<山本敦のAV進化論 第140回>
ソニーのレコード生産、復活の裏側。デジタル+匠の技術で「最新のアナログ」
「いまのところは洋楽の輸入盤が割合としては多いですが、ここに来て少しずつ邦楽のロック、アニソンも増えています。アナログレコード世代に人気のアーティストによる、邦楽の復刻盤も人気があります。ヒップホップやダンスミュージックもDJの方々を中心に支持されているので新作も発売されています。今後もニーズのあるものを幅広く捉えてご提供していくつもりです」(古川氏)
アナログレコードの新作には「限定盤」として発売されるタイトルもあるように見られるが、その点も生産体制が整えば、特に限定販売を意識する考えはないと古川氏は述べている。ただ、例外としては今年のはじめに開催された「デヴィッド・ボウイ大回顧展」で限定販売された12インチ盤カラーレコードのように、音楽関連イベントなどでの限定発売については、ファンに喜ばれるものがあれば積極的に検討していく考えだという。
「カッティングからプレスまで安定供給ができる体力が付いたら、ソフトメーカーとしてはある程度の数量もみながらの一般販売をより強化していくべきだと考えています。アナログレコードの製造ラインも1本からのスタートなので、ビジネスを軌道に乗せて、ラインを増設しなければならないほど大きな反響を早く得たいと思っています」(古川氏)
そのためにはアナログレコードを聴いたことがない、あるいは触れたこともないという音楽ファンがその魅力に出会える機会も増やす必要があるだろう。例えばイベントの開催や、レコードプレーヤーなどハード機器と組んだプロモーション展開についての計画を尋ねてみた。
「今は自社生産によって、安定してソフトをリリースできる体制を整えることを優先して注力しています。ただ、周囲を見渡せば、CDショップにはアナログレコードコーナーができたり、アパレル系セレクトショップなど他業種のショップでアナログレコードが取り扱われる機会も増えたりと、お客様とアナログレコードのタッチポイントになる販路は広がっています。ソニーミュージックグループとして、新しいアナログレコードファンを獲得するための仕掛けについては、これから色々と検討していきたいと考えています」(古川氏)
ソニーミュージックグループによるアナログレコードへの取り組みを、ソニーグループ全体として支えていく展開にも期待したいところだ。例えばソニーのアナログレコードプレーヤーの新商品に注目する向きも少なくないはずだ。
現行モデルとして発売されているラインナップはUSBデジタル録音が楽しめるDSD対応の上位機種「PS-HX500」と、弟機の「PS-LX300USB」の2機種のみと、少しさみしい内訳だ。試しに買ってみたアナログレコードを取りあえず聴いてみることができるのであれば、例えばBluetooth機能を内蔵して、ワイヤレススピーカーに接続できるプレーヤーだったり、お手頃な価格でプレーヤーとアンプ、スピーカーのセットが揃えられる入門システムなんかも受けそうだ。もちろんHiFiクラスの上位機種も大歓迎だ。