ソフトバンクモバイルが、携帯電話にWi-Fiを搭載したと聞いたとき、「ついにやったか!」と快哉を叫びたい気持ちと、「そんなことして大丈夫なの?」という疑問が相半ばしました。
後者についてはお察しの通り、データ通信のトラフィックが3GからWi-Fiに移行することで、ARPUが減少するのではないかと考えたわけです。Wi-Fiで大容量データ通信の利便性を実感させ、外出先でも使いたいと思わせて、それが結果的に3Gデータ通信の増大につながるという読みで対応させたのなら、かなりリスキーな賭けだけど面白いなあ、と思いました。その後、Wi-Fiの使用はタダじゃなく、データ定額への加入+Wi-Fiサービス加入が必要というカラクリがあることを知り、やや脱力したわけですが…。
どちらにせよ、孫社長の「携帯電話は数年後にはWi-Fi対応が当たり前という時代がやってくる」という言葉には素直に共感します。技術的にWi-Fiを組み込むことは難しいことではないようですし、せっかく家にWi-Fi対応ルーターがあるのに、どうして遅い3Gを使わなければならないの? と考えるユーザーはますます増えていくことでしょう。処理性能が飛躍的に上がっている携帯電話の能力を活かす意味でも、よりハイスピードな回線の必要性は今後高まるばかりです。
Wi-Fiを搭載し、データ定額加入が前提の料金体系を展開している携帯電話では、まっさきにiPhone 3G/3GSが思い浮かびます。私もユーザーの一人ですが、このところ使っている人を見かけることがかなり増えてきました。iPhoneがソフトバンクの収益に相当寄与しているという報道もあり、Wi-Fiの利便性をユーザーに享受させる一方、しっかりとデータ通信料も徴収するシステムは、ビジネスモデル的にもよくできていると感心します。
それにしても最近のソフトバンクモバイルは、打つ手打つ手がことごとくハマっているという印象を受けます。Wi-Fiに関して言うと、「対応できるけどARPUが下がるかもしれないからやめとこう」という他社と、「対応できるのならARPUを高める方向でサービスを考えれば良い」というソフトバンクモバイルでは、発送の根幹がまったく違います。恐らくドコモとKDDIは、対応機器の売れ行きや利用実態を見てから対応を決定していくことになるのでしょうが、追随してサービスを整えたときには、すでにWi-Fi=ソフトバンクというイメージが定着してしまっている危険性もあります。
万年シェア3位で、上位の切り崩しを行う必要があるソフトバンクだからこそ、今回のWi-Fi対応に踏み切れたという側面はあるでしょう。とは言え、サービスの値下げ競争を不毛に繰り返すより、ユーザーの利便性と収益をバランスさせる今回のような仕掛けの方が、より健全であることは確かです。これまで低価格路線でサプライズを提供してきたソフトバンクモバイルですが、今後はこのような取り組みをより強化してほしいものです。
ソフトバンクはAndroid端末の販売計画も明らかにしました。iPhone以外のスマートフォンはドコモが力を入れており、KDDIも近々本格参入するでしょうが、スマートフォンは多機能な分だけ、ユーザーにメリットを訴える販売施策、価格戦略がこれまで以上に重要になってきます。これから3社がどのような戦いを繰り広げていくのか、ますます楽しみになってきました。
(編集部・風間雄介)