公開日 2024/12/25 06:30
今年、Qobuzのハイレゾストリーミングサービスがついに始まりました。音元出版が初めて開催した「ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2024」においても、大きな話題となりました。ハイレゾダウンロードやSACDとともに、ハイエンド・サウンドで名演奏をじっくりと堪能できる機会が増えてきたことは、実に喜ばしいことです。
そんな今年、私が初夏に注目したモデルがあります。それは、LUMINの「P1 mini」というネットワークプレーヤー/プリアンプです。実に洗練されたスタイリッシュなデザインが印象的で、ラックの上段に置くと、ハイエンド・プリアンプのように見えます。
その機能も豊富で、十分に満足できるものです。機能としては、USB、LAN、光ファイバー伝送するSFP、HDMI、光/同軸を装備するほか、RCAのアナログ入力も装備しています。現在、ダウンロードできるハイスペックなハイレゾ音源に対応できるだけではなく、Qobuzなどのストリーミング音源にも対応していますし、Roon再生も可能です。
その操作は、独自の再生アプリを使い、iPadなどのモバイルデバイスで行えます。美しいハンドリモコンも装備されています。フロント左側の円形のノブは、入力切り替えで、右のノブはボリュームです。ですから、パワーアンプやパワードスピーカーとダイレクトに接続可能です。ディスプレイには、入力と音量値、再生音源が表示されます。
内部も精密感に溢れています。搭載する技術は、ほとんどフラグシップモデルであった「LUMIN X1」を踏襲しています。左側には、シールドボックスでカバーされたリニア電源を配置しています。内部に大型のトロイダルトランスも搭載しています。その横に広い面積の一枚基板構成のオーディオ基板があります。
選択されたデジタル入力は、まず、LAN、光/同軸、などを受信するレシーバーに接続します。USBにはXMOSレシーバーが使われています。全体を制御するメインCPUは電源部の横のフロント側に配置され、再生アプリ「LUMIN App」のコマンドにより、オーディオ回路を制御します。
本機では、技術非公開のフランスの丸め誤差とビット損失の無いLEEDH(リード)という音量調整機能を採用していますが、その機能もこのCPUで行います。CPU制御で動作した前述の各レシーバーの信号は、中央手前のFPGAに伝送されます。その横には、低位相ノイズで、高精度で、極めて安定度の高いFemto Clock(44.1kHzと48kHz系の2式)を配置しています。ですから、このFPGAがクロック伝送制御を行い、再生音源のサンプリングレートを生成し同期する仕組みです。その後、信号は一列のデュアルモノ構成のDAC/アナログ回路に伝送されます。
DACチップは、ESSのハイグレード仕様の「ES9028PRO」をL/Rに各1式使用しています。この素子の内部には、8式のDACが内蔵され、これを並列駆動するので、ダイナミックレンジとリニアリティー(変換の直線性)が、L/R1式に比べて格段に向上します。特に超弱音の再現性が高まり、演奏場所の空気感などの微弱音をよく再現します。
次にDA変換されたアナログ信号は、高精度、高音質オペアンプを使用したローパス・フィルターでアナログ出力されます。ローパス・フィルターは、IV変換と出力バッファーの組み合わせで再生帯域外の高域ノイズを排除する役割です。このFPGA制御から、DAC、アナログ回路までの信号の流れを同社は、「LUMINフィルター」と呼び、ESSのDACチップを独自の制御でカスタマイズさせています。インパルス応答波形は、プリ、ポストリンギングを大幅に低減した独自のアポタイジング・フィルター・カーブです。特に広いダイナミックレンジと高解像度再生に貢献しています。
また、音量調整には、前述のLEEDHを使用しますが、これは、このフィルター全体をメインCPUのLEEDHアルゴリズムで制御しています。
なお、RCAのアナログ入力の場合は、ADコンバーター素子で、192kHz/24bitに変換され、前述のFPGAに伝送され、DA変換される仕組みになっています。回路面では、各素子を干渉の影響を受けないように適正配置し、伝送距離を最短にしていることも特徴です。
外観のデザインもさることながら、このオーディオ基板の美しさにも魅了されます。個人的には、ハイエンド・オーディオとは、音質を重視しながらも、この両面も不可欠のように思えてなりません。
その音質は、搭載技術が反映され、高解像度ワイドレンジ特性を引き立てていることが特徴で、LUMINフィルターにより、自然な音の立ち上がりが聴けます。音色としては、長く愛聴できる透明度の高いナチュラルな音が特徴で、直熱三極管「300B」に繋がる豊かな倍音が魅力的で、音に浸透力があります。
私のリファレンスの2Lレーベル「Quiet Winter Night」(352.8kHz/24bit)では、女性ヴォーカルの声が若々しく、クリーミーな声が聴けます。実在感があり、トランペット、ギター、ピアノ、ドラムスなどは音抜けが良く、その場で演奏されているかのような感覚になります。これは、Femtoクロックを使用したESSのDACチップの効果と実感します。
同じく2Lのピアノ・ジャズトリオ「Polarity」(352.8kHz/24bit)では、ドラムスの打音が、かなり俊敏ですが、音の立ち上がりが強調されないため、ドラムの表面の皮の質感などがよく再現され、演奏の臨場感を鮮明にします。シンバルの鮮度が高く、切れ味良く、鳴り響きます。美しい響きです。
今年、創業55周年を迎えたECMレーベルから、トルド・グスタフセン・トリオの「OPENING」(96kHz/24bit)をQobuzで再生しました。これも、ダイナミックレンジと解像度が高く、驚くほどの音質の良さが体験できました。
LUMIN P1 miniは、これからのハイレゾ・プレイバックを魅力的に再生してくれることでしょう。ハイエンド・オーディオとしての位置付けを適正価格で実現していることも大きな魅力です。とりわけ、光ファイバーを使用するSFPポートの音では、ネットワーク環境のノイズを排除し、さらなる高音質が体験できました。
本機は、音元出版が主催するアワード「オーディオ銘機賞2025」で、ネットオーディオ大賞も受賞しました。私自身も多くのオーディオ・ファイルに推薦したいモデルです。ぜひ一度、専門店で試聴して頂きたいと思うところです。
(提供:完実電気)
【オーディオ銘機賞2025】ネットオーディオ大賞受賞
評論家イチオシ!LUMIN「P1 mini」レビュー。「驚くほどの音質の良さが体験できた」
角田郁雄■洗練されたデザインと多機能でネットワーク市場を牽引
今年、Qobuzのハイレゾストリーミングサービスがついに始まりました。音元出版が初めて開催した「ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2024」においても、大きな話題となりました。ハイレゾダウンロードやSACDとともに、ハイエンド・サウンドで名演奏をじっくりと堪能できる機会が増えてきたことは、実に喜ばしいことです。
そんな今年、私が初夏に注目したモデルがあります。それは、LUMINの「P1 mini」というネットワークプレーヤー/プリアンプです。実に洗練されたスタイリッシュなデザインが印象的で、ラックの上段に置くと、ハイエンド・プリアンプのように見えます。
その機能も豊富で、十分に満足できるものです。機能としては、USB、LAN、光ファイバー伝送するSFP、HDMI、光/同軸を装備するほか、RCAのアナログ入力も装備しています。現在、ダウンロードできるハイスペックなハイレゾ音源に対応できるだけではなく、Qobuzなどのストリーミング音源にも対応していますし、Roon再生も可能です。
その操作は、独自の再生アプリを使い、iPadなどのモバイルデバイスで行えます。美しいハンドリモコンも装備されています。フロント左側の円形のノブは、入力切り替えで、右のノブはボリュームです。ですから、パワーアンプやパワードスピーカーとダイレクトに接続可能です。ディスプレイには、入力と音量値、再生音源が表示されます。
■高度なFPGAと低位相ノイズのクロックでデジタル再生を追求
内部も精密感に溢れています。搭載する技術は、ほとんどフラグシップモデルであった「LUMIN X1」を踏襲しています。左側には、シールドボックスでカバーされたリニア電源を配置しています。内部に大型のトロイダルトランスも搭載しています。その横に広い面積の一枚基板構成のオーディオ基板があります。
選択されたデジタル入力は、まず、LAN、光/同軸、などを受信するレシーバーに接続します。USBにはXMOSレシーバーが使われています。全体を制御するメインCPUは電源部の横のフロント側に配置され、再生アプリ「LUMIN App」のコマンドにより、オーディオ回路を制御します。
本機では、技術非公開のフランスの丸め誤差とビット損失の無いLEEDH(リード)という音量調整機能を採用していますが、その機能もこのCPUで行います。CPU制御で動作した前述の各レシーバーの信号は、中央手前のFPGAに伝送されます。その横には、低位相ノイズで、高精度で、極めて安定度の高いFemto Clock(44.1kHzと48kHz系の2式)を配置しています。ですから、このFPGAがクロック伝送制御を行い、再生音源のサンプリングレートを生成し同期する仕組みです。その後、信号は一列のデュアルモノ構成のDAC/アナログ回路に伝送されます。
DACチップは、ESSのハイグレード仕様の「ES9028PRO」をL/Rに各1式使用しています。この素子の内部には、8式のDACが内蔵され、これを並列駆動するので、ダイナミックレンジとリニアリティー(変換の直線性)が、L/R1式に比べて格段に向上します。特に超弱音の再現性が高まり、演奏場所の空気感などの微弱音をよく再現します。
次にDA変換されたアナログ信号は、高精度、高音質オペアンプを使用したローパス・フィルターでアナログ出力されます。ローパス・フィルターは、IV変換と出力バッファーの組み合わせで再生帯域外の高域ノイズを排除する役割です。このFPGA制御から、DAC、アナログ回路までの信号の流れを同社は、「LUMINフィルター」と呼び、ESSのDACチップを独自の制御でカスタマイズさせています。インパルス応答波形は、プリ、ポストリンギングを大幅に低減した独自のアポタイジング・フィルター・カーブです。特に広いダイナミックレンジと高解像度再生に貢献しています。
また、音量調整には、前述のLEEDHを使用しますが、これは、このフィルター全体をメインCPUのLEEDHアルゴリズムで制御しています。
なお、RCAのアナログ入力の場合は、ADコンバーター素子で、192kHz/24bitに変換され、前述のFPGAに伝送され、DA変換される仕組みになっています。回路面では、各素子を干渉の影響を受けないように適正配置し、伝送距離を最短にしていることも特徴です。
外観のデザインもさることながら、このオーディオ基板の美しさにも魅了されます。個人的には、ハイエンド・オーディオとは、音質を重視しながらも、この両面も不可欠のように思えてなりません。
■透明度高く、真空管にも通じる豊かな倍音が魅力
その音質は、搭載技術が反映され、高解像度ワイドレンジ特性を引き立てていることが特徴で、LUMINフィルターにより、自然な音の立ち上がりが聴けます。音色としては、長く愛聴できる透明度の高いナチュラルな音が特徴で、直熱三極管「300B」に繋がる豊かな倍音が魅力的で、音に浸透力があります。
私のリファレンスの2Lレーベル「Quiet Winter Night」(352.8kHz/24bit)では、女性ヴォーカルの声が若々しく、クリーミーな声が聴けます。実在感があり、トランペット、ギター、ピアノ、ドラムスなどは音抜けが良く、その場で演奏されているかのような感覚になります。これは、Femtoクロックを使用したESSのDACチップの効果と実感します。
同じく2Lのピアノ・ジャズトリオ「Polarity」(352.8kHz/24bit)では、ドラムスの打音が、かなり俊敏ですが、音の立ち上がりが強調されないため、ドラムの表面の皮の質感などがよく再現され、演奏の臨場感を鮮明にします。シンバルの鮮度が高く、切れ味良く、鳴り響きます。美しい響きです。
今年、創業55周年を迎えたECMレーベルから、トルド・グスタフセン・トリオの「OPENING」(96kHz/24bit)をQobuzで再生しました。これも、ダイナミックレンジと解像度が高く、驚くほどの音質の良さが体験できました。
LUMIN P1 miniは、これからのハイレゾ・プレイバックを魅力的に再生してくれることでしょう。ハイエンド・オーディオとしての位置付けを適正価格で実現していることも大きな魅力です。とりわけ、光ファイバーを使用するSFPポートの音では、ネットワーク環境のノイズを排除し、さらなる高音質が体験できました。
本機は、音元出版が主催するアワード「オーディオ銘機賞2025」で、ネットオーディオ大賞も受賞しました。私自身も多くのオーディオ・ファイルに推薦したいモデルです。ぜひ一度、専門店で試聴して頂きたいと思うところです。
(提供:完実電気)