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PRヴィンテージ真空管の使いこなしに注目

トリプルアンプが音楽を朗らかに鳴らす “フラグシップモデルの兄弟機” 。「A&ultima SP3000T」レビュー

公開日 2024/06/27 06:30 岩井 喬
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ハイレゾ黎明期である2012年、MP3プレーヤーで大きく飛躍した韓国・アイリバーから突如ハイレゾ対応DAP「AK100」が発表され、大きな話題となった。このAK100にはMP3プレーヤーとは違う高級・高音質ラインのDAPであることを広く知らしめるべく、新ブランド “Astell&Kern” が冠されたのである。ここからハイレゾDAPの雄たる存在、あるいはトップランナーとしてAstell&Kernブランドは成長を続けてゆく。

従来のDAPのイメージを覆す、洗練されたデザインを纏う高剛性かつ重厚な金属マテリアル・ボディは、ポータブルオーディオユーザーの憧れであった。またDACチップメーカーと協力し、新たなフラグシップ・DACチップのローンチに合わせ、他社に先駆け最新チップを搭載したモデルを発売するなど、常に他社の一歩先を行く製品開発力も高く評価されている。

その足跡の中で特別な存在が “世界最高峰のハイエンドポータブルプレーヤー” と位置付けた、フラグシップの “A&ultimaシリーズ” 。そしてこの6月よりシリーズのラインナップに加わったのが、「A&ultima SP3000T」(以下、SP3000T)である。

「A&ultima SP3000T」(550,000円/税込)

■現行フラグシップモデルに並び立つ、真空管アンプ搭載モデル


A&ultimaシリーズは、2017年発売の「A&ultima SP1000」を皮切りに、2019年にはその後継「A&ultima SP2000」(以下、SP2000)が登場。さらに2021年にSP2000のバリエーションとして、KORGとノリタケ伊勢電子の共同開発で生まれた新型真空管「Nutube」を搭載した「A&ultima SP2000T」(以下、SP2000T)を展開した。

「A&ultima SP2000」(左)と、そのバリエーションモデルとして真空管アンプを搭載した「A&ultima SP2000T」(右)

ブランド誕生10周年となる翌2022年には新フラグシップとして「A&ultima SP3000」(以下、SP3000)が登場。そして本年、このSP3000にも真空管駆動できる出力モードを設けたSP3000Tが新製品として発売されることとなったのである。

2022年に発売された現行フラグシップモデル「A&ultima SP3000」

SP3000TはSP2000に対するSP2000Tのように、SP3000に対する上下関係ではなく、個性の異なるバリエーションとしてラインナップに加わった。SP2000TではDACチップ供給の問題もあったことからAKM(旭化成エレクトロニクス)製からESS製チップへ変更していたが、SP3000TではSP3000と同じ、AKM製フラグシップDACチップである「AK4499EX」とデジタルΔΣモジュレーター「AK4191EQ」による、デジタル部とアナログ部を分離させたセパレートソリューションを搭載している。

ただし、SP3000と違うのはそのチップ数だ。SP3000ではAK4499EXを4基、AK4191EQを2基搭載していたが、SP3000TではAK4499EXが左右それぞれ1基ずつの合計2基。AK4191EQについても左右1基ずつの合計2基搭載している。サンプリングレートとしてはPCM 768kHz/32bit、DSD 22.4MHzまで対応可能だ。

搭載数は異なるが、SP3000のDAC回路(画像左)と同じくAKM「AK4499EX」+「AK4191」のセパレートソリューションを採用

またSP2000Tでは、出力段へ半導体を用いるOPアンプ駆動の「OPアンプモード」、Nutubeによる真空管駆動の「TUBEアンプモード」、この2方式各々を組み合わせるハイブリッド駆動の「HYBRIDアンプモード」という3種類の出力モードを備えた「トリプルアンプシステム」を搭載していた。ちなみに型番末尾 “T(Triple)” の由来もここからきているという。

一方、SP3000Tでもトリプルアンプシステムを搭載しているが、SP2000Tと違うのはTUBEアンプモードだ。SP2000TのNutubeが、近年開発された直熱3極管タイプの新型真空管であるのに対し、SP3000Tで採用されたのは、真空管の全盛期に製造された直熱5極管タイプのヴィンテージ管、RAYTHEON(レイセオン)製「JAN6418」である。電池駆動も可能な低電圧対応のサブミニチュア管であり、ベースとなる「6418」を高耐久性仕様とした軍用管がJAN6418となる。

SP3000Tでは長年未使用でストックされていたJAN6418を1本ずつ厳密に測定・選別し、デュアル構成で搭載。この選別によって左右の出力偏差も最小限に抑え込んだとのこと。最新の半導体と、古き良き時代のリアルな真空管、まさに新旧のテクノロジーを1台で楽しめる、理想的なつくりを実現したといえるだろう。

このJAN6418を搭載するにあたり、振動を拾って増幅してしまう真空管アンプ特有の問題「マイクロフォニックノイズ」低減のため、徹底した対策を施している。

次ページ古き良き真空管を、最新デジタルプレーヤーに馴染ませる技術力

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