Bluetoothのフラグシップモデル
オーディオテクニカ「ATH-DSR5BT」開発者に聞く “世界初のフルデジタルワイヤレスイヤホン” 誕生の秘密
國分氏:もしバーチャルコイルテクノロジーを非搭載の場合ですと、駆動力とダイナミックレンジに影響します。音量が取れなくなりますし、音の粒立ち、立ち上がりや抜け、キレの良さが物足りなく感じられると思います。
小澤氏:ちなみに「1962」という数字はオーディオテクニカの創業年から取られています。
― バーチャルで多芯コイルをやろうという発想は、どこから来たのでしょうか?
小澤氏:もともと4芯ボイスコイルを前提にしていたATH-DSR9BTのチップで、出力設定の変更を行うことで、1芯でもできるじゃないかという事が分かったのがきっかけです。
高石氏:小型のインナーイヤー型に4芯ボイスコイルを搭載するのは構造上難しかったので、バーチャルで4芯が実現できないか、という発想に至りました。ただ実際にやろうとすると、ドライバーがヘッドホンタイプより耳に近いため、音量バランスを取るのに苦労しましたし、従来のチップではデジタルノイズが多すぎました。AT1962でそこが改善され、インナーイヤー型として実現できたのです。
― 例えば芯数をさらに増やすといったような、今後の発展についての構想はありますか?
國分氏:構想自体はあります。AT1962を一緒に開発したtrigence semiconductor 社でも芯数ごとの特性を見ていますし、どのように伸ばして行くか考えていると思います。ただ、現状では4芯で十分な性能が得られているかと思います。
■実現できる中で過去最小サイズの「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVER」
― ドライバーは「DUAL PHASE PUSH-PULL D/A DRIVERS」という名称ですね。今回、プッシュプル方式を採用した理由は何でしょうか
國分氏:ATH-DSR5BTはBluetoothインナーイヤータイプのフラグシップという位置づけでして、有線インナーイヤータイプのフラグシップ「Sound Reality」の技術をこちらでも採用するのは自然な事でした。弊社の個性も出しやすいです。