公開日 2023/01/11 06:35
「うわ!これはやられた」。ゾノトーンが満を持して開発した同社初のLANケーブル「Shupreme LAN-1」の音を聴いた僕は、自身のLANケーブルに対する根本的な考え方を変えなくてはいけなくなった。
オーディオグレードのLANケーブルは、オーディオファイルの間ではオーディオ用ケーブルの1ジャンルとして認知されている。その中でも現在のLANケーブル製品は、パソコンやネットワークに知見のあるネットワーク機器メーカーとオーディオメーカーがそれぞれに高品位な製品を生み出し、凌ぎを削っている状態だ。
ゾノトーンは後者にあたる。そして上述の通り、Shupreme LAN-1(以下LAN-1)は同社初となるLANケーブルだ。同社はRCA/XLRラインケーブルやスピーカーケーブルに加え、デジタルでは同軸/USBケーブルを以前よりラインナップしていたのに、なぜLANケーブルだけこのタイミングでの発売になったのだろう。
同社代表の前園 力氏によると、ゾノトーンブランドのLANケーブルを発売する構想は以前からあったものの、芯線の太さやカテゴリ等の制約もあり具体的な開発ができなかったそうだ。しかし、2020年11月に新型USBケーブル「Grandio USB-2.0」を発売した前後から、「LANケーブルはリリースされないのか」といった問い合わせが増えたことで、開発を決断したという。
僕は数多くのLANケーブルを試してきたが、LAN-1は基本性能に忠実な思想を持ちながら、ゾノトーンらしく線材に複数の素材を “独自の黄金比” を基にハイブリッドで使用する、たいへんチャレンジングなケーブルといえる。
ここからはその構造について解説したい。まず、基本的な構造として、導体に4種類の異種線材を使用している。具体的には、(1)超高純度の7NクラスCu (2)高純度無酸素銅線PCUHD (3)純銀コートOFC (4)高純度無酸素銅OFCだ。
種類の違う線材をハイブリッドで使用することが得意なゾノトーンらしいといえば簡単だが、現在のLANケーブルはDSD 11.2MHzや352.8kHz/24bit DXDなどのファイルを安定的に伝送させる必要がある。そのようななか、ゾノトーンがLANケーブルに複数の異種素材を投入してきたことは注目に値する。しかも線材により導体の太さも変え、高純度ポリエチレンの絶縁体を被せて、独立した8芯導体構造に仕上げている。
末端となるRJ-45端子は、ネットワークの世界で定評のある米国パンドウィット社製を採用。カテゴリーは「CAT5e」に準拠している。巷ではCAT7やCAT8表記のオーディオ用ケーブルもあるが、実はLAN-1がCAT5eという規格を達成していることには大きな意味がある。理由は後述する。
試聴は自宅1Fおよび2Fのリスニングルームで実施した。パソコン用のCat6ケーブルと比較して音質評価を行う。LAN-1は2mのモデルを2本用意してあり、2Fではネットワークスイッチ - fidataサーバー「HFAS1-H80」とネットワークスイッチ - ルーミン「X1」の接続に利用した。
まず総合的な音質について記載したい。最初にお伝えしたいのは、LAN-1は積極的に音を変化させるタイプのケーブルであるということ。分解能高い音が基軸となっているが、聴感上、高〜中音域の色艶が良く、ディテールと音色が上手く共存したサウンドだといえる。低音域については弾力的な表現傾向が聴き取れる。ひとことで言うなら躍動感や音楽的なメロディアスな感じがよく聴き取れるケーブルだ。
女性ボーカル、アデルのアルバム『30』より「To Be Loved」を再生した際、最初はパソコン用Cat6ケーブル、次にLAN-1に繋ぎ変えて比較したのだが、後者では中高域の色艶が良くなり、イントロのピアノのリズムが明解に伝わってくる。音の抜けも良いので、楽器の音のディテールが明快だが、サウンドステージについても音像および空間がしっかりと像を結んで視界がリアルだ。
次にヤニック・ネゼ=セガン 「ラフマニノフ:交響曲第1番、交響的舞曲」を聴いたのだが、スケール感が雄大で揺るぎのないオーケストラの表現をしっかりと聴き取ることができた。コントラバスなどの低音楽器にパンチがあって、音楽的にバランスが良い。
最後はジョン・コルトレーンの「バラード」を聴く。ご存知の通り、インパルス!レコードから1962年に発表した名盤タイトルだが、本音源のレゾリューションはDSD 5.6MHz。カナダのインディペンデントレーベル「HDTT」が、程度の良いオープンリールテープからDSDでダイレクトトランスファーしている。
ダイナミックレンジは狭いものの音が生々しく前へしっかりと出てくる。右チャンネルから聴こえるレジー・ワークマンのベース、左チャンネルから聴こえるコルトレーンのサックスともリアル。個人的にゾノトーンのケーブルはジャズとの相性が良いと思っていたが、やはりバッチリとはまった。このケーブルはパソコン用のLANケーブルと比べ音に躍動感と鮮度感を与えてくれる。
いかがだったろうか、正直に話せば僕は金属に細工をして音を変えるタイプのケーブルは苦手な方だった。しかしLAN-1の音はそんな僕の考えを改めさせてくれた、音楽を躍動的に聴かせる数少ないケーブルである。
開発は容易ではなかったという。前園 力氏と社員で試聴を繰り返し行い、最終的な製品の仕様を決定したと言うが、まずは単一の素材のみでプロトタイプを作成、それぞれの素材を使用したケーブルの音質評価を行い、その中からLAN-1を開発する上で目標とする音に適していると思われる素材を厳選。それぞれの導体素材の線径や、導体量等を割り出し、いくつかのパターンで試作を作り出したという。
ここまでやるのか…と僕は感心したが、同時にゾノトーンの姿勢に安心した。なぜなら、元エンジニアでもある僕がLANケーブルに最も求めることは、安定した伝送特性(速度ではない)である。はっきり言うが、一部のアナログケーブルのような「音色を変える」ことだけを目的として異種素材を混ぜ込むようなモデルには閉口していた。
しかしゾノトーンは、オーディオグレードのケーブルを作る上で安定した伝送特性を除外せず、同時に音色も作り込んだ。だからこそ異種素材を使いつつカテゴリー5eを達成したのだ。これは称賛に値する。
「実はLAN-1がCAT5eという規格を達成したことには大きな意味がある」と書いたのはこの部分である。そして「うわ!これはやられた」と書いたのは、その上でさらに音質が素晴らしかったからに他ならない。LAN-1はLANケーブルとしての安定性を求めつつ、音を積極的に変化させ、音楽的な躍動感を出したい全てのオーディオファイルにお勧めしたい逸品だ。
(提供:前園サウンドラボ)
【特別企画】試作を繰り返し誕生したブランド初のLANケーブル
ゾノトーンのLANケーブル「Shupreme LAN-1」は、音楽的な躍動感を出したいオーディオファンにオススメ!
土方久明ブランド初のLANケーブルに挑戦! デジタルケーブルに新たな風を吹き込む
「うわ!これはやられた」。ゾノトーンが満を持して開発した同社初のLANケーブル「Shupreme LAN-1」の音を聴いた僕は、自身のLANケーブルに対する根本的な考え方を変えなくてはいけなくなった。
オーディオグレードのLANケーブルは、オーディオファイルの間ではオーディオ用ケーブルの1ジャンルとして認知されている。その中でも現在のLANケーブル製品は、パソコンやネットワークに知見のあるネットワーク機器メーカーとオーディオメーカーがそれぞれに高品位な製品を生み出し、凌ぎを削っている状態だ。
ゾノトーンは後者にあたる。そして上述の通り、Shupreme LAN-1(以下LAN-1)は同社初となるLANケーブルだ。同社はRCA/XLRラインケーブルやスピーカーケーブルに加え、デジタルでは同軸/USBケーブルを以前よりラインナップしていたのに、なぜLANケーブルだけこのタイミングでの発売になったのだろう。
同社代表の前園 力氏によると、ゾノトーンブランドのLANケーブルを発売する構想は以前からあったものの、芯線の太さやカテゴリ等の制約もあり具体的な開発ができなかったそうだ。しかし、2020年11月に新型USBケーブル「Grandio USB-2.0」を発売した前後から、「LANケーブルはリリースされないのか」といった問い合わせが増えたことで、開発を決断したという。
ゾノトーンのお家芸、独自の黄金比で4種の線材をハイブリッド
僕は数多くのLANケーブルを試してきたが、LAN-1は基本性能に忠実な思想を持ちながら、ゾノトーンらしく線材に複数の素材を “独自の黄金比” を基にハイブリッドで使用する、たいへんチャレンジングなケーブルといえる。
ここからはその構造について解説したい。まず、基本的な構造として、導体に4種類の異種線材を使用している。具体的には、(1)超高純度の7NクラスCu (2)高純度無酸素銅線PCUHD (3)純銀コートOFC (4)高純度無酸素銅OFCだ。
種類の違う線材をハイブリッドで使用することが得意なゾノトーンらしいといえば簡単だが、現在のLANケーブルはDSD 11.2MHzや352.8kHz/24bit DXDなどのファイルを安定的に伝送させる必要がある。そのようななか、ゾノトーンがLANケーブルに複数の異種素材を投入してきたことは注目に値する。しかも線材により導体の太さも変え、高純度ポリエチレンの絶縁体を被せて、独立した8芯導体構造に仕上げている。
末端となるRJ-45端子は、ネットワークの世界で定評のある米国パンドウィット社製を採用。カテゴリーは「CAT5e」に準拠している。巷ではCAT7やCAT8表記のオーディオ用ケーブルもあるが、実はLAN-1がCAT5eという規格を達成していることには大きな意味がある。理由は後述する。
分解能高くディテールと音色が上手く共存したサウンド
試聴は自宅1Fおよび2Fのリスニングルームで実施した。パソコン用のCat6ケーブルと比較して音質評価を行う。LAN-1は2mのモデルを2本用意してあり、2Fではネットワークスイッチ - fidataサーバー「HFAS1-H80」とネットワークスイッチ - ルーミン「X1」の接続に利用した。
まず総合的な音質について記載したい。最初にお伝えしたいのは、LAN-1は積極的に音を変化させるタイプのケーブルであるということ。分解能高い音が基軸となっているが、聴感上、高〜中音域の色艶が良く、ディテールと音色が上手く共存したサウンドだといえる。低音域については弾力的な表現傾向が聴き取れる。ひとことで言うなら躍動感や音楽的なメロディアスな感じがよく聴き取れるケーブルだ。
女性ボーカル、アデルのアルバム『30』より「To Be Loved」を再生した際、最初はパソコン用Cat6ケーブル、次にLAN-1に繋ぎ変えて比較したのだが、後者では中高域の色艶が良くなり、イントロのピアノのリズムが明解に伝わってくる。音の抜けも良いので、楽器の音のディテールが明快だが、サウンドステージについても音像および空間がしっかりと像を結んで視界がリアルだ。
次にヤニック・ネゼ=セガン 「ラフマニノフ:交響曲第1番、交響的舞曲」を聴いたのだが、スケール感が雄大で揺るぎのないオーケストラの表現をしっかりと聴き取ることができた。コントラバスなどの低音楽器にパンチがあって、音楽的にバランスが良い。
最後はジョン・コルトレーンの「バラード」を聴く。ご存知の通り、インパルス!レコードから1962年に発表した名盤タイトルだが、本音源のレゾリューションはDSD 5.6MHz。カナダのインディペンデントレーベル「HDTT」が、程度の良いオープンリールテープからDSDでダイレクトトランスファーしている。
ダイナミックレンジは狭いものの音が生々しく前へしっかりと出てくる。右チャンネルから聴こえるレジー・ワークマンのベース、左チャンネルから聴こえるコルトレーンのサックスともリアル。個人的にゾノトーンのケーブルはジャズとの相性が良いと思っていたが、やはりバッチリとはまった。このケーブルはパソコン用のLANケーブルと比べ音に躍動感と鮮度感を与えてくれる。
安定した伝送特性を実現しながら、躍動的なサウンドを実現
いかがだったろうか、正直に話せば僕は金属に細工をして音を変えるタイプのケーブルは苦手な方だった。しかしLAN-1の音はそんな僕の考えを改めさせてくれた、音楽を躍動的に聴かせる数少ないケーブルである。
開発は容易ではなかったという。前園 力氏と社員で試聴を繰り返し行い、最終的な製品の仕様を決定したと言うが、まずは単一の素材のみでプロトタイプを作成、それぞれの素材を使用したケーブルの音質評価を行い、その中からLAN-1を開発する上で目標とする音に適していると思われる素材を厳選。それぞれの導体素材の線径や、導体量等を割り出し、いくつかのパターンで試作を作り出したという。
ここまでやるのか…と僕は感心したが、同時にゾノトーンの姿勢に安心した。なぜなら、元エンジニアでもある僕がLANケーブルに最も求めることは、安定した伝送特性(速度ではない)である。はっきり言うが、一部のアナログケーブルのような「音色を変える」ことだけを目的として異種素材を混ぜ込むようなモデルには閉口していた。
しかしゾノトーンは、オーディオグレードのケーブルを作る上で安定した伝送特性を除外せず、同時に音色も作り込んだ。だからこそ異種素材を使いつつカテゴリー5eを達成したのだ。これは称賛に値する。
「実はLAN-1がCAT5eという規格を達成したことには大きな意味がある」と書いたのはこの部分である。そして「うわ!これはやられた」と書いたのは、その上でさらに音質が素晴らしかったからに他ならない。LAN-1はLANケーブルとしての安定性を求めつつ、音を積極的に変化させ、音楽的な躍動感を出したい全てのオーディオファイルにお勧めしたい逸品だ。
(提供:前園サウンドラボ)