公開日 2024/07/25 06:30
F-1のテーマソングからアンプラグド、ハードロックまで
ヤマハの最新ブックシェルフスピーカーで80年代ヒットナンバーを存分に楽しもう!NS-800A/NS-600Aの音の違いもチェック
岩井 喬
ヤマハより、2ウェイブックシェルフスピーカーの兄弟機「NS-800A」と「NS-600A」が登場した。上位グレードの技術を搭載しながらも、家庭内で使いやすい小型サイズにまとめあげた意欲作である。そのサウンドを、80年代から90年代ロックをこよなく愛する岩井 喬氏が試聴。当時のポップス、ロック、フュージョンまで大ヒットナンバーを中心に“ヤマハで音楽を聴く楽しさ”を改めて検証する。
型名に冠した“NS”の由来となるナチュラルサウンドを標榜するヤマハのスピーカー作り。その歴史あるラインナップが新たな世代へと突入した。“音色”“サウンドイメージ”“ダイナミクス”の3要素に着目し、アーティストの想いを余すところなく表現するTRUE SOUNDを目指した設計を取り入れ、下位モデルにもそのノウハウが反映されている。注目すべきは“音色”をつかさどる、振動板素材にベリリウムの音速とアラミド繊維の内部損失、この両方の特性を併せ持つというZYLON(ザイロン)を用いたスピーカーユニットの開発にあろう。
フラグシップの「NS-5000」とそのコンセプトを2ウェイ化したコンパクト機「NS-3000」は全ユニットの振動板へZYLONを用い、モネル合金蒸着コーティングを施していた。全ユニットへ同一素材の振動板を用いることで音色を揃え、ユニット間での音の繋がりもスムーズなものとし、より自然で正確なサウンド再生を実現。これはTRUE SOUNDを実践するうえで必須の技術の一つであり、NS-5000以降のHiFiスピーカー開発で継承される、ヤマハならではのこだわりポイントとなっている。
さらにラインナップを強化する中で生まれたフロア型モデル「NS-2000A」では、トゥイーターやウーファーなど、NS-3000と同口径の振動板ではあるものの、さらに新たな技術を導入。ZYLONに加え、グランドピアノの響板など、楽器の素材にも多く取り入れられているスプルースなどを混抄した、独自のハーモニアスダイアフラムを採用したのである。これによりZYLONだけでは難しかった厚みのコントロールや細やかなカーブ成形が可能となり、理想の特性追求が叶ったという。
このハーモニアスダイアフラムを用いながら、よりリーズナブルな価格を実現し、手に取りやすくしたブックシェルフ型2ウェイモデルとして、この春「NS-600A」「NS-800A」の2ラインナップが誕生した。いずれも使用ユニットは全て上記のハーモニアスダイアフラムを採用。
トゥイーターはNS-2000Aと同じ3cmドーム型だが、内部の磁性流体を2ウェイ用に最適化しクロスオーバー付近の音質を改善した新設計のものとなる。またウーファーに関しても、NS-800AはNS-2000Aと同じ16cm口径だが、NS-800Aでは中低域の歪みを低減すべく、磁気回路にショートリングを追加。エッジやダンパーについても見直しを図り、ユニットの制動性を高めた。
一方、NS-600Aは同様のテクノロジーを盛り込んだ13cm口径ウーファーを搭載しており、それに応じてキャビネットサイズを小さくまとめている点がNS-800Aとの違いとなる。
ネットワークの素子数やフィルター特性(低域側:−12dB/oct、高域側:−18dB/oct)、クロスオーバー周波数2.6kHzは両モデルとも共通であるが、ウーファーの違いにより素子の数値も多少異なるものの、ムンドルフ製「MCap SUPREME Classic」オーディオ用コンデンサーなど、こだわりのパーツは同じグレードのもので揃えた。さらに全ての内部配線材はPC-Triple C導体とした他、ターミナル端子も真鍮削り出しのオリジナル品を採用するなど、高音質を追求した仕様となっている。
TRUE SOUNDの第2要素、“サウンドイメージ”に関わる技術は、同社グランドピアノと同じ黒鏡面ピアノフィニッシュが施されるキャビネット内にあるが、これもNS-5000から継承したものだ。まずトゥイーター背後には不要共振を抑える特許技術R.S.チャンバーを装着する他、上下・奥行き方向の定在波を打ち消す共鳴管構造体アコースティックアブソーバーを天板と底板の内側へ2本設置。これは吸音材では吸いにくい周波数を効果的に吸音できるうえ、大量に吸音材を用いることでの音質的デメリットを解消できる。
そしてTRUE SOUNDの最後のピース“ダイナミクス”は、音楽の静と動の表現をつかさどる要素、キャビネット構造についてだ。キャビネット設計にあたっては、ヤマハの強みである楽器の研究・開発で用いられるレーザー振動計とFEM解析を導入。振動の質を見極め、響きを活用するのか否か、固める場所は固め、不要共振を抑えるための構造を追求したという。キャビネットはMDF製で、背後に向かって細くなる形状となっており、両側面には平行面が存在しない。内部には必要最小限の補強桟を設けてブックシェルフ型ならではの音場再現と、心地よい音楽再生を両立できるよう設計されている。
背面側に放射されるバスレフポートはポートノイズを抑える独自のツイステッドフレアポートを採用。放射端に向かって広がり方を変え、ひねりも加えた構造で、俊敏なレスポンスとダイナミックな低域表現により、音楽のエネルギーや空気感も余すところなく再現できるという。また、ポート内側は終端を斜めにカットすることで、特定の周波数に集中するピークを解消し、歯切れの良い低音再生を実現。バスレフのポートチューニングはNS-600Aが約47Hz、NS-800Aが約40Hzとなっており、近年の音楽的トレンドにも応える低音域までカバーできる。まさにサイズ感を超えた低域の豊かさ、エナジーをもたらしてくれる。
この2モデルに対応するオプションとして用意されたスピーカースタンド「SPS-800A」は、ベース部に42mmの厚みで高密度MDFを3層貼り合わせた上、スチール板を底面に装着させた低重心設計を採用。支柱部分も音の反射を最小限に抑える滑らかな曲線を取り入れた仕上げとするなど、細部までこだわったつくりとなっている。設置面には手で締め付けられる固定ネジを用意、高さの微調整が可能な着脱式スパイクも備えるなど、使い勝手も良い。今回の試聴ではこのSPS-800Aも用いることとした。
上位グレードの素材や技術を踏襲しつつラインナップを強化
型名に冠した“NS”の由来となるナチュラルサウンドを標榜するヤマハのスピーカー作り。その歴史あるラインナップが新たな世代へと突入した。“音色”“サウンドイメージ”“ダイナミクス”の3要素に着目し、アーティストの想いを余すところなく表現するTRUE SOUNDを目指した設計を取り入れ、下位モデルにもそのノウハウが反映されている。注目すべきは“音色”をつかさどる、振動板素材にベリリウムの音速とアラミド繊維の内部損失、この両方の特性を併せ持つというZYLON(ザイロン)を用いたスピーカーユニットの開発にあろう。
フラグシップの「NS-5000」とそのコンセプトを2ウェイ化したコンパクト機「NS-3000」は全ユニットの振動板へZYLONを用い、モネル合金蒸着コーティングを施していた。全ユニットへ同一素材の振動板を用いることで音色を揃え、ユニット間での音の繋がりもスムーズなものとし、より自然で正確なサウンド再生を実現。これはTRUE SOUNDを実践するうえで必須の技術の一つであり、NS-5000以降のHiFiスピーカー開発で継承される、ヤマハならではのこだわりポイントとなっている。
さらにラインナップを強化する中で生まれたフロア型モデル「NS-2000A」では、トゥイーターやウーファーなど、NS-3000と同口径の振動板ではあるものの、さらに新たな技術を導入。ZYLONに加え、グランドピアノの響板など、楽器の素材にも多く取り入れられているスプルースなどを混抄した、独自のハーモニアスダイアフラムを採用したのである。これによりZYLONだけでは難しかった厚みのコントロールや細やかなカーブ成形が可能となり、理想の特性追求が叶ったという。
このハーモニアスダイアフラムを用いながら、よりリーズナブルな価格を実現し、手に取りやすくしたブックシェルフ型2ウェイモデルとして、この春「NS-600A」「NS-800A」の2ラインナップが誕生した。いずれも使用ユニットは全て上記のハーモニアスダイアフラムを採用。
トゥイーターはNS-2000Aと同じ3cmドーム型だが、内部の磁性流体を2ウェイ用に最適化しクロスオーバー付近の音質を改善した新設計のものとなる。またウーファーに関しても、NS-800AはNS-2000Aと同じ16cm口径だが、NS-800Aでは中低域の歪みを低減すべく、磁気回路にショートリングを追加。エッジやダンパーについても見直しを図り、ユニットの制動性を高めた。
一方、NS-600Aは同様のテクノロジーを盛り込んだ13cm口径ウーファーを搭載しており、それに応じてキャビネットサイズを小さくまとめている点がNS-800Aとの違いとなる。
ネットワークの素子数やフィルター特性(低域側:−12dB/oct、高域側:−18dB/oct)、クロスオーバー周波数2.6kHzは両モデルとも共通であるが、ウーファーの違いにより素子の数値も多少異なるものの、ムンドルフ製「MCap SUPREME Classic」オーディオ用コンデンサーなど、こだわりのパーツは同じグレードのもので揃えた。さらに全ての内部配線材はPC-Triple C導体とした他、ターミナル端子も真鍮削り出しのオリジナル品を採用するなど、高音質を追求した仕様となっている。
パーツ類や構造も吟味しブックシェルフとしての完成度を高める
TRUE SOUNDの第2要素、“サウンドイメージ”に関わる技術は、同社グランドピアノと同じ黒鏡面ピアノフィニッシュが施されるキャビネット内にあるが、これもNS-5000から継承したものだ。まずトゥイーター背後には不要共振を抑える特許技術R.S.チャンバーを装着する他、上下・奥行き方向の定在波を打ち消す共鳴管構造体アコースティックアブソーバーを天板と底板の内側へ2本設置。これは吸音材では吸いにくい周波数を効果的に吸音できるうえ、大量に吸音材を用いることでの音質的デメリットを解消できる。
そしてTRUE SOUNDの最後のピース“ダイナミクス”は、音楽の静と動の表現をつかさどる要素、キャビネット構造についてだ。キャビネット設計にあたっては、ヤマハの強みである楽器の研究・開発で用いられるレーザー振動計とFEM解析を導入。振動の質を見極め、響きを活用するのか否か、固める場所は固め、不要共振を抑えるための構造を追求したという。キャビネットはMDF製で、背後に向かって細くなる形状となっており、両側面には平行面が存在しない。内部には必要最小限の補強桟を設けてブックシェルフ型ならではの音場再現と、心地よい音楽再生を両立できるよう設計されている。
背面側に放射されるバスレフポートはポートノイズを抑える独自のツイステッドフレアポートを採用。放射端に向かって広がり方を変え、ひねりも加えた構造で、俊敏なレスポンスとダイナミックな低域表現により、音楽のエネルギーや空気感も余すところなく再現できるという。また、ポート内側は終端を斜めにカットすることで、特定の周波数に集中するピークを解消し、歯切れの良い低音再生を実現。バスレフのポートチューニングはNS-600Aが約47Hz、NS-800Aが約40Hzとなっており、近年の音楽的トレンドにも応える低音域までカバーできる。まさにサイズ感を超えた低域の豊かさ、エナジーをもたらしてくれる。
この2モデルに対応するオプションとして用意されたスピーカースタンド「SPS-800A」は、ベース部に42mmの厚みで高密度MDFを3層貼り合わせた上、スチール板を底面に装着させた低重心設計を採用。支柱部分も音の反射を最小限に抑える滑らかな曲線を取り入れた仕上げとするなど、細部までこだわったつくりとなっている。設置面には手で締め付けられる固定ネジを用意、高さの微調整が可能な着脱式スパイクも備えるなど、使い勝手も良い。今回の試聴ではこのSPS-800Aも用いることとした。