公開日 2024/05/27 06:35
【特別企画】ネジ径違いを用意しラインナップを強化
アンダンテラルゴの“足元強化プロジェクト”。「スルーホールスパイク」の実力を体験
林 正儀
いま愛用されているオーディオシステムの脚部に注目してほしい。スパイクを使用している機器はあるだろうか? これらのスパイクを交換し、機器の実力を最大限に引き出すために開発されたアイテムが、アンダンテラルゴの「スルーホールスパイク」である。新たに異なるネジ径も用意しラインアップを強化。その実力を、アンダンテラルゴの試聴室と自宅にて林 正儀氏が体験する。
アンダンテラルゴの「スルーホールスパイク」はいかにして生まれたのか。開発秘話を鈴木 良氏に伺おう。普通のスパイクは金属の棒からネジ山を切って先端を尖らせているのみ。それが一般的だが、同社は独自の発想で穴あきの中空構造とした。機器を安定して支えつつ、理想の振動コントロールを実現するものだ。
この中空スパイクは、もともとは同社のオーディオラックであるリジッドテーブルやリジッドタワーにあわせて開発したそうだ。ラックの中ではスピーカーからの振動が床や空気を伝わっておし寄せる。その中で末端の先端部分。鉛筆でいえば芯の尖った部分だが、そこでの振動がどう収束していくのかが重要であると閃いたそうだ。
「実はラックのコーナーのジョイントも中空なんですよ。中空の方が圧倒的に音がよい」。コーナー部を中空にするのであれば、僅か2-3cmのスパイクも中空にしてみたらどうだろうかと……。
だが中空なら何でもいいかといえばさにあらず。どれくらいの内径でどこまで開けるのか? 数えきれないほどの試行錯誤が続き、できあがったのが自社ラックのための専用スパイク。この流れのなかでスルーホールスパイクは誕生したのだ。
アイディアとしては7 - 8年前からのスタートで、これまでM8仕様のみであった。それをきちっとM6からM8、M10、M12とシリーズ化したのは今回が初めてである。材質は試聴により徹底吟味した特殊ステンレスだ。
エネルギーが漏れずに全て音になる。そんな効果を狙って登場したのがスルーホールスパイクシリーズだ。一般のラックやアンプ、スピーカーに使える規格にサイズ=穴径とピッチを再設計したアイテムで、ラインナップは6タイプ。各4本入りでスパナなどの専用工具付きだから自分で付け替えができる。
今回の試聴は2パターンだ。まずCDプレーヤーとプリメインアンプを乗せたクアドラスパイアのラックからいこう。現在は純正のスパイクがついた状態で、スパイクを取り替えて比較試聴し、次にスピーカーをという流れである。
まずラックに付属の純正スパイクはアルミ製。「M10の1.5」というピッチの粗いタイプだ。これをスルーホールスパイクの「TS-M10-Q」に付け替えた。付属の棒でガタがないよう調整すればピタリと安定する。
これは見事な激変ぶりだ。情報が正確に引き出されるためか、シャンソンはハイのきつさや歪み感がすっと消える。中低域にかけて表情豊かで体温感のある肉声らしさが生まれ、伴奏ピアノも実にナチュラルだ。
「大学祝典序曲」では埋もれていた楽器の重なりや微細音が次々に出現。遠近や空間のキャパが拡大されるとともに、管弦楽のうねりやハーモニーが躍動的で力強い。全く違うオーケストになったようで、ふくよかで重厚なブラームス音楽を肌で感じることができた。スピーカーを変えてもここまでの変化が味わえるかどうかだ。これはすごい!クアドラスパイアのオーディオラックの素姓の良さを存分に引き出しているのだ。
次にスピーカーはLINNの「5140」(イースペック)で、筆者もかつて愛用していた。LINNのほどんどの中級スピーカーはすべて「M8の1.25」スパイクを採用。ここに同じサイズ、ピッチのスルーホールスパイクを装着してみた。
スピーカーの場合は、より積極的にスパイクがスピーカーをコントロールした印象になる。不要な付帯音が取り除かれ、音色が豊かになって高さやスケールが圧倒的に増した。オーケストラもヴォーカルも質感や位置情報が精密に描かれたということだ。
番外編は拙宅スピーカーだ。モニターオーディオの「PL-300」をスルーホールスパイクの「TS-M10」に付け替えよう。スパイク受けは7-8年前のアンダンテラルゴ「SM-7A」のままであるが、明らかに音場の透明さや解像力が向上。雑味のないクリーンな表現となり、雄大なスケール感が蘇る。
さらにサイレントマウントを最新仕様の「SM-7X」に付け替えたところ、見た目が引き締まるのとクオリティ的にも過去最高のレベルに達したから拍手するしかない。カール・ベーム指揮「モーツァルト:レクイエム」のみずみずしい弦とコーラスがふわっと舞いおりた。ジャズはリアルな熱気にあふれる。
読者諸氏もこのスルーホールスパイクをサイレントマウントとの組み合わせでぜひ楽しんで欲しいものだ。
(提供:アンダンテラルゴ)
本記事は『季刊・analog vol.79』からの転載です
■エネルギーが漏れずに全て音になる。中空構造が最大のポイント
アンダンテラルゴの「スルーホールスパイク」はいかにして生まれたのか。開発秘話を鈴木 良氏に伺おう。普通のスパイクは金属の棒からネジ山を切って先端を尖らせているのみ。それが一般的だが、同社は独自の発想で穴あきの中空構造とした。機器を安定して支えつつ、理想の振動コントロールを実現するものだ。
この中空スパイクは、もともとは同社のオーディオラックであるリジッドテーブルやリジッドタワーにあわせて開発したそうだ。ラックの中ではスピーカーからの振動が床や空気を伝わっておし寄せる。その中で末端の先端部分。鉛筆でいえば芯の尖った部分だが、そこでの振動がどう収束していくのかが重要であると閃いたそうだ。
「実はラックのコーナーのジョイントも中空なんですよ。中空の方が圧倒的に音がよい」。コーナー部を中空にするのであれば、僅か2-3cmのスパイクも中空にしてみたらどうだろうかと……。
だが中空なら何でもいいかといえばさにあらず。どれくらいの内径でどこまで開けるのか? 数えきれないほどの試行錯誤が続き、できあがったのが自社ラックのための専用スパイク。この流れのなかでスルーホールスパイクは誕生したのだ。
アイディアとしては7 - 8年前からのスタートで、これまでM8仕様のみであった。それをきちっとM6からM8、M10、M12とシリーズ化したのは今回が初めてである。材質は試聴により徹底吟味した特殊ステンレスだ。
エネルギーが漏れずに全て音になる。そんな効果を狙って登場したのがスルーホールスパイクシリーズだ。一般のラックやアンプ、スピーカーに使える規格にサイズ=穴径とピッチを再設計したアイテムで、ラインナップは6タイプ。各4本入りでスパナなどの専用工具付きだから自分で付け替えができる。
■クアドラスパイアの素姓の良さを存分に引き出す
今回の試聴は2パターンだ。まずCDプレーヤーとプリメインアンプを乗せたクアドラスパイアのラックからいこう。現在は純正のスパイクがついた状態で、スパイクを取り替えて比較試聴し、次にスピーカーをという流れである。
まずラックに付属の純正スパイクはアルミ製。「M10の1.5」というピッチの粗いタイプだ。これをスルーホールスパイクの「TS-M10-Q」に付け替えた。付属の棒でガタがないよう調整すればピタリと安定する。
これは見事な激変ぶりだ。情報が正確に引き出されるためか、シャンソンはハイのきつさや歪み感がすっと消える。中低域にかけて表情豊かで体温感のある肉声らしさが生まれ、伴奏ピアノも実にナチュラルだ。
「大学祝典序曲」では埋もれていた楽器の重なりや微細音が次々に出現。遠近や空間のキャパが拡大されるとともに、管弦楽のうねりやハーモニーが躍動的で力強い。全く違うオーケストになったようで、ふくよかで重厚なブラームス音楽を肌で感じることができた。スピーカーを変えてもここまでの変化が味わえるかどうかだ。これはすごい!クアドラスパイアのオーディオラックの素姓の良さを存分に引き出しているのだ。
次にスピーカーはLINNの「5140」(イースペック)で、筆者もかつて愛用していた。LINNのほどんどの中級スピーカーはすべて「M8の1.25」スパイクを採用。ここに同じサイズ、ピッチのスルーホールスパイクを装着してみた。
スピーカーの場合は、より積極的にスパイクがスピーカーをコントロールした印象になる。不要な付帯音が取り除かれ、音色が豊かになって高さやスケールが圧倒的に増した。オーケストラもヴォーカルも質感や位置情報が精密に描かれたということだ。
■自宅スピーカーでも体験。サイレントマウントとの相乗効果を実感
番外編は拙宅スピーカーだ。モニターオーディオの「PL-300」をスルーホールスパイクの「TS-M10」に付け替えよう。スパイク受けは7-8年前のアンダンテラルゴ「SM-7A」のままであるが、明らかに音場の透明さや解像力が向上。雑味のないクリーンな表現となり、雄大なスケール感が蘇る。
さらにサイレントマウントを最新仕様の「SM-7X」に付け替えたところ、見た目が引き締まるのとクオリティ的にも過去最高のレベルに達したから拍手するしかない。カール・ベーム指揮「モーツァルト:レクイエム」のみずみずしい弦とコーラスがふわっと舞いおりた。ジャズはリアルな熱気にあふれる。
読者諸氏もこのスルーホールスパイクをサイレントマウントとの組み合わせでぜひ楽しんで欲しいものだ。
(提供:アンダンテラルゴ)
本記事は『季刊・analog vol.79』からの転載です