【特別企画】CLASS-Sにファン待望の新WOODイヤホン現る
JVCのハイレゾイヤホン「WOOD inner」開発者を直撃! 新モデルの音質特徴と開発秘話を訊く
土方:木の振動板は特性的にオーディオに向いているのですね。
北岩:そして今回のモデルでは振動板に使用する木素材を軽くする事が出来ました。例えばスピーカーのウッドコーンに使用している振動板は厚みが200ミクロン以上あります。それに対して、より軽量化が必要なイヤホンのHA-FX850などに使われていた振動板は80ミクロン。これでも十分薄いのですが、今回は表現力を上げるために、さらなる軽量化を狙い50ミクロンの薄さを達成しました。
土方:実際に80ミクロンと50ミクロンを触り比べてみると後者の方がかなり薄いですね。木でここまで薄い素材に仕上げることが出来ることに驚きますが、成型は難しくはないのですか?
北岩:成型については2007年の第1世代モデル開発時に確立しています。それよりも50ミクロンのシートを作ることが大変だったのです。80ミクロンの時は職人に依頼してハンドメイドで作成していたのですが、それ以上薄く出来ないと言われてしまいました。
そこで、自社でスライスマシンを開発、50ミクロンのシート作成が可能になりました。切削は国内にある自社工場で行い、WOOD 01 innerには口径11mm、WOOD 02 innerとWOOD 03 innerは口径10mmの振動板として使用しています。またキーとなるパーツの生産や組み立ても日本国内で行っています。
土方:ユニットについても教えてください。
北岩:磁気回路はダイナミック型です。新たに搭載されたハイエネジー磁気回路により駆動力とリアリティを改善しました。
■細部にまで様々な音質的こだわりを投入
北岩:またユニットフォルダーと言われるパーツがあります。これはドライバーから発せられた音を集中させて耳に届ける役割を担っている重要な部品ですが、そこに小さい突起を設ける「アコースティックピュリファイアー」構造を採用しています。
土方:この小さい突起はそんなに効果があるものなんですか?
北岩:はい、かなり効果があります。数と大きさ、配置の仕方によって音調や音の広がりが変わります。開発時は3Dプリンターでかなりの試作品を制作、カットアンドトライで開発を行いました。突起の大きさは3モデルそれぞれに最適な配置を施してあります。
またウッドスタビライザーと言われる部品を配置して背圧を適度に逃しています。実はこのパーツは第3世代までは金属製だったのですが、今回、より良い音を目指して国内で精密加工された木を使用しました。
さらに、異種材料を組み合わせて共振を防止するメタルハーモナイザーを搭載しています。例えばWOOD 01 innerではステンレスと真鍮、ウッドを使用していますが、各モデルごとに材料を組み変えることで高域から低域まで特性の差別化を行っています。
土方:細かいパーツも木で作られているんですね、感心しました。ヘッドホン1つに何ヶ所、木のパーツが使われているのでしょうか?
北岩:振動板とハウジング、磁気回路の周りに使用している吸音材、そしてウッドスタビライザーが木で出来ています。素材については、振動板にはカバ材を、ハウジングとウッドスタビライザーは木材を薄くスライスしたものを一枚一枚垂直の方向に角度を変え張り合わせた上で圧縮した「積層材」を使用しております。
土方:こんなに色々なパーツにウッドが使われているのか…。これは他のイヤホンにない特徴で所有欲が湧きますね。
■装着感や使い勝手にも細やかな配慮
北岩:今回拘った部分の1つに装着感の改善があります。前モデルと着け比べて頂くとすぐ分かると思います。
土方:あ! 今回のWOOD 01 innerは耳の凹みからはみ出さない、バランス良く外れづらいですね。