IFA2012スペシャルインタビュー
ソニー・ヨーロッパ新社長 玉川勝氏に聞く、4K&テレビ戦略の今後と欧州でのビジネス展開
データに則した販売管理と戦略構築
「データ、事実から戦略を構築する」という手法も玉川氏のビジネスにおける鉄則だ。データの見方、事実の評価の仕方が間違っていると、その後に立てた戦略が全て誤った方向に進んでいくからである。
玉川氏の在任時、ソニー・インディア社で働く契約社員の中には約2,000人の店頭販売員がいた。彼らから日次で送られてくる報告と、インドに300店舗近くあるソニーのブランドショップのPOSデータとをつないで、玉川氏は独自の在庫管理システムを構築した。「どの商品がどれだけ売れたか」を日次で把握・管理し、前月/今月の月末在庫を把握。実売の実態をシビアに管理しながら、将来の需要予測とマーケティング・販売プランを構築してきた。
このような管理システムを活かして数字を徹底管理しながら、一方では各地域の営業セールスマンが自らの足で稼いできたローラーサーベイの情報も最大限に活用してきた。インドの各地域を細分化して、ソニー商品の在庫をPOSデータを元にきめ細かく管理。販売実績に問題が見られる地域では、問題のクラスターとチャンネルを徹底的にあぶり出して、なぜその地域で販売が伸びていないのか、原因を徹底解明。必要に応じて現場にも足を運び、問題を解決していく戦略を採ってきた。「事実がわかれば対処ができる。データの取り方・見方・考え方を確立させて、正しい戦略を立てることが大事」と玉川氏は述べる。
商品を店舗に導入する際には「Selection(品揃え)、Location(展示場所)、Condition(展示方法やスタッフ)」の各要素をべストコンディションに整えながら、顧客に高い商品体験価値を提供してきたことも玉川氏の取り組みだ。
Selection(品揃え)については店舗の規模や来客層に応じて、担当者が適切なモデルを揃え、効率良く販売することを徹底してきた。「とても基本的なことのように聞こえるかもしれないが、これが出来るかどうかは非常に大事なこと」と玉川氏は話す。
その店にどのモデルを置くかが決まったら、次は「どこに置くか=Location(場所)」を決定する。その際に玉川氏は「可能な限り、対抗ブランドの製品の“近く”に置くことが大事」という。ライバルメーカーの商品を隣に並べることで、ソニーの販売員が自社製品正しく比較しながら販売できるようになるからだと自信をみせる。
さらにはデモの展示内容について、正しいディスクや接続ケーブルを使っているか、POPの説明はわかりやすいか、販売員の説明がきちんとできているかなど、顧客に「商品体験価値」を適切な手法で提供するためのCondition(環境)づくりにも玉川氏は細心の注意を払ってきた。