ハイエンドオーディオDACも展開予定
実は「音質至上主義」。3年かけて“音質設計 ”を開発したロームのこだわりを聞く
■音質設計を施したデバイスと従来のデバイスを比較試聴
新横浜事業所には試聴用のオーディオルームがあり、ここで聴感上の評価が日夜行われている。このオーディオルームで、音質設計を施したサウンドプロセッサー新モデル「BD34602FS-M」と従来製品「BD3461FS」との比較試聴を行うことができた。
イーグルス「ホテル・カリフォルニア」など定番の楽曲で比較したのだが、音質設計を施した新モデルに変えると、音に艶が出て、余韻の深みが感じられるように変化する。ギターの音色もさらに華やかに感じられる。
大げさではなく、音質設計を施したデバイスとそうでないデバイスには、劇的な差がある。サウンドプロセッサーデバイス一つで、ここまで音質が向上するとは驚きだ。最終製品で言うと価格帯が1ケタ上がったような音質向上を実感できた。しかも電気的特性は新製品と従来製品で全く同じというから、さらに驚きだ。
もう一点、この音質設計を施したモデルは、何度も試作を繰り返して生まれたわけではなく、一回で完成したのだという。「音質が変化するパラメーターを特定できたことで、試作を繰り返す必要がなくなり、狙った音を狙ったように出すことが可能になりました」(佐藤氏)。
■今後登場予定のハイエンドDACの開発目標とは?
ここまでの音質差を確認すると、俄然気になってくるのは今後のラインナップだ。
先日のセミナーで同社は、ハイエンドオーディオDACを作ることを表明した。まだリリース時期については未定とのことだが、まず狙っているスペックについて聞いてみると、「今から出すからには、スペック上は最高のものを作ります」と力強い答えが返ってきた。22.4MHz DSDや、768kHzのPCMなどにも対応すると考えて良いだろう。
だが本稿で何度も繰り返している通り、ロームが重視しているのは音質だ。
「現状では、低音の表現とボーカルの表現を両立できているDACは存在しないと、我々は認識しています。我々の開発目標は、力強い低音と伸びやかなボーカルを両立したDACを作ることです」(坂本氏)。
なおロームは、モバイル機器向けのオーディオDACを作る予定は今のところないという。その理由がふるっている。「モバイル向けデバイスはサイズなどの制約がつきまとい、音質を極める方向ではないから」というのだ。
ロームは「実は音にこだわっている」どころではなく、「音質至上主義」という表現が適当ではないか。取材後、そのような感想を持った。劇的な音質向上を実現した「音質対策」デバイスが今後増えていくだろうが、その成果が今から待ち遠しい。