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PRF-1のテーマソングからアンプラグド、ハードロックまで

ヤマハの最新ブックシェルフスピーカーで80年代ヒットナンバーを存分に楽しもう!NS-800A/NS-600Aの音の違いもチェック

公開日 2024/07/25 06:30 岩井 喬
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NS-800A -音像の逞しさが引き立ちよりパワフルなサウンドを届ける



ここでスピーカーをNS-800Aへチェンジ。NS-800Aは一回り大きなキャビネットを生かした豊かな音場と、音像の逞しさが引き立つ、よりパワフルで存在感あるサウンドを聴かせてくれる。

「NS-800A」 275,000円(1台・税込)

NS-600Aとの違いを確認すべく、NS-800Aでもリー・リトナー「ミスター・ブリーフケース」を聴いてみた。まずベースやキックドラム、シンセの音像の厚み、鳴りっぷりのリッチさが増しており、ギターのボディの厚み、倍音の伸びも一層豊かに感じられる。特にリズム隊との絡みは中低域の粘りが伴い、濃密なグルーヴを生み出す。非常に心地よく楽しいサウンドだ。ボーカルも落ち着き良く、口元の艶感もより鮮明に張り出してくる。NS-600Aでも十分音像の存在感の高さを感じられたが、どっしりと地に根を張るような重心の低さという点ではNS-800Aに分があるだろう。

組み合わせにはアキュフェーズのCDプレーヤー「DP-770」とプリメインアンプ「E-700」を使用

続いて同じフュージョン系として、87年発売のチック・コリア・エレクトリック・バンド『ライト・イヤーズ』から「スターライト」を聴く。本作ではチックはシンクラビアなど、電子系だけでなくアコースティックピアノも織り交ぜたプレイを聴かせてくれる。そして若手の技巧派メンバーで構成されたバンドと新たな地平に乗り出し、高みを目指すエナジーに満ちた作品だ。

ギターのクリアなカッティングとファンキーなスラップベースが楽曲をリードし、シャープなエッジを利かせたサックスが鮮やかに浮き立つ。低域弦までスッキリと響くピアノや、シンクラビア、ヤマハ「TX816」の音色を使い分けるチックの卓越したプレイも生き生きとしており、余韻も爽やかにまとめている。リヴァーブを活用したステージの広さ、キックドラムやベースの逞しい旋律も伸び良く表現。どっしりとしたアタック感も余裕で鳴らし込む。空間性の良さだけでなく、音像の太さ、演奏の熱量が的確に伝わってきた。

さらにこのリズムの厚みにスポットを当てたいと考え、チック・コリア・エレクトリック・バンドで華々しい活躍を見せたベーシスト、ジョン・パティトゥッチが88年に発表したリーダー作、『パティトゥイッチ』も聴いてみた。本作にもチック・コリアがプロデュース面・演奏面でサポートしているが、何よりも6弦ベースを操るパティトゥッチの超絶技巧さが堪能できる秀作だ。

チック・コリア・エレクトリック・バンドでともにリズム隊を務めているドラムスのデイブ・ウェックルが参加する「グロウイング」では、ハリ良く伸びやかなスラップベースに、6弦ベースをオーバーダビングした躍動的なサウンドが飛び出してくる。ドラムの密度感と奥行き方向、爽やかに左右へ広がるシンセの音色が空間性、エアー感をしっかりと演出。6弦ベースの音色も鮮やかに浮き上がるが、ガットギターのような温かみとエッジの丸みを持った弦のニュアンスを聴かせており、一瞬ベースであることを忘れてしまう。この流麗な音運びでメロディを紡ぐパティトゥッチの巧みなプレイには終始圧倒された。ベースプレイは厚みと存在感だけでなく、アタックのキレ味も高い。さらにシンセに至っても中域の粘りがサウンドを重層的に彩っており、NS-800Aの中低域におけるパワーを実感することができた。

ここまで海外のフュージョンをチョイスしてきたが、同年代の国内はどうだったのか。80〜90年代初頭にかけ、F-1人気とともに国民的認知度を得たのがTスクエアの「TRUTH」だろう。今回はそうした背景を受けて89年に発売されたセレクションベスト盤『F-1グランプリ』を用意した。海外のサウンドと比べると、ギュッと音像がまとまった密度の高い音質傾向である。キックドラムやベースはやや軽めだが、音場の見通しは深く、象徴的なウインドシンセの鮮やかさが際立つ。クリーントーンギターの煌きやリヴァーブの深さが空間の広さを創り出している。グンと下から突き上げるかのようなエネルギーを持ったギターソロの伸びも印象的。密度高く心地よいサウンドだ。

「TRUTH」を作曲した安藤まさひろとモータースポーツという共通項の先にある作品として長年愛されているのが、PlayStationのゲームソフト『GRAN TURISMO』シリーズであろう。ゲーム内の楽曲も安藤が手掛けているが、その中でもテーマ曲「Moon Over The Castle」はシリーズごとにバージョン違いが存在する象徴的楽曲だ。今回は98年に発売された第1作目のサウンドトラックから聴く。「TRUTH」にも負けない疾走感を持っており、ずしっとした厚みがあるリズム隊のパワフルな押し出しと、ぐんぐんと前へ出るエネルギッシュなエレキギターの伸び良く華やかなトーンが胸に迫る。バックで支えるオルガンプレイも熱く感じられるが、ブックシェルフ型でありながら、そうした熱量をダイレクトに表現できるNS-800Aの能力の高さにも驚いた。

F-1中継が「TRUTH」で始まり、そのエンディングはチープ・トリックのボーカリスト、ロビン・ザンダーの「イン・ディス・カントリー」で締めるというのがこの時代の定番であった。今回もその流れに沿って、「イン・ディス・カントリー」を聴く。本来この曲は87年発表のシルベスター・スタローン主演映画『オーバー・ザ・トップ』のオープニングで用いられていた。用意したのは『オーバー・ザ・トップ』のサウンドトラックだ。ドシッと響くキックドラムと粘るベースラインの逞しさをNS-800Aはいとも簡単に、さらりと聴かせてくれる。僅かにしわがれたボーカルの質感はほんのりとウェットさが伴う。音像の太さとコシのある描写が力強い歌唱をより引き立ててくれる。

ここで再びDAPを接続し、ハイレゾ音源を聴く。まずは昨年ようやくハイレゾ化されたヴァン・ヘイレン『F@U#C%K』(91年発表)の「Top Of The World」だ。サミー・ヘイガー在籍期はより大衆的で楽曲の完成度の高いアリーナロック色が高かったが、本曲もその象徴といえるものだろう。エディの奏でる歪みながらも澄み切った音伸びを見せるエレキギターの響きがより煌き良く引き立ち、サミーのハスキーボイスもハリ良くシャープにセンターへ定位。アタック感を中心にまとめたリズム隊のキレ良く軽やかなトーンも丁寧にトレースしており、アレックスならではの少し詰まった響きのスネアも偽りなく聴かせてくれる。リヴァーブの爽快さも手伝い、ステージ空間も広い。ギターの定位も立体的であり、ハイレゾだからこその情報量を実感した。

普段の試聴に良く使う楽曲も聴いてみる。95年に発売されたTOTO『TAMBU』から「I Will Remember」を聴いた。ドラムがサイモン・フィリップスとなり、専任ボーカリストがおらず、ギターのスティーヴ・ルカサーが兼任しているという、イレギュラーな時期の作品であるが、音場の空気感を捉えた優秀録音盤である。太鼓の響きの深さ、胴鳴り感をリアルに再現しており、ボーカルやコーラスの肉付きの良さ、その滑らかさもしっかりとトレース。しっとりとした落ち着きある描写で、ピアノのクリアな倍音も付帯感なく感じられる。「Gift Of Faith」ではサイモンの大口径キックドラムのファットなアタックも丁寧に捉えており、空気の動くさまも階調良く描き出す。改めてNS-800Aのブックシェルフ離れした低域再現性に驚かされた。

続いて87年に発売されたハート『BAD ANIMALS』から「ALONE」を聴いたが、イントロのクリスタル調に響くシンセの透明感ある音色と、S/N良く静かな音場に広がる、リヴァーブの深く澄んだ響きの対比が印象的である。抑揚良く肉付き感もナチュラルなボーカルの艶やかな描写も安定感があり、押し出し良いリズム隊も制動良く表現。エモーショナルなギターソロもシャープに決まる。アリーナロックの典型的な音作りであるが、いかにもホールでライブを鑑賞しているかのような残響の広がり(特にスネアの余韻)と音像の定位、厚みを再現しており、NS-800Aの持ち味である、目の前で演奏を聴いているかのような音楽体験を得られたように感じた。

改めてディスク再生に戻るが、83年に発売されたビリー・ジョエル『イノセント・マン』のSACDから「アップタウン・ガール」を聴く。SACD登場に合わせてDSDオーサリングされた音源だが、スターシップ同様、やや高域がピーキーな音質傾向にある。NS-800Aで聴くとボーカルのキレ味やコーラスとの分離の良さを確保しながら、キラキラとした高域のエッジ感を抑えつつ、音像の芯の太さを出す描写となるため、きつい方向に作用しない。リズミカルなアタックを刻む、ファットなキックドラムは適度に引き締まっており、軽快に前方へ飛び出す。余韻のエアー感も綺麗に捉えられており、音場の前後感も素直に見通せる。ピアノやタンバリンなど、個々のパートも鮮やかに浮き立ち、SACDならではの解像度の高さ、自然な空間性を堪能することができた。

最後に大編成ストリングス/オーケストラを背後に従えたポップス&ロック音源を聴いてみる。2002年に発売された(オリジナルは1988年)ジャーニーの『グレイテスト・ヒッツ』のSACDから「ラブ・ア・ウーマン」。もう一枚は99年発売のセリーヌ・ディオン『ザ・ベリー・ベスト』から「アイ・ウォント・ユー・トゥー・ニード・ミー」である。

前者は黄金期のメンバーで10年ぶりに復活した際のシングル曲で、SACD化の際に追加収録されたもの。ピアノやボーカルの鮮度の良さ、深く伸びやかなリヴァーブの響きが特徴で、音離れも良く、奥行き深い音場感も味わえる。ストリングスの厚み、滑らかなハーモニーの質感も丁寧で、ギターソロのコクのある音色も良い。実に大人びた潤いあるサウンドだ。

後者はベスト盤用に新録された一曲で、今はなきニューヨークのヒット・ファクトリーでオーケストラ収録が行われている。ボーカルの潤い良くしなやかな質感と、朗々と歌い上げる感動的なまでの描写と、その声を包み込むオーケストラの雄大さ、ダイナミックさがこの曲の魅力だ。ベースやオケの低域パートの響きの深さ、階調性もきちんと追随しており、管弦楽器の旋律は奥行き深く広がっている。冒頭のオケの唸りもきめ細やかで、その抑揚や躍動感も損失なく再現。じっくりとそして何度も聴き込みたい音であった。

次ページスピーカーの開発担当者からのコメントもあり

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