公開日 2023/11/03 07:00
空気清浄機能とあわせて体験
Dyson Zoneの「ヘッドホンとしての実力」をチェック。想像とは違う音がした
編集部:押野由宇
今年ダイソンが発売したヘッドホン「Dyson Zone」は、その強烈なインパクトで見た者の記憶に残るとともに、どんな使い心地なのかという疑問を植え付けた。今さらではあるが、今回Dyson Zoneを使う機会を得たので、ヘッドホンとしての性能に焦点を当ててレポートしてみたい。
早速ヘッドホン性能に目を向けよう。リスニング用途で使う分には普通のワイヤレスヘッドホンだ。カラーリングはダイソンカラーで目立つルックスだが、ほかにも派手なモデルはあるので、シールドを外せば特別注目を集めることもない。
ヘッドホンのスペックとしては、ドライバーにカスタムビルドの40mm径ネオジムドライバーを搭載。8個のマイクを使ったアクティブノイズキャンセリングで周囲の音を低減し、しっかりフィットするイヤーパッドによるパッシブノイズキャンセリングとあわせた静かな環境を提供するとしている。
本体質量は595g(シールド非装着)と重い部類。もちろん空気清浄機能を搭載している割には軽量化されているのだろうし、ヘッドバンドの形状や重量分散によって負担をかけないよう工夫されているというが、それでも装着しているとだんだんと疲れてくる。特に少し下を向いてスマホを眺めたりしていると首にくるので、ここは今後どうにか改善を求めたい。
音決めについては自社で音響研究を進め、導き出された仕様目標を大規模なユーザートライアルで検証するという科学的なアプローチを実施した。6年の歳月、500個の試作品を経てたどり着いたそのサウンドは「低音、中音、高音の幅広い周波数帯域で、クリアな音質」だとアピールする。
装着してまずノイズキャンセリング機能、外音取り込み機能を確認してみる。ノイズキャンセリングはかなり優秀な部類で、ごく自然ながら強めに効かせる印象。10を0にするわけではなく、3程度にまで減らしてくれる。音楽再生しながらオン/オフすると、オンでは若干詰まるような感触もあるが、音色への影響は極力抑えられており、十分に実用的だ。外音取り込みも、いかにもマイクで収音しましたという音ではなく、こちらもかなり自然。パソコンのキータッチ音などは多少強調されるが、人の声は違和感なく聴こえてくる。
音楽を再生してみれば、ダイソンが目指すところの「原音に忠実」なサウンドが見えてくる。全帯域でフラットな、かなり均整の取れた表現だ。モニタライクでともすれば面白みのなさにもつながるところを、シャープながらカッチリしすぎない音色でまとめて、聴きやすさへと転換している。正直に言えば、見た目から想像していた「派手な音」とは違った。
ボーカルはくっきりとした輪郭を持って刺さることなく耳に届き、一方で楽器との調和が取れているので楽曲として心地よい。音の響き/余韻も残されており、空間性を感じさせる。オールラウンダーな再現性だ。コーデックはAAC/SBC/LHDCに対応とのことで、解像感と情報量には多少の物足りなさがあるが、それをバランスの良さが補っている。
MyDysonアプリから設定できるイコライザーは、標準の「ニュートラル」のほか、高域を鮮明にする「エンハンスド」、ベースを強調する「ベースブースト」を用意。ちなみにアプリ上で見ると、「ベースブースト」と「エンハンスド」の波形は、ミッド/トレブルがほぼ一緒になっている。このイコライザーは味付けとしては十分で、聴きやすさに「楽しさ」がプラスされる。個人的にはむしろ積極的に使いたくなった。
さて、Dyson Zoneを語る上で切り離してはならないのが空気清浄機能だ。すでに多くの情報が世に出ているので詳細は割愛するが、本機の見た目を特徴づける非接触型シールドを装着すると、イヤーカップ内のコンプレッサー(ファン)が最大9,750rpmで回転して空気を取り込み、フィルターで清浄化されてからシールドを通じて着用者の鼻と口に送られるというものとなる。
その効果は強力で、ウイルス、都市部のガス、そして0.1ミクロンという微細な汚染物質までも99%除去するとしており、実際に装着時にはそよそよと口元に風が届き、空気が循環していることが感じられる。
当然、代償はある。耳元でファンが回転しているわけなので、空気清浄機能をつけている間は常に“ブーーン”といった音がする。ファンの回転は低/中/高の3段階で調整でき、低では音楽を再生すればさほど気にならないが(聴こえることは聴こえる、という程度)、レベルを上げるとさすがに無視できないボリュームだ。
ただし、そもそも空気清浄とシビアな音楽鑑賞を同時に行いたいシーンが存在するのかというと、あまり想像がつかない。多少の静音性は犠牲にする代わり、きれいな空気を吸いながら音楽を楽しめる、という付加価値を持つモデルとして見れば、許容できるボリュームとも言える。いまや広く普及している外音取り込み機能も、見方を変えれば静音性を失う代わりに外音が聴こえるメリットを得ているわけなので、それと同じように空気清浄機能もあくまでイチ機能として使う/使わないを選択すればいい。
シールド込みのデザインに関しては、人を選ぶのは確かだ。シールド装着状態で街を歩いてみたが、見られているというより、むしろすれ違いざまに見ないようにしてくれているのを感じた。どちらかといえば音よりも、この点が空気清浄機能のハードルになると考える人は多いだろう。どんなシーンにもマッチするとは言えないが、裏を返せば個性的なので、ファッションアイテムとして存在感を出すのも使い道かもしれない。
◇
Dyson Zoneは93,500円〜108,900円(税込/編集部調べ)で、ヘッドホン市場ではミドル〜ハイエンドの価格帯。数々の優れたモデル群がひしめき合う中ではチャレンジングな料金設定だが、ノイズキャンセリングヘッドホンとしての性能は決して悪くない。
あとは「空気清浄」をどう捉えるか。やはりヘッドホンである以上、重きを置かれるのは音質だが、使い勝手は機能が物を言う。空気清浄+ノイズキャンセリング+ヘッドホン、この組み合わせに魅力を感じるのであれば、業界をリードするダイソンが得意技術をつぎ込んだ本デバイスには、唯一無二の価値がある。
■ノイズキャンセリングヘッドホンとしての性能は確かなもの
早速ヘッドホン性能に目を向けよう。リスニング用途で使う分には普通のワイヤレスヘッドホンだ。カラーリングはダイソンカラーで目立つルックスだが、ほかにも派手なモデルはあるので、シールドを外せば特別注目を集めることもない。
ヘッドホンのスペックとしては、ドライバーにカスタムビルドの40mm径ネオジムドライバーを搭載。8個のマイクを使ったアクティブノイズキャンセリングで周囲の音を低減し、しっかりフィットするイヤーパッドによるパッシブノイズキャンセリングとあわせた静かな環境を提供するとしている。
本体質量は595g(シールド非装着)と重い部類。もちろん空気清浄機能を搭載している割には軽量化されているのだろうし、ヘッドバンドの形状や重量分散によって負担をかけないよう工夫されているというが、それでも装着しているとだんだんと疲れてくる。特に少し下を向いてスマホを眺めたりしていると首にくるので、ここは今後どうにか改善を求めたい。
音決めについては自社で音響研究を進め、導き出された仕様目標を大規模なユーザートライアルで検証するという科学的なアプローチを実施した。6年の歳月、500個の試作品を経てたどり着いたそのサウンドは「低音、中音、高音の幅広い周波数帯域で、クリアな音質」だとアピールする。
装着してまずノイズキャンセリング機能、外音取り込み機能を確認してみる。ノイズキャンセリングはかなり優秀な部類で、ごく自然ながら強めに効かせる印象。10を0にするわけではなく、3程度にまで減らしてくれる。音楽再生しながらオン/オフすると、オンでは若干詰まるような感触もあるが、音色への影響は極力抑えられており、十分に実用的だ。外音取り込みも、いかにもマイクで収音しましたという音ではなく、こちらもかなり自然。パソコンのキータッチ音などは多少強調されるが、人の声は違和感なく聴こえてくる。
音楽を再生してみれば、ダイソンが目指すところの「原音に忠実」なサウンドが見えてくる。全帯域でフラットな、かなり均整の取れた表現だ。モニタライクでともすれば面白みのなさにもつながるところを、シャープながらカッチリしすぎない音色でまとめて、聴きやすさへと転換している。正直に言えば、見た目から想像していた「派手な音」とは違った。
ボーカルはくっきりとした輪郭を持って刺さることなく耳に届き、一方で楽器との調和が取れているので楽曲として心地よい。音の響き/余韻も残されており、空間性を感じさせる。オールラウンダーな再現性だ。コーデックはAAC/SBC/LHDCに対応とのことで、解像感と情報量には多少の物足りなさがあるが、それをバランスの良さが補っている。
MyDysonアプリから設定できるイコライザーは、標準の「ニュートラル」のほか、高域を鮮明にする「エンハンスド」、ベースを強調する「ベースブースト」を用意。ちなみにアプリ上で見ると、「ベースブースト」と「エンハンスド」の波形は、ミッド/トレブルがほぼ一緒になっている。このイコライザーは味付けとしては十分で、聴きやすさに「楽しさ」がプラスされる。個人的にはむしろ積極的に使いたくなった。
■空気清浄機能をどう捉えるか
さて、Dyson Zoneを語る上で切り離してはならないのが空気清浄機能だ。すでに多くの情報が世に出ているので詳細は割愛するが、本機の見た目を特徴づける非接触型シールドを装着すると、イヤーカップ内のコンプレッサー(ファン)が最大9,750rpmで回転して空気を取り込み、フィルターで清浄化されてからシールドを通じて着用者の鼻と口に送られるというものとなる。
その効果は強力で、ウイルス、都市部のガス、そして0.1ミクロンという微細な汚染物質までも99%除去するとしており、実際に装着時にはそよそよと口元に風が届き、空気が循環していることが感じられる。
当然、代償はある。耳元でファンが回転しているわけなので、空気清浄機能をつけている間は常に“ブーーン”といった音がする。ファンの回転は低/中/高の3段階で調整でき、低では音楽を再生すればさほど気にならないが(聴こえることは聴こえる、という程度)、レベルを上げるとさすがに無視できないボリュームだ。
ただし、そもそも空気清浄とシビアな音楽鑑賞を同時に行いたいシーンが存在するのかというと、あまり想像がつかない。多少の静音性は犠牲にする代わり、きれいな空気を吸いながら音楽を楽しめる、という付加価値を持つモデルとして見れば、許容できるボリュームとも言える。いまや広く普及している外音取り込み機能も、見方を変えれば静音性を失う代わりに外音が聴こえるメリットを得ているわけなので、それと同じように空気清浄機能もあくまでイチ機能として使う/使わないを選択すればいい。
シールド込みのデザインに関しては、人を選ぶのは確かだ。シールド装着状態で街を歩いてみたが、見られているというより、むしろすれ違いざまに見ないようにしてくれているのを感じた。どちらかといえば音よりも、この点が空気清浄機能のハードルになると考える人は多いだろう。どんなシーンにもマッチするとは言えないが、裏を返せば個性的なので、ファッションアイテムとして存在感を出すのも使い道かもしれない。
Dyson Zoneは93,500円〜108,900円(税込/編集部調べ)で、ヘッドホン市場ではミドル〜ハイエンドの価格帯。数々の優れたモデル群がひしめき合う中ではチャレンジングな料金設定だが、ノイズキャンセリングヘッドホンとしての性能は決して悪くない。
あとは「空気清浄」をどう捉えるか。やはりヘッドホンである以上、重きを置かれるのは音質だが、使い勝手は機能が物を言う。空気清浄+ノイズキャンセリング+ヘッドホン、この組み合わせに魅力を感じるのであれば、業界をリードするダイソンが得意技術をつぎ込んだ本デバイスには、唯一無二の価値がある。
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