【特別企画】全国の販売店で実施される試聴イベント
「ハーマンサウンドキャラバン」が創るオーディオの未来。ユーザー・店舗・メーカーをつなぐ画期的な試みの背景
数々の名オーディオブランドを有するハーマンインターナショナル。そんな同社が新しい取り組みをスタートさせた。全国のオーディオ専門店へ製品を持ち込んで実施する新たなスタイルの試聴会「サウンドキャラバン」だ。
年中様々な試聴会やイベントが開かれている中、なぜこのキャラバンは企画されたのか。そしてキャラバンが今後目指すものとは ーー 。キーパーソンであるハーマンインターナショナルのコンシューマーオーディオ事業部 事業部長の御子柴正武氏、藤田裕人氏に伺った。
■よりユーザーと触れあえるイベントを
「我々の取り組みは、『お客様のために何ができるか』を考えることからスタートしています」。開口一番、御子柴氏はそう前置いた。「マーケットとお客様のための活動が、結果として業界の活性化につながる。それを念頭においています」と語る口調はあくまで明快。今回のインタビューで語られたことは、すべてこの理念が通奏低音としてある。
とはいえ、オーディオイベントはすでにたくさん存在する。キャラバンを始めた意図はどこにあるのだろう。そう尋ねると御子柴氏は、これまでも様々な試聴の場を設けていた、とうなずく。「OTOTENや大阪ハイエンドオーディオショウ、オーディオフェスタ・イン・ナゴヤなど、毎年オーディオイベントが開催されており、我々も出展しています。また全国各地の販売店様が主催する試聴会にも積極的に参加し、お客様にご体験いただいています」。
だが、それだけでは不十分と同社は考えた。「スペースや時間の問題などもあり、我々の製品やブランドの魅力を伝えきれていないのでは、と常日頃から感じていました。首都圏のイベントに足を運ぶことが難しいという方も多くいらっしゃいます。それならばいっそ、我々が全国に出向き、より多くのお客様に思う存分ブランドや製品の魅力を体験いただくことはできないか、と今回のキャラバンを企画しました」。
藤田氏が言葉を引き取る。「我々は各製品についてご説明したいですし、ブランドについても深く知っていただきたい。そして大前提として、お客様は良い音をじっくり聴きたい。そうなると、既存のイベントではどうしても時間が足りません。それらをクリアするには、自分たちで催すしかないと考えました」と語る。そしてこの企画に、全国の販売店が賛同し、実施の運びとなったという。
大型イベントでは多くのブランドの製品に触れることができる一方、1つのブランドの製品をじっくりと聴きこむのは難しい。また人が多いため、気後れして話しかけにくい、ということもあるだろう。一方でメーカー側も、より多くのユーザーとコミュニケーションを取りたいと望んでいる。
さらに「製品をどこで買うのか」ということを考えたとき、やはり地元販売店の存在感は大きい。本キャラバンではユーザーだけでなく、販売店とも密にコミュニケーションを取れる。
キャラバンでは、例えば製品やブランド説明も交えた2時間の試聴会を実施する場合、その前後はフリータイムとなり、来場者が聴きたい音源を、聴きたいシステムで楽しめる。常に同社の担当者が会場にいるため、製品についてもブランドについても、カタログだけでは伝わらないことを、時間をかけて知ることができる。じっくりとユーザーとコミュニケーションを取れるのがこのキャラバンの大きな特徴であると、御子柴氏と藤田氏は口を揃える。
■オーディオ業界において、いまメーカーが求められていること
このキャラバンの取り組みは、試聴イベントとして有用なだけでなく、オーディオ業界にとっても重要な役割を持っている。御子柴氏は次のように語る。
「私は常々、メーカーの責任とは、新しい製品を企画・開発して発売していくことだけでなく、マーケットを創造していくことだと考えています。特にハイエンドオーディオにおいては、お客様の輪を膨らませていくことも必要です。ストリーミングやレコード、Bluetoothやハイレゾなど、音楽の楽しみ方が広がっている現在、色々な対応製品が登場しマーケットが拡大しています。それだけに、各メーカーの発売する製品はスペック競争に留まらず、『その製品でどのように音楽を楽しんでいただくか』、つまりお客様の “気づき” まで踏み込んだ提案が求められます」。
これは現場に立ち、“生の声” を耳にする機会が多い藤田氏も実感しているという。また、最もエンドユーザーと近い存在である販売店からのフィードバックも今後のキャラバンに反映させ、さらに進化させていく考えだ。
年中様々な試聴会やイベントが開かれている中、なぜこのキャラバンは企画されたのか。そしてキャラバンが今後目指すものとは ーー 。キーパーソンであるハーマンインターナショナルのコンシューマーオーディオ事業部 事業部長の御子柴正武氏、藤田裕人氏に伺った。
■よりユーザーと触れあえるイベントを
「我々の取り組みは、『お客様のために何ができるか』を考えることからスタートしています」。開口一番、御子柴氏はそう前置いた。「マーケットとお客様のための活動が、結果として業界の活性化につながる。それを念頭においています」と語る口調はあくまで明快。今回のインタビューで語られたことは、すべてこの理念が通奏低音としてある。
とはいえ、オーディオイベントはすでにたくさん存在する。キャラバンを始めた意図はどこにあるのだろう。そう尋ねると御子柴氏は、これまでも様々な試聴の場を設けていた、とうなずく。「OTOTENや大阪ハイエンドオーディオショウ、オーディオフェスタ・イン・ナゴヤなど、毎年オーディオイベントが開催されており、我々も出展しています。また全国各地の販売店様が主催する試聴会にも積極的に参加し、お客様にご体験いただいています」。
だが、それだけでは不十分と同社は考えた。「スペースや時間の問題などもあり、我々の製品やブランドの魅力を伝えきれていないのでは、と常日頃から感じていました。首都圏のイベントに足を運ぶことが難しいという方も多くいらっしゃいます。それならばいっそ、我々が全国に出向き、より多くのお客様に思う存分ブランドや製品の魅力を体験いただくことはできないか、と今回のキャラバンを企画しました」。
藤田氏が言葉を引き取る。「我々は各製品についてご説明したいですし、ブランドについても深く知っていただきたい。そして大前提として、お客様は良い音をじっくり聴きたい。そうなると、既存のイベントではどうしても時間が足りません。それらをクリアするには、自分たちで催すしかないと考えました」と語る。そしてこの企画に、全国の販売店が賛同し、実施の運びとなったという。
大型イベントでは多くのブランドの製品に触れることができる一方、1つのブランドの製品をじっくりと聴きこむのは難しい。また人が多いため、気後れして話しかけにくい、ということもあるだろう。一方でメーカー側も、より多くのユーザーとコミュニケーションを取りたいと望んでいる。
さらに「製品をどこで買うのか」ということを考えたとき、やはり地元販売店の存在感は大きい。本キャラバンではユーザーだけでなく、販売店とも密にコミュニケーションを取れる。
キャラバンでは、例えば製品やブランド説明も交えた2時間の試聴会を実施する場合、その前後はフリータイムとなり、来場者が聴きたい音源を、聴きたいシステムで楽しめる。常に同社の担当者が会場にいるため、製品についてもブランドについても、カタログだけでは伝わらないことを、時間をかけて知ることができる。じっくりとユーザーとコミュニケーションを取れるのがこのキャラバンの大きな特徴であると、御子柴氏と藤田氏は口を揃える。
■オーディオ業界において、いまメーカーが求められていること
このキャラバンの取り組みは、試聴イベントとして有用なだけでなく、オーディオ業界にとっても重要な役割を持っている。御子柴氏は次のように語る。
「私は常々、メーカーの責任とは、新しい製品を企画・開発して発売していくことだけでなく、マーケットを創造していくことだと考えています。特にハイエンドオーディオにおいては、お客様の輪を膨らませていくことも必要です。ストリーミングやレコード、Bluetoothやハイレゾなど、音楽の楽しみ方が広がっている現在、色々な対応製品が登場しマーケットが拡大しています。それだけに、各メーカーの発売する製品はスペック競争に留まらず、『その製品でどのように音楽を楽しんでいただくか』、つまりお客様の “気づき” まで踏み込んだ提案が求められます」。
これは現場に立ち、“生の声” を耳にする機会が多い藤田氏も実感しているという。また、最もエンドユーザーと近い存在である販売店からのフィードバックも今後のキャラバンに反映させ、さらに進化させていく考えだ。
次ページハーマンの試みは試聴会に留まらない。メーカーの垣根も越える