ソニー・ヨーロッパはどう変わったのか
TV売上が3年で3倍に。ソニー・ヨーロッパ玉川社長に聞く、ソニーが欧州で好調な理由
プロモーターのスタッフを置いている店舗であれば、プロモーターがデモンストレーションを正しい方法でできているかなどについても、様々なチェック項目を設けて評価してきた。これらの活動をプロジェクトとして推進したことにより、2012年から2014年までの間に、ヨーロッパにおけるテレビ商品の売上が約3倍に増えたという。
今後テレビについてヨーロッパでも4Kプレミアムモデルに注力していく方針だ。
「ワールドカップ以降は市場がシュリンクしているが、40インチ以上のクラスは継続して伸びている。特に大型モデルは4Kが大きな比率を占め、22〜23%もある。まだ伸ばせる余地があるポテンシャルセグメントだ。ここに薄型モデルのX90Cを投入したが、今後は4Kテレビのモデル数をさらに拡大しながらシェアを拡大を目指す」と玉川氏はコメントしている。またブラビアのブランド認知を広めるための広告展開にも力を注ぐ考えだ。
■写真文化の濃厚なヨーロッパでのカメラ戦略
次にデジタルイメージング、つまりカメラの商品分野で玉川氏が取り組んだ欧州改革の中身について触れていこう。
ヨーロッパ全体としてはテレビと同じ、あるいはそれ以上にシュリンクが激しいといわれているカメラ市場は、今回のラウンドテーブルの会場で紹介された調査データによれば他社も含めた全体の市場で毎年15〜20%の後退という状態。だが、レンズ交換式、固定式ともに苦しいそんな状況の中で、ソニーは堅調にシェアを伸ばしてきた。その成果が得るために実行した“3つの改革”について、玉川氏はこう説明する。
「一つには写真文化の濃厚なヨーロッパで、ソニーとして色々なフォトアワードをスポンサーしながら、文化発展にコミットメントしてきた。もう一つは、ドイツには約2,000店舗の豊富な品揃えと高い商品知識を持つスタッフが常駐するカメラ専門店があり、この販路を積極的に開拓してプレミアムセグメントで伸ばしてきたこと。そしてもう一つはイメージセンサーの圧倒的に高い技術力をアピールするため、商品ラインナップを分厚く設けて差異化を図った。前モデルをディスコン(販売終了)にせず、例えばサイバーショットのプレミアムモデルであるDSC-RX100は最新のMk4まで、旧モデルを含む層の厚さを見せることでシリーズ展開を強く打ち出した」(玉川氏)
その結果として、ミラーレス一眼カメラは2013年の25%から2014年には31%までシェアを伸ばしている。平均単価も上昇したが、この点について玉川氏はフラグシップ“α7”の効果が大きいとした。また足腰を支えている立役者としてα6000の名も挙げた。「ドイツにおけるバリューシェアはトータルのカメラビジネスの中でほぼ2位を捉えて、いま単独2位になれるところまできている」と玉川氏は意気込む。
コンパクトデジタルカメラについてはRX100シリーズがヨーロッパでも新たなプレミアム・コンパクト市場を創造した。いうまでもなくソニーがその中で圧倒的なナンバーワンシェアを持っており、金額ベースでNo1シェアを堅持している。玉川氏は「新しいフォト体験をコンシューマーに体験してもらえるラインアップを揃えた」と胸を張った。
■平井CEOとは異なる“玉川流 WOW”
ヨーロッパのソニーグループで働く社員のモチベーションを向上させるための仕掛けについても、随所に“玉川流”と呼べるノウハウが詰まっている。玉川氏は自ら、そのエッセンスを「WOW」という言葉に言い換えながらモットーとして掲げている。
「WOW」という言葉を聞けば、ソニーの平井社長がよくスピーチの中で口にする、あのセリフを思い出す方も多いかもしれない。平井氏の場合、ソニーの商品を手にした人々が、好奇心を刺激されて思わず口を突く驚きの言葉を“WOW”として表現し、これをソニーのものづくりのコンセプトである“感動”に結びつけるキーワードとして使っている。