッドホンを使って明瞭な音声を聴いたり、博物館の展示ガイド、商業施設のイベントガイドを聴く使い方に、LE Audioのブロードキャストオーディオは適していると思う。
■パソコンやゲーム機をSnapdragon Soundの機能に対応させるUSBドングル
さらにもう一件、PCやゲーミングデバイスなどのハードウェアに、Snapdragon Sound対応の機能を “後付け” するUSBドングルを想定したデモンストレーションを体験した。
直近ではクリエイティブメディアが、主にゲーミングデバイスへ高速・低遅延なワイヤレスオーディオ体験を提供するデバイスとして、aptX Adaptive対応のUSB-Cトランスミッター「BT-W4」を発売している。最大96kHz/24bitのハイレゾ伝送に対応するUSBドングルが、今後さらに増えそうだ。
また今後は、aptX Adaptive機能を内蔵し、ドングル無しで対応するパソコンの登場にも期待が高まる。
秋以降、Snapdragon Soundのエコシステムが、様々なカテゴリーのデバイスへ本格的に広がることになるのだろうか。多くの商品にSnapdragon Soundロゴを見かけるようになることを筆者も期待している。