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公開日 2024/10/30 20:21
「Bluetooth 東京セミナー」
LE Audioでもハイレゾ/マルチチャンネル再生が可能に?Bluetoothの最新動向を語るセミナーが開催
編集部:松永達矢
Bluetoothの規格策定や認証、普及活動などを行っているBluetooth SIG(Special Interest Group)は、本日10月30日、東京・日本橋にてBluetooth技術の進歩と応用分野における最前線を紹介する「Bluetooth 東京セミナー」を開催。本稿ではセミナーの中で語られた、「LE Audio」や「Auracast」といったBluetoothオーディオの注目トピックについてお伝えする。
オープニングセミナーには、Bluetooth SIGのAPAC担当マーケティングディレクターのロリ・リー氏が登壇。次世代Bluetoothオーディオ規格LE Audioをベースとした配信技術「Auracast」に関する最新動向と、その進展について語ってくれた。
Bluetoothは、いまや年間50億台以上の搭載製品が出荷されており、2028年には年間75億台にまで達する見通しだという、今なお成長を続けている技術だ。今日に至るまで様々な機能も追加されてきたが、LE Audioならびに、Auracastの登場により、Bluetoothは新たなステップを踏み出すと、リー氏は力を込める。
Auracastとは、単一のトランスミッター(送信機)から、スピーカーやイヤホンなど複数台の再生デバイスに対して音声配信を行える機能で、接続できるデバイス数は無制限としている。例えばスマートフォンで映画を鑑賞している際に、複数の友人がそれぞれのイヤホンで楽しんだり、公共の場に設置された無音のディスプレイに接続時して聴きたい人だけが音声を聴いたり、空港、劇場などの施設で多言語アナウンスを配信し、利用者が自分に合った言語を受信する、といったユースケースを想定しているという。
米・調査会社ABI Researchでは、将来的にAuracast機能はBluetoothオーディオ、および聴覚補助デバイスの標準機能になるとし、多様かつ革新的なオーディオエクスペリメンスを提供すると予測。2028年には、基幹技術となるLE Audio対応デバイスの年間出荷台数は30億台にのぼり、2027年に発売されるスマートフォン新製品の90%がLE Audioに対応する見通しだという。そして、2030年までには250万もの場所でAuracastの導入が見込まれるとのことだ。
リー氏はAuracastの技術的な特長として、規格に準拠していれば、スピーカー、イヤホン、補聴器、あるいは人工内耳といった多様なデバイスで音声を受信/聴取できることを挙げる。聴きたい音声の選択などを行うアシスタントデバイスについても、PC、スマートフォン、スマートウォッチ、補聴器の充電ケースなど、様々なデバイスを活用できるとした。
プライベートな配信を行う場合には、パスコードを設定して聴取対象を制限することも可能。また将来的には、Wi-Fiのアクセスポイントを選択するような手軽さで聴きたい配信を選べるようにしたいとの展望も語られた。
様々な切り口からBluetoothの最新動向が語られる中、オーディオの観点から講演を行ったのがソニーだ。2005年よりBluetooth SIGの標準化活動にソニー代表として参画している、シニアネットワークテクニカルマネジャー 関 正彦氏は、「ソニーが期待する次世代のLE Audio」について説明した。
関氏はまず、数あるBluetoothデバイスの中で “オーディオ” に絞った市場動向を紹介。2018年には8.5億台の出荷台数だったBluetoothオーディオ製品だが、2024年には10.1億台、2028年には13億台と年平均7%の成長率で拡大することが予測されるという。
また今後数年間で、従来規格の「Bluetooth Classic」とLE Audioの両方をサポートするデュアルモード対応機器や、LE Audioのみ対応の機器も増加するとしており、「今はClassicのみ対応する機器が80%という状況だが、2028年にはデュアルモード機を含めてこれが逆転する」とのこと。
実際にソニーでは、完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM5」「LinkBuds S」「INZONE Buds」などでLE Audio対応を進めている。関氏は「弊社としてもLE Audioでの市場拡大に非常に期待している」と述べ、将来的にはBluetooth ClassicからLE Audioへの完全移行、完全ワイヤレスイヤホンの標準規格化なども想定しているとコメントした。
ほか、Classicでは消費電力が大きくA2DPストリーミングが行えなかったという補聴器についても、LE Audioではビットレートを下げ音質を最適化する形ではあるが補聴器で使用できるくらいの消費電力を実現。そしてテレビや公共案内でのブロードキャストといった観点で市場が拡大するのでは、との考えを示した。
関氏はLE Audioの優れたポイントとして、「低遅延」を第一に挙げる。例えばテレビとの接続において、Bluetooth ClassicのA2DPプロトコルによるオーディオ伝送は遅延が大きく、画像のバッファを行うなどの工夫が必要だった。LE Audioでは「そういった工夫があまり必要無い」とのこと。また、音質的には現行のSBCコーデックと同等以上ながら、圧縮率を高めたLC3コーデックを用いることで「接続安定性」を確保。そして、Auracastなどの新要素が追加されたことが、Classicと比較してのアドバンテージだと語る。
またLE Audioの「低遅延」を強化する技術として、2023年11月に登場したばかりの「Gaming Audio Profile(GMAP)」を紹介。名前の通りゲーム用途に最適な技術で、伝送遅延は30ms以下を実現し、ステレオとモノラルの両方に対応。ゲーム音声とボイスチャットの高音質な伝送をサポートするという。上述の通りまだ策定されたばかりの技術だが、規格化の完了にともない、ソニー製品でも導入に向けた検討が始まっていることが明かされた。
そして「LE Audioの将来」について、関氏はLE Audioの帯域拡張に向けた取り組みがあることに言及。現在のコア規格で規定された最大2Mbpsのスループットから4倍近い約8Mbpsのスループットを実現させる「High Dara Throughput(HDT)」の規格化がBluetooth SIG内で進んでいるのだという。実現すれば、LE Audioでのハイレゾ/ロスレス伝送や、Bluetoothによるマルチチャンネル・サラウンド・システムの構築といった可能性が見えてくる。
関氏は、ソニーとしてもHDTの規格化を踏まえハイレゾオーディオへの対応と、Bluetoothベースのマルチチャンネル・サラウンドの実現を目指すとし、「早期の実現と、(HDT規格制定後に)製品に取り込みたい」と、意欲を見せた。
■2030年に250万もの場所で導入が予想される「Auracast」の強みとは
オープニングセミナーには、Bluetooth SIGのAPAC担当マーケティングディレクターのロリ・リー氏が登壇。次世代Bluetoothオーディオ規格LE Audioをベースとした配信技術「Auracast」に関する最新動向と、その進展について語ってくれた。
Bluetoothは、いまや年間50億台以上の搭載製品が出荷されており、2028年には年間75億台にまで達する見通しだという、今なお成長を続けている技術だ。今日に至るまで様々な機能も追加されてきたが、LE Audioならびに、Auracastの登場により、Bluetoothは新たなステップを踏み出すと、リー氏は力を込める。
Auracastとは、単一のトランスミッター(送信機)から、スピーカーやイヤホンなど複数台の再生デバイスに対して音声配信を行える機能で、接続できるデバイス数は無制限としている。例えばスマートフォンで映画を鑑賞している際に、複数の友人がそれぞれのイヤホンで楽しんだり、公共の場に設置された無音のディスプレイに接続時して聴きたい人だけが音声を聴いたり、空港、劇場などの施設で多言語アナウンスを配信し、利用者が自分に合った言語を受信する、といったユースケースを想定しているという。
米・調査会社ABI Researchでは、将来的にAuracast機能はBluetoothオーディオ、および聴覚補助デバイスの標準機能になるとし、多様かつ革新的なオーディオエクスペリメンスを提供すると予測。2028年には、基幹技術となるLE Audio対応デバイスの年間出荷台数は30億台にのぼり、2027年に発売されるスマートフォン新製品の90%がLE Audioに対応する見通しだという。そして、2030年までには250万もの場所でAuracastの導入が見込まれるとのことだ。
リー氏はAuracastの技術的な特長として、規格に準拠していれば、スピーカー、イヤホン、補聴器、あるいは人工内耳といった多様なデバイスで音声を受信/聴取できることを挙げる。聴きたい音声の選択などを行うアシスタントデバイスについても、PC、スマートフォン、スマートウォッチ、補聴器の充電ケースなど、様々なデバイスを活用できるとした。
プライベートな配信を行う場合には、パスコードを設定して聴取対象を制限することも可能。また将来的には、Wi-Fiのアクセスポイントを選択するような手軽さで聴きたい配信を選べるようにしたいとの展望も語られた。
■拡大するLE Audio市場、ソニーの期待するその在り方とは
様々な切り口からBluetoothの最新動向が語られる中、オーディオの観点から講演を行ったのがソニーだ。2005年よりBluetooth SIGの標準化活動にソニー代表として参画している、シニアネットワークテクニカルマネジャー 関 正彦氏は、「ソニーが期待する次世代のLE Audio」について説明した。
関氏はまず、数あるBluetoothデバイスの中で “オーディオ” に絞った市場動向を紹介。2018年には8.5億台の出荷台数だったBluetoothオーディオ製品だが、2024年には10.1億台、2028年には13億台と年平均7%の成長率で拡大することが予測されるという。
また今後数年間で、従来規格の「Bluetooth Classic」とLE Audioの両方をサポートするデュアルモード対応機器や、LE Audioのみ対応の機器も増加するとしており、「今はClassicのみ対応する機器が80%という状況だが、2028年にはデュアルモード機を含めてこれが逆転する」とのこと。
実際にソニーでは、完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM5」「LinkBuds S」「INZONE Buds」などでLE Audio対応を進めている。関氏は「弊社としてもLE Audioでの市場拡大に非常に期待している」と述べ、将来的にはBluetooth ClassicからLE Audioへの完全移行、完全ワイヤレスイヤホンの標準規格化なども想定しているとコメントした。
ほか、Classicでは消費電力が大きくA2DPストリーミングが行えなかったという補聴器についても、LE Audioではビットレートを下げ音質を最適化する形ではあるが補聴器で使用できるくらいの消費電力を実現。そしてテレビや公共案内でのブロードキャストといった観点で市場が拡大するのでは、との考えを示した。
関氏はLE Audioの優れたポイントとして、「低遅延」を第一に挙げる。例えばテレビとの接続において、Bluetooth ClassicのA2DPプロトコルによるオーディオ伝送は遅延が大きく、画像のバッファを行うなどの工夫が必要だった。LE Audioでは「そういった工夫があまり必要無い」とのこと。また、音質的には現行のSBCコーデックと同等以上ながら、圧縮率を高めたLC3コーデックを用いることで「接続安定性」を確保。そして、Auracastなどの新要素が追加されたことが、Classicと比較してのアドバンテージだと語る。
またLE Audioの「低遅延」を強化する技術として、2023年11月に登場したばかりの「Gaming Audio Profile(GMAP)」を紹介。名前の通りゲーム用途に最適な技術で、伝送遅延は30ms以下を実現し、ステレオとモノラルの両方に対応。ゲーム音声とボイスチャットの高音質な伝送をサポートするという。上述の通りまだ策定されたばかりの技術だが、規格化の完了にともない、ソニー製品でも導入に向けた検討が始まっていることが明かされた。
そして「LE Audioの将来」について、関氏はLE Audioの帯域拡張に向けた取り組みがあることに言及。現在のコア規格で規定された最大2Mbpsのスループットから4倍近い約8Mbpsのスループットを実現させる「High Dara Throughput(HDT)」の規格化がBluetooth SIG内で進んでいるのだという。実現すれば、LE Audioでのハイレゾ/ロスレス伝送や、Bluetoothによるマルチチャンネル・サラウンド・システムの構築といった可能性が見えてくる。
関氏は、ソニーとしてもHDTの規格化を踏まえハイレゾオーディオへの対応と、Bluetoothベースのマルチチャンネル・サラウンドの実現を目指すとし、「早期の実現と、(HDT規格制定後に)製品に取り込みたい」と、意欲を見せた。
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