デジタルオーディオの黎明期を支え、イヤホンを含むAV機器ブランドとしても世界で広く知られるPHILIPS（フィリップス）。銘機を数多く輩出してきた名門でもあり、奇をてらわず、機能、性能、品質、価格のバランスが取れた実直なモノ作りが特徴と言って良いだろう。時が流れてもそのスピリッツは脈々と受け継がれ、現在では完全ワイヤレスイヤホンのラインナップも拡充している。

今回、紹介する「TAT5556」は、独自のハイブリッドアクティブノイズキャンセリング（ANC）機能「Noise Canceling Pro」を搭載する新モデル。既に発売済みで装着感が好評な「TAT4556」の上位モデルに位置づけられ、aptXコーデック対応といったサウンド面の向上はもちろん、Qiワイヤレス充電対応、アプリ対応など、機能もより充実した仕様となっている。

■培ったノウハウに基づく独自設計のANC「Noise Canceling Pro」

TAT5556とTAT4556はともに、ハイブリッドタイプのANCを搭載した完全ワイヤレスイヤホン。イヤホンの外側（フィードフォワード）だけでなく、内側（フィードバック）にもマイクを設置することで、高精度で高いノイズ低減効果が期待できる。

TAT5556は、フィリップスがヘッドホンなどで培ってきた独自技術を反映した「Noise Canceling Pro」を採用する点が大きな違いだ。フィードフォワードとフィードバック、さらに通話用の合計3つのマイクを左右それぞれに搭載し、より的確な消音を行う。アプリを使ってANCや外音取り込みの量を5段階から調節することも可能だ。

ほかにも機能面では、イヤホン本体に赤外線センサーを搭載し、耳から取り外すと一時停止、装着し直すと再開といった便利さがある。また、ケース部はQi規格のワイヤレス充電に対応していて、汎用の充電パッドを用意すれば手間なくこまめに充電ができる。

■耳のくぼみにそっと置くような軽快な装着性

TAT5556は、まず装着した瞬間に“フィリップス”を感じることができる。ノズルが自然と外耳道に導かれ、イヤーピースがしっかりと奥まで挿入できつつも違和感を覚えない。これはフィリップスが長年イヤホンで培ってきた代表的とも言えるノウハウで、本体に対してノズルを前方に傾斜させ、またノズル先端を真円ではなく楕円形にすることで、快適な装着感を生み出している。

さらに、TAT5556ではより一層のフィッティング追及を図っている。デザイナーとエンジニアが協業し、アジア人100名による試着とそのフィードバックを取り入れるなど、外観デザインと装着感の両立には数ヶ月も費やしたという。

特にイヤーピースは、カナル型イヤホンの装着感を大きく左右する重要なファクターと位置づけ、シミュレーションにとどまらず、3Dプリンタによる試作と試着を繰り返して完成度を高めている。素材の選択肢も含めると、検討したパターンは数え切れないという。

実際に装着してみれば、そのこだわりの程を察することができる。ハイブリッドANCを搭載するにしてはコンパクトな筐体で、耳の窪みに沿う形状のため違和感もなく、耳にかかる重量を受け止めてくれる。この重量分散のお蔭で、イヤーピースに過剰な力がかからず、快適性や安定した遮音性能の確保にも繋がっているようだ。