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<CES>テクニクス小川氏に聞く「SL-1200G」開発秘話 − OBと共同開発、秘伝の技術継承

公開日 2016/01/09 08:00 インタビュー:風間雄介 構成:小澤貴信
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SL-1200Gで目指したのは「ダイレクトドライブの再定義」

ーー 従来のSL-1200を継承するというコンセプトは当初からあったのでしょうか。

小川氏 はい。ただ、SL-1200も元々Hi-Fiオーディオ用として開発されたものの、最後はDJがメインでしたので、Hi-Fiオーディオとしての新生テクニクスとどう擦り合わせていくのかという問題もありました。DJということになると商流も楽器ルートになります。コンセプトから開発基盤まで複雑に絡み合った数々の問題をどう解決すればいいのか、実際に製品の目処がつくまでにかなりの時間を要しました。

パナソニックのブースにもTechnicsコーナーが設けられ、SL-1200Gが出展された

その中でメンバー全員で最終的にたどり着いたコンセプトが、「ダイレクトドライブの再定義」でした。これは新しいテクニクスのターンテーブルとして価値があるものだと思いました。そこから一気に「SL-1200G」の開発が動き出したのです。私たちの強みを現在の技術でどのように磨き上げ、そして過去の製品どれだけ超越できるのか、技術者にとっても挑戦が始まったわけです。

ーー 過去の銘機を超えるという使命のもと、開発陣の方は奮闘されたわけですね。

井谷氏 そうですね。本当に様々な苦労がありました(笑)。

ーー 「再定義」という言葉はSL-1200Gのリリースにおいても使われていました。この「再定義」の意味合いについて詳しく教えていただけないでしょうか。

小川氏 テクニクスはダイレクトドライブ方式のターンテーブルを世界で初めて開発しました。それはものすごい技術革新だったのですが、技術者集団としての新生テクニクスにとって、何を達成すればこの過去の金字塔を超えることができるのか……それを知る上で「再定義」が必要でした。

小川氏は「ダイレクトドライブの再定義」こそがSL-1200Gのコンセプトだと説明する

ですので、ダイレクトドライブ方式と、その心臓部であるモーターに改めて着目したのです。超えられない高い頂きに見えるけれども、ここにもまだ何か課題があるはずで、先輩方にもできなかったことが今の技術ならばできるかもしれないと考えました。

テクニクスOBの協力で実現した“匠の技”の投入と継承

小川氏 モーターについては、テクニクスのダイレクトドライブモーターを発明した生みの親と言うべき方が、九州にいらっしゃいます。当時は研究所に勤めていて、特許を取得された方です。この方に大阪までいらしていただいて、指導していただきました。

井谷氏 本当に熱いご指導をいただきましたね。まさにパッションです。

ーー OBの方々も強い情熱を持ってSL-1200Gの開発に参加されたと。

小川氏 まずは“スピリット”から入りました。どのようにターンテーブルを開発するのかではなく、「今なぜターンテーブルをやるのか」というところから始めるのが大事だと繰り返し説かれました。OBの方々からは、自分がどんなスピリットでこれをやってきたのかという歴史から教わりました。若い技術者も含めて、それを知らなければ高みには到達できません。こうしてフィロソフィーを共有したのです。

ーー 技術者の方々もOBのみなさんに薫陶を受け、根底から意識を共有していったのですね。

小川氏 キーマンとなるOBの方がもうひとりいらっしゃいます。元々はプレーヤー工場のOBだった方です。御年90歳なのですが、現在は会社を興して社長をされています。この方の工場でトーンアームは製造しました。

井谷氏は、SL-1200Gを開発する上でターンテーブル開発における“匠の技”をテクニクスOBから学ぶことができたのが大きかったと説明する

井谷氏 まさに下町ロケットの世界です。こちらの会社にテクニクスのOBもたくさん在籍していらして、規模は小さいものの、非常に高い技術を持っています。そこに我々や、SL-1200Gを製造する宇都宮工場のメンバーがお邪魔して、一緒に開発を行ったのです。

ものづくりには勘所があります。我々はターンテーブル開発の経験がなかったので、この勘所をご指導いただける方がいらっしゃらなかったら、SL-1200Gは実現できなかったでしょう。OBのみなさんが持っている技術は、まさに“匠の技”です。

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