東芝・本村裕史氏インタビュー
4Kテレビの売れ行きは? 東芝に聞く4K REGZAの手応えと今後の戦略
■Zシリーズならではの「タイムシフトマシン」搭載
型番から分かるとおり、今回の4K REGZAは「Zシリーズ」として展開している。本村氏は、レグザのメインモデルであるZシリーズが4Kに対応したことの意義を強調する。歴代のZシリーズは、薄型テレビの技術革新を牽引してきたと東芝が自負するモデルで、開発スタッフにとっても思い入れやこだわりが強い。
「Zシリーズは、画質や機能、使い勝手をとことん調べ抜いてからご購入されるお客様が多いのが特徴です。このようなお客様に納得してもらい、購入後も満足して使っていただけるシリーズでありたいと開発を行ってきました」。
今回のZ8Xシリーズには、4Kに対応したこと以外にもZシリーズならではのこだわりが随所に盛り込まれている。その最たる例が「タイムシフトマシン」機能だ。東芝が2009年に発売した“CELL REGZA”「55X1」以来、注力し続けてきた録画機能「タイムシフトマシン」がZ8Xシリーズにも搭載されている。
Zシリーズにタイムシフトマシンが搭載されたのは2011年発売の「ZG2」シリーズからだが、当時は「地上デジタル放送全6チャンネルを何十時間キャッシュできる」というメッセージに対し、一般層からの反応はそれほど大きくなかったという。「録画しても見る時間がない、マニアックな機能はいらないという声もあり、不要な機能と受け止められてしまうこともありました」(本村氏)。
東芝は続く2012年発売のZ7シリーズにもタイムシフトマシンを搭載したが、そこでタイムシフトマシン機能の魅力を、それまでと少し違う視点からアピールした。
「6チャンネルを何十時間キャッシュできますよ、というのは手段の話であって、タイムシフトマシンの最大の魅力は、“家に帰って好きなときに、見たいテレビ番組が最初から見られる”という便利さです。お客様へ、そのような“できること”を紹介するように努めました」。
Z7シリーズの発売までに、タイムシフトマシンを体験したユーザーからの声も集まっていた。それらの「使用実感」なども紹介しながら、タイムシフトマシンの活用方法を丁寧に説明していった。本村氏はまた「お使いいただいた方からのネットや口コミを通じた発信によって、“タイムシフトマシンはすごい”という声が徐々に広がっていきました」と振り返る。
タイムシフトマシンを使いこなしているユーザーからは、帰宅後にテレビのチャンネルを切り換え、面白そうな番組を見つけたら「最初から見られる」ことがとても快適、という声も多かったという。
そのほかにもタイムシフトマシンによって、これまでできなかったことができるようになるケースは数多い。たとえば昨日見逃した番組が、職場や学校などで話題になっていたら、帰ってからすぐにチェックできる。帰りが遅くなりテレビをつけても見たい番組がない、といった時にも、過去番組からゴールデンタイムの番組が見られる。あるいは朝の連続ドラマ「あまちゃん」1週間分を、一気に見ることができる。放送スケジュールに縛られないテレビライフが実現するのだ。
さらにZ7シリーズから採用された「ざんまいプレイ」があれば、録画番組の中から面白そうな番組をテレビが“オススメ”してくれる。思いもよらなかった、面白い番組に出会える機会が増えるはずだ。同じくZ7シリーズから採用された、レグザクラウドサービス「Time On」に搭載されている「みどころシーン再生」機能があれば、録画番組の内容をシーン単位でキーワード検索できるほか、「好きなアーティスト」や「インターネットでの検索急上昇のキーワード」に関連する番組を、手早く探してすぐに見られるようになる。
このようなタイムシフトマシン機能の価値が浸透し、ユーザーからの評判が高まったことで、「Z8Xシリーズの商品企画が立ち上がった際、タイムシフトマシンを採用することは満場一致で決定しました」と本村氏は語る。
「4Kテレビを次世代のものとしてアピールするなら、機能を高画質化に特化したり、高級感にこだわるなど、尖った仕様にすることも考えられますが、レグザは4Kを大画面テレビのスタンダードにしていくことがコンセプトです。だから最高のテレビライフを味わうためなら、4K高画質もタイムシフトマシンも、どちらも必須だと考えました」。