「Ultmate Ears 11 Pro」導入の背景とこだわりを訊く
実はオーディオマニアなメタルギタリスト・若井望が語るUltimate Ears カスタムIEMの魅力
− モニターより音量を抑えても大丈夫なのでライヴ後の疲れが少ないという話もよく聞きます。
若井 もう圧倒的に違いますね。耳がキーンとしないし。特にロックの場合はドラムも大音量なので難聴のドラマーの方も多いと聞きます。そういう大音量と何十年も付き合わないといけないわけです。体の負担を考えても、こういう装備は大切なんじゃないかなと思いますね。
− 毎回同じモニター環境を手軽に持ち運べる、というのもメリットですよね。
若井 ツアー先でミックスのデータを受けたりするときも、ちょっとしたプレーヤーとポータブルヘッドホンアンプがあれば、それなりにちゃんと音を確認できますしね。
ビクターのレコーディングスタジオにあるのと同じウッドコーンスピーカーを自宅にも導入しているのですが、以前は、海外レコーディングのときに日本の環境と同じものをということで、わざわざそのスピーカーなどをスーツケースに入れて持って行きましたから。海外だから電源変換のトランスなども一緒に持って行ったのですが、これがまた重いんです(笑)。着替えの服も入らなくなっちゃうし(笑)。
− かなり筋金入りのヘッドホン好きということは、リケーブルなども視野に入ってくるのでは?
若井 もちろん狙ってます(笑)。ただ、音のバランスが変わってしまうので、将来的な検討事項ですかね。
− カスタムIEM導入前と導入後で、作品の作り方は変わりましたか?
若井 以前よりも繊細な作業がしやすくなったというか、自分の判断基準により従順になれるような感覚はありますね。70Hz〜100Hzの低域でのバスドラムのせめぎあいをもう少し綺麗に分離させたり、ボーカルとギターの定位をもっと近づけるのか、あるいは離すのかなど、繊細なコントロールがやりやすくなるのかなと思います。
− カスタムIEMにはかなり満足している様子ですね。
若井 ミュージシャンにとっては選択肢が増えるのは大歓迎です。いろんな人に使ってもらいたいし、聴いてもらいたいなと思いますね。高い印象があるかもしれないけど、安いものを20個買うよりは確実に安いですから。
− 昔から比べれば価格も下がってきているからか、一般ユーザーでもカスタムIEMを作る人が増えてますよね。
安いモデルだから悪いというのは全然なくて、それぞれに個性があるので、自分に合うかどうかだと思うんです。逆に言うと、モニターとして性能がいいということは、粗が見えるということでもあるので、そこまでレベルの高い分離の良さを常に求める必要があるのかとも考えられるわけです。カスタムIEMに限らず、自分が聴きたい音楽、バランス、スタイルに合うものを探すところから始めてもらえればと思いますね。
− 本日はありがとうございました!
【若井望 プロフィール】
洗足学園大学音楽科ジャズ・コース在学中、小野正利のライヴにおいてローディを務めていた際にスカウトされプロ活動を開始。2014年度には「BURRN!」誌 最優秀新人賞を受賞した。
森川之雄(ANTHEM)率いるTHE POWERNUDEへの参加などを経て、五十嵐充(元Every Little Thing)とRUSHMOREを結成。アニメ「シュタインズ・ゲート」のエンディングテーマ等を手掛けるゴシック・メタル・バンド、PHANTASMへの参加経験なども。
浜田麻里へ楽曲提供しサポートギタリストも務めるほか、自身のプロジェクト「Nozomu Wakai's Destinia」を結成。インペリテリのロブ・ロックらをゲストに迎えた1stライヴの模様を収録したBD/DVD「A Live for a Scream 〜One Night Only Requiem〜」などが発売中。