【開発者インタビュー】オーディオテクニカ「ATH-MSR7」に込められた思いを訊く
■高音質再生を追求して辿り着いた最良のデザイン
本体のデザインも「高音質再生」を軸に磨き上げている。そのコンセプトを奈良氏は次のように説明する。
「どちらかと言えば奇をてらわずに、トラディショナルなデザインを心がけてきました。その理由はやはり、ユーザーの方々に長く使っていただけるデザインが一番良いと考えているからです。さらに”いい音”を生むための理にかなったデザインであれば、流行に左右されることもありません。“デザインのためのデザイン”ではなく、『デュアルレイヤー・エアコントロールテクノロジー』をはじめ、高音質化を優先した結果として辿り着いた技術から反映された形が、ATH-MSR7のデザインに帰着しているのです。
低域のエッセンスを漏らさないよう、イヤーパッドの密着感にこだわりました。もちろんポータブルで長時間いい音を楽しんでもらえるよう、クッションの柔らかさや質感にも気を配っています」
奈良氏の語るとおり、装着してみるとイヤーパッドの外装の質感も高く、肌触りがとても心地良い。
もちろん純粋な意味でのデザインにおいても細部にまでこだわりが尽くされている。ヘッドホンを手にしたときに感じられる質感を高めることにも気を配ったと奈良氏は語る。
「ヒンジのスイーベル機構の動きにも少しカッチリとした手応えを付けています。一つ一つの細かい部分を、試聴されるお客様に気に入って頂けるように丹念につくり込みました」
鮮やかなレッドの限定カラーモデル「ATH-MSR7LTD」も同時に発売された。本機はアルミのハウジングにアルマイト処理を施してからダイヤカットを行い、そこへさらに金色を乗せるダブルアルマイト処理が特徴だ。赤色も二度の塗装を施して、より深みのある立体的な色合いに仕上げている。
ケーブルは本体着脱式で交換ができる仕様になっている。本体には1.2mのポータブルリスニング用ケーブルと、同じ長さのリモコン付ケーブル、さらに3.0mのホームリスニング用ケーブルが付いてくる。
「リスニングシーンごとに最適なケーブルを交換しながら音楽を聴いて欲しいと考えました」という奈良氏。3.5mmのミニプラグとしたのは、ケーブルが断線した際にバックアップが容易にできることも考慮してのことだという。
■アンプがなくても十分に鳴らせるヘッドホン
「ATH-MSR7」の開発がスタートしてから、通常より多くの音響エンジニアが音づくりに関わり、完成までには国内・海外の多くのスタッフから寄せられた声も反映されているという。まさにオーディテクニカの総力を結集したプロジェクトを取りまとめてきた、奈良氏の苦労は並大抵ではなかったはずだ。完成したATH-MSR7のサウンドに奈良氏は胸を張る。
「純粋にいい音を聴きたい、知りたい、出会いたいと願う全ての方々に聴いてもらいたいヘッドホンです。店頭などでぜひ触れてみながら、音質とデザイン、トータルの出来の良さを確かめて欲しいと思います」
本機の使いこなしについて、奈良氏からアドバイスもいただいた。
「いまはスマートフォンをメインに音楽を聴く方も多いと思いますが、本機でドライバーの駆動力を強化してレスポンスを高めた理由のひとつとして、ヘッドホンアンプを介さずにスマートフォンとヘッドホンの組み合わせだけで、十分にいい音が楽しめるようにしたいという思いもありました。アンプを使わないと鳴らせないヘッドホンがあると言われますが、ATH-MSR7はどんなプレーヤーが相手であってもきちんとした音で鳴らせる能率の良さが自慢のヘッドホンです。もちろんアンプを使ったらその分だけリスニング体験も向上します。ぜひ挑戦してみてください」
ハイレゾからCDリッピングの音源まで、普段着で楽しむあらゆるポータブルサウンドを心地よい体験に高めてくれるオーディオテクニカ渾身のヘッドホン「ATH-MSR7」は、これからまた何年かの後にブランドのクロノロジーを振り返った時、そこにしっかりと名を刻んでいるモデルになるだろう。