<山本敦のAV進化論 第158回>
いまレコーダーに求められる「+α」とは − パナソニック“ディーガ”の「おうちクラウド」について聞いた
パナソニックが独自に調査を行った結果、国内では情報検索やエンタメ視聴に使うデバイスとして、PCからスマホやタブレットに変えたという「モバイル中心」ユーザーが増えていることがみえてきたという。動画や音楽を楽しむ手段もネットがメインで、ディスクプレーヤーの利用が徐々にではあるが減少しているようだ。この傾向を逆手にとって、「実はレコーダーがあると便利」であることを今だからこそアピールしていくべき、と神高氏は語る。
「調査結果によると、スマホやタブレットが生活の中心というユーザーがネットで視聴している動画は、実は見逃してしまった話題のテレビ番組が多いとのことです。家にレコーダーがあれば、スマホで楽しむエンタメがもっと便利になることを多くの方に知ってもらうため、おうちクラウドディーガは使いやすさにもとことんこだわりました」。
「『スマホで撮影した写真や動画などデータの保存先をどうすればいいのか』という声は、いつも私たち担当者の耳に届いていました。バックアップを取らずに放置していたり、クラウドストレージは知っているものの使い方がイメージできない、不安感もあるという方がまだ大勢いらっしゃいます。ならばご家庭にあるBDレコーダーがフィジカルなストレージ・サーバーとして、便利に、かつ安心して使えたら皆様の役に立てると考え、おうちクラウド機能を持つラインナップを強化しました」。
新しいおうちクラウドディーガの6モデルは、音楽CD取り込み機能も搭載している。大井氏によると、ディーガに保存した音楽ファイルを最大192kHz/24bitのハイレゾ相当の音質で楽しめる「ハイレゾリマスター」と、ハイレゾ対応スピーカーを搭載するパナソニックのビエラ「EX850」シリーズを組み合わせて音楽を聴いたり、その他のオーディオに接続して「リビングルームを中心」にディーガで音楽を楽しむユーザーも少なくないという。以前本連載でも試したことのある、e-onkyo musicからのハイレゾ音源の自動ダウンロードとハイレゾ再生機能も、ディーガの特徴的な機能としてここで触れておきたい(連載の過去記事)。
■複雑な設定は不要。おうちクラウドはとっても簡単
おうちクラウドは、「クラウド」という名前が付いているので、スマホとレコーダーをつなぐために複雑なネットワーク設置が必要なのでは、と思う方もいるかもしれない。だが、実際のセットアップは拍子抜けするほど簡単だ。
まずはこれまでのディーガと同じように、レコーダーに電源ケーブルとアンテナケーブルをつないで、無線または有線でホームネットワークに接続できる環境を用意する。初期設定から受信チャンネルを行い、「かんたんネットワーク設定」を使ってホームネットワークにディーガを参加させる。あとはCLUB Panasonicで機器登録を済ませておこう。
「どこでもディーガ」アプリはストアからスマホにダウンロードしておく。ディーガのネットワーク設定が済んでいれば、同じ宅内の無線LANルーターにスマホを接続した状態でアプリの画面に表示される手順どおりに設定を進め、CLUB Panasonicへのログイン、つなげるディーガの登録を行えばいい。設定方法の詳細についてはディーガのホームページにも記載されている。
アプリとディーガをひも付けておけば、おうちクラウド機能による写真や動画の送信もまた実に簡単だ。SNSにアップするのと同じ要領で、どこでもディーガアプリでスマホで撮った写真・動画の中からディーガに送りたいものを選択。送信データの点数と容量を確認してから「OK」をタップする。写真や動画は宅外・宅内のどちらからでも送ることができるが、ファイルはそのままのサイズで送信されるので、Wi-Fiを使っていない場合はデータ通信量に気をつけよう。
ディーガに保存されているアルバムを、離れた場所からスマホで閲覧したり、ディーガからスマホに持ち出してから楽しむことも可能だ。さらに自宅以外のディーガにも写真や動画が送れる。
離れた場所に暮らす高齢の両親に孫の元気な様子を写真や動画に撮って見せてあげたい。でも両親がディーガを使いこなせるとは思えず、ハードルは高そうに感じるという方もいるだろう。確かに両親宅に無線ルーターを置き、ディーガのネットワーク設定を済ませてもらう段階をどう乗り越えるかという課題はある。だがそこさえクリアできてしまえば、ディーガのおうちクラウド機能によるシェア機能の設定自体はとてもシンプルだ。
設定のキモは「両親が、写真を送ってほしい相手にメールや電話でペアリングコードを教える」というものになる。両親が使っているディーガのホームメニューから「写真/動画一覧」画面を表示。左側に表示されるメニューリストから「+[スマホを登録する]」を選択して、登録開始画面を表示してから「はじめる」を選択すると、24時間有効な9ケタの登録番号が表示されるので、これを遠方に暮らす家族に何らかの手段で伝える。
スマホからファイルを送る側は、どこでもディーガアプリのフッターメニューから「設定」を選んだ後、「登録番号を使ってディーガを登録する」ボタンをタップ。画面の指示に従って登録番号と名前を入力する。ここまでの手順が完了すると、両親が使っているディーガに「承認要求」が表示されるので、30日以内に承認を実施すると、家族がアプリから両親のおうちクラウドディーガにファイルを送れるようになる。
使って慣れてくると、クラウドストレージに対するおうちクラウドディーガの手軽さが実感できるようになるだろう。そうするとレコーダーのストレージ容量も気になってくる。今春に発売された2018年モデルのおうちクラウドディーガは、最大容量の全録モデル「DMR-UBX7050」ですら内蔵HDDは7TB。キャッシュ録画に使う領域も含まれていることを考えると、必ずしも「ずっと使っていても安心」と言えるサイズではない。パナソニックでは「バックアップやディーガを買い換えた場合のデータ移動にも便利なSeeQVault規格に対応するUSB-HDDの併用」を推奨している。
おうちクラウドディーガは、スマホで撮影した動画・写真を、家族が集うリビングの大画面テレビで一緒に見るような使い方を想定している。たとえば父親がスマホで撮影した仕事のファイルを、ディーガの中にカギ付きのプライベートフォルダを作り、パスワードで保護するといったプライバシー機能は用意されていない。もし今後、家族の手軽なホームサーバーとしてディーガの魅力を訴求していくのであれば「応用」的な細かい設定にも対応したい。またスマホで撮影したファイルを一気にディーガにバックアップする際、差分をチェックして追加保存ができる機能も欲しくなる。