「AK4490」搭載機が人気に
AKMのオーディオマイスターに聞く、最新DACに搭載「VELVET SOUND」の特徴
■「風のような低音を出したい」
AKMのDAC開発にあたっては、オーディオマイスターの佐藤氏が様々な試作品を相対評価し、開発にフィードバック。製品ごとの、音のコンセプトを決めている。また同氏は、後進の育成という観点から、オーディオエキスパートを育てる役割も担っているという。
佐藤氏に、今回のVELVET SOUNDで目指したのはどういう音か、単刀直入に聞いてみた。帰ってきた答えは、「情報量」と「力強さ」。「これまでAKMのデバイスは、どちらかといえば繊細さとかクリアさが評価されてきましたが、新世代のデバイスでは力強さを表現したい、と。『風のような低音、究極的には感じる低音』を出したいんですよ」と語ってくれた。
「たとえば花火大会に行ったとき、音は体で感じますよね。そういったものを実感できるようにするのが理想です」。
では、その「力強さ」や「風のような低音」を実現するために、どのような工夫を施したのか。佐藤氏は「低音をしっかり出すには、電源環境を整えるのがいちばん効く」と説明する。
「電源ピンを可能な限り分けていくんですね。たとえば2ch DACのフラグシップモデルであるAK4490では、AVDDを分けたりとか、ジッター低減のためにクロック用にも電源を持たせたりなど、6個くらいの電源を持たせています。これにより共通インピーダンスを無くしたり、デジタル部のアナログ部への干渉を抑えたりなど、様々なメリットが出てきます」。
VELVET SOUNDのコアテクノロジーはこれだけではない。佐藤氏は「率直に申し上げますと、以前のAKM製チップは、歪み特性の数値がTIさんやシーラス・ロジックさんに比べてあまり良くなく、これが弱点でした。今回の製品では、『ローディストーションテクノロジー』によって10dB程度改善し、-120dB程度まで抑えることができました」。
音質を高めるための、もう一つのキーテクノロジーが「OSRD」だ。OSRDはOver Sampling Ratio Doublerの略称で、オーバーサンプリングすることで、DAC内部のΔΣモジュレーターが出すノイズを抑えるという技術だ。