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時流に合った「スマートネス」を見つける

<IFA>ソニーが目指す方向性のヒントは“初代ウォークマン”、キーマンに訊いた「変わるべきところ・変わらないもの」

公開日 2018/09/01 10:53 山本 敦
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「振り返れば2000年代に入ってすぐに、アップルがポータブルオーディオプレーヤーのiPodを発売した時点でオーディオ市場にも “ポータブル化” という大きな変化の波が押し寄せてきました。そして今ではAI(人工知能)にディープラーニング、音声インターフェースなどのテクノロジーを得意とするグーグルやアマゾンなどのIT企業がオーディオに革命を起こそうとしています。ハードウェアではスマホと同じように、オーディオも中国系のEMS(製造受託事業者)が力をつけてきて、質の高い製品を自社ブランドから出せるまでに成長しています」(黒住氏)。

こうした流れに「新たなライバルに囲まれる状況の中で、ソニーはこれまで強みとしてきたことを伸ばしながら、同時にこれからの競争を勝ち抜くための戦略を見直し、お客様に商品の価値を訴求するためのコミュニケーション手段についてもより洗練させるべきタイミングが訪れていると感じています」と推進すべき対応が語られた。

黒住氏はオーディオの専門性に敬意を表しつつ、変わらないままでいるべき部分と、これから変わらなければならない部分を精査しながら「軸足を置くべき所」を見定めることを自らの使命として位置付けている。

ソニーにとって、これからも変わることのない普遍的な価値観とはすなわち、クオリティ志向であったり、丁寧なものづくりを極める姿勢にほかならないだろう。「サウンドのチューニングに対して、あるいはプロダクトデザインの細やかなところにも一切手を抜かずに、開発者たちが真摯な姿勢で取り組んできたオーディオ製品の代表格がSignature Seriesであり、その思想がすべてのプロダクトに貫かれている」と黒住氏が強調している。そして、いまソニーのオーディオ製品を開発する人々たちの視野がさらに豊かさを増しつつあるのだという。

「私が現職に就く以前から、オーディオの開発現場ではユーザーの皆様からいただく声に対して真摯に耳を傾けながら、製品やサービスに磨きをかけてきました。いまその視野は、音楽の作り手であるクリエーターの視点や感性を取り込む方向にまで広がりつつあります」(黒住氏)。

黒住氏はソニーのオーディオ製品が目指す究極の価値は、作品という媒介を通して、クリエーターと音楽ファンであるユーザーの感性を直に結びつけることであるとしながら、オーディオはその一助として寄り添う存在でありたいと持論を説いている。

近年はハイレゾリューションオーディオというテクノロジーが台頭してきたことで、クリエーターとユーザーがよりシビアに「音楽のクオリティ」に目を向けながら対峙できる環境が整った。クリエーターが創作活動の延長線上にあるものとして、オーディオにもますます強い関心を持つようになることも当たり前と言える出来事なのかもしれない。

「クリエーターが作品を通してどのようなことを音楽ファンに伝えたいと思っているのか。オーディオの作り手である私たちメーカーがそれを正しく理解して、忠実に再現できるようになるためには、クリエーターと感性を共有しながら一緒に音を作っていくことが必要になります。もちろんそれはソニーがこれまでにも力を入れてきたことですが、これからそれをさらに体系立てて取り組める体制が整いつつあります」(黒住氏)。

プレスカンファレンスでは音楽のクリエーターとユーザー、双方の結びつきを強くしていくための製品やサービスを充実させていく戦略も発表された。代表的なモデルが “ステージモニター” 「IER-M9」だ

グループ内にソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)という音楽のクリエイション部門があるということが、ソニーの大きな強みとなっている。「私も米フロリダ州にあるSony Music Latinのワークショップに参加して、現地のチームと一緒に音楽制作の専門家やミュージシャンとの共同作業によるものづくりの可能性を様々な側面から探ってきました。日ごろから点ではなく面としてシームレスな姿勢で音楽活動に携わっているクリエーターの方々の感覚に触れられたことは、私にとっても大きな収穫でした」。

「彼らは所属するレーベルや会社の枠組みを超えて、様々なスペシャリストとつながりを持ち、互いに情報交換とサポートを交わしながら熱心に創作活動に打ち込んでいます。これこそが感性に訴えかけられるものづくりの原点になると考えます。音楽を作っている方々の感性をソニーのオーディオ製品に取り込むための強くオープンな骨組みづくりは、これから数年にわたってじっくりと取り組んでいきたいと考えています」(黒住氏)。

ソニーはこれからもお客様に喜んでもらえる「スマートネス」を追求していく

一方で、これからのオーディオが「変わっていくべき部分」について黒住氏はどんな見解を持っているのだろうか。

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