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登場から1年あまり、その魅力を改めて検証

【特別鼎談】PC-Triple C開発陣×貝山知弘 - 「ペンクラブ音楽賞」受賞や開発秘話を語る

公開日 2015/06/02 10:00 構成:編集部 小澤貴信
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貝山 PC-Triple Cで用いられた鍛造という技術は、そもそも一般的に用いられるものなのでしょうか。

芥田 鍛造は一般的な技術です。叩いて、つぶして、素材を変形させていきます。しかし鍛造をもってして結晶を長手方向に伸ばしていく、というアイデアはこれまでなかったものですね。

やはりPC-OCCの開発にも携わっていた芥田氏。PC-Triple Cにおいては鍛造という手法を用いることで、PC-Triple Cで「結晶の連結」を実現させ、PC-OCCに劣らない導電率を可能とした

貝山 以前のインタビューで、鍋を叩いているのを見てヒントを得たという話をされていました。

芥田 鍋を叩くことも、本質的に鍛造と変わりありませんからね。ただ、鍋を鍛造するのはある形を作るためですが、我々の目的は結晶を伸ばしていくことです。ですから優れた職人が叩き方を素材や目的に応じてその都度変化させるように、結晶を長手方向に伸ばす目的で叩き方を工夫していったのです。

貝山 長手方向に伸ばすというアイデアもPC-Triple Cから始まったことなのでしょうか。

芥田 そうですね。ただ、その発想のベースにあったのはPC-OCCです。我々として何ができるのかを考えたとき、素材の純度を上げるとか、原子レベルで結晶構造を変えていくとかいろいろな方法論がありました。一方でPC-OCCは完全無欠の導体というわけではありませんでしたが、非常に合理的な導体でしたし、長年のファンも大勢いらっしゃいました。PC-Triple C開発にあたっても、いきなりPC-OCCから離れるのではなく、それに近づけつつ、PC-OCC自体の問題も解決しようと考えたのです。そしてたどり着いたのが、「単結晶」ではなくて「結晶の連結」という発想です。オーディオ的な判断は矢口社長にまかせて、私はただただ金属の構造を最適に変えていくことに集中しました。

矢口 ちなみに定角連続移送鍛造法による処理を行った後のPC-Triple Cは、さらにケーブル細線への伸線加工されます。そして使用される導体の太さにより、それぞれ特定の温度並びに時間管理によりアニール処理を行います。ここで先ほどの説明の通り、銅の結晶粒は結晶粒同士が融着し連続した結晶へとさらに変化します。結果、伸線時に発生した結晶格子欠陥の転移が解消され、導電率も向上するのです。

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