高木氏、粂川氏、黒住氏にインタビュー
<IFA>ソニー幹部が語る、なぜコスト度外視のフラグシップは実現できたのか。8Kや5Gの展開も聞いた
超弩級DAP「DMP-Z1」やフラグシップイヤホン「IER-Z1R」、4Kブラビア“MASTER SERIES”「AF9」「ZF9」と、オーディオ/ビジュアルともに幅広いハイエンド製品をIFA 2018で発表したソニー。
これらオーディオ/ビジュアル製品の戦略、そして「8K」や「5G」といったトレンドについて、専務の高木一郎氏、ソニー・ヨーロッパ社長の粂川滋氏、ソニービデオ&サウンドプロダクツの黒住吉郎氏へ、記者団がグループインタビューを実施した。
今年4月に、平井一夫氏から吉田憲一郎氏に社長が交代したソニー。新体制下で今回のような突き抜けた新製品が誕生した背景には何があったのだろうか?
■コストを1ミリも考えない製品開発にGOサインを出せるように
グループインタビュの冒頭、高木氏は「新たに社長となった吉田の下、ソニーは“人に近づく”という新しい目標を掲げました。この方向性に沿って、社内のアクティビティを動機付けし、一緒に頑張っていきましょう、としたのです」と述べた。
そして、新製品群に自信を見せる一方で「“人に近づく”と言っても、(相手が望んでいないのに)こちらから勝手に近づいていくだけでは意味がありません。興味を持ってもらい、人に近づいてきてもらえるような商品を目指していきます」と語った。記者たちからの質問と高木氏らのコメントを紹介する(以下、敬称略)。
ーー 数年前、今回と同様のインタビューの際に「もっとチャレンジした製品開発を」とお願いしたこともありましたが、今回、新体制下で突き抜けたハイエンド製品が大量に登場したことをうれしく感じています。こうしたハイエンド製品に投資する戦略的理由をお聞かせください。
高木 ソニーは様々な技術や素養を持っていながら、それらをどう組み合わせて活用していくのかを見い出せない時代が長くありました。しかし、ストレージがより安価になったりDSDがより一般化するなど時代も変わる中で、『ソニーのオーディオ』を改めてとブランディングしたいと考えたのです。
何より、“フラグシップ”(となる製品群)をラインナップしたいと以前から考えていました。ただ、それを実現する技術は持っていたのですが、自信を持って「これがソニーの最高峰だ」と言えるものがなかなかできませんでした。試行錯誤するなかで、ソニーのオーディオの最高峰として“Signature”シリーズ”を提案して、ここに1年でひとつでも製品を加えていこうと決めました。それがようやく形になって、今回のような提案ができるようになってきたのです。
ーーなるほど。
高木 もちろん商売も大事ですが、最高の技術を投入した製品を形として持つということが、ブランディングとして非常に大事です。「売れなくてもいいから最高のものを作りたい」というエンジニアがソニーにはたくさんいます。経営陣としては「売れなきゃダメだよ」とは言いますが(笑)。
でも、そういうエンジニアが今回作った2,200ユーロのイヤホン「IER-Z1R」は、特にアジアでは待望されていた製品です。「DMP-Z1」はボリューム部だけでも非常にコストがかかっていて、「そこにそんなにお金をかけるのか」と。でも、コストをかけるととやはりいい音になるのです。そこをくすぐりたい、という思いもありました。DMP-Z1はコストのことを1ミリも考えていない商品ですよ(笑)。
黒住 コストのことで言えば、「最高のものを」と言ってもエンジニアはどこかで絶対にコストを考えてしまうものです。でもそういった場面で、高木や事業部長の松本(義典氏)ら経営陣が「音がよくなるのがわかっているのに、なぜやらないんだ」と現場の背中を押せるようになったのはありますね。
高木 ソニー以外は絶対やらないもの、ソニーじゃないとつくれないものを何年もやり続けて、お客様がソニーさんに近づいてくれるものを作っていきたいですね。
ーー Signatureシリーズで音の次元が上がったと感じています。“ソニーの音”がしっかりと固まってきた印象です。
高木 ソニーの音を作り上げる「サウンドマスター」という称号を持つスタッフを6人アサインしています。そのサウンドマスターがしっかり“ソニーの音”を作り、継承する仕組みを2年ほど前に構築しました。それがきちんと動きはじめた結果、お客様に近づける音になってきたということでしょう。
これらオーディオ/ビジュアル製品の戦略、そして「8K」や「5G」といったトレンドについて、専務の高木一郎氏、ソニー・ヨーロッパ社長の粂川滋氏、ソニービデオ&サウンドプロダクツの黒住吉郎氏へ、記者団がグループインタビューを実施した。
今年4月に、平井一夫氏から吉田憲一郎氏に社長が交代したソニー。新体制下で今回のような突き抜けた新製品が誕生した背景には何があったのだろうか?
■コストを1ミリも考えない製品開発にGOサインを出せるように
グループインタビュの冒頭、高木氏は「新たに社長となった吉田の下、ソニーは“人に近づく”という新しい目標を掲げました。この方向性に沿って、社内のアクティビティを動機付けし、一緒に頑張っていきましょう、としたのです」と述べた。
そして、新製品群に自信を見せる一方で「“人に近づく”と言っても、(相手が望んでいないのに)こちらから勝手に近づいていくだけでは意味がありません。興味を持ってもらい、人に近づいてきてもらえるような商品を目指していきます」と語った。記者たちからの質問と高木氏らのコメントを紹介する(以下、敬称略)。
ーー 数年前、今回と同様のインタビューの際に「もっとチャレンジした製品開発を」とお願いしたこともありましたが、今回、新体制下で突き抜けたハイエンド製品が大量に登場したことをうれしく感じています。こうしたハイエンド製品に投資する戦略的理由をお聞かせください。
高木 ソニーは様々な技術や素養を持っていながら、それらをどう組み合わせて活用していくのかを見い出せない時代が長くありました。しかし、ストレージがより安価になったりDSDがより一般化するなど時代も変わる中で、『ソニーのオーディオ』を改めてとブランディングしたいと考えたのです。
何より、“フラグシップ”(となる製品群)をラインナップしたいと以前から考えていました。ただ、それを実現する技術は持っていたのですが、自信を持って「これがソニーの最高峰だ」と言えるものがなかなかできませんでした。試行錯誤するなかで、ソニーのオーディオの最高峰として“Signature”シリーズ”を提案して、ここに1年でひとつでも製品を加えていこうと決めました。それがようやく形になって、今回のような提案ができるようになってきたのです。
ーーなるほど。
高木 もちろん商売も大事ですが、最高の技術を投入した製品を形として持つということが、ブランディングとして非常に大事です。「売れなくてもいいから最高のものを作りたい」というエンジニアがソニーにはたくさんいます。経営陣としては「売れなきゃダメだよ」とは言いますが(笑)。
でも、そういうエンジニアが今回作った2,200ユーロのイヤホン「IER-Z1R」は、特にアジアでは待望されていた製品です。「DMP-Z1」はボリューム部だけでも非常にコストがかかっていて、「そこにそんなにお金をかけるのか」と。でも、コストをかけるととやはりいい音になるのです。そこをくすぐりたい、という思いもありました。DMP-Z1はコストのことを1ミリも考えていない商品ですよ(笑)。
黒住 コストのことで言えば、「最高のものを」と言ってもエンジニアはどこかで絶対にコストを考えてしまうものです。でもそういった場面で、高木や事業部長の松本(義典氏)ら経営陣が「音がよくなるのがわかっているのに、なぜやらないんだ」と現場の背中を押せるようになったのはありますね。
高木 ソニー以外は絶対やらないもの、ソニーじゃないとつくれないものを何年もやり続けて、お客様がソニーさんに近づいてくれるものを作っていきたいですね。
ーー Signatureシリーズで音の次元が上がったと感じています。“ソニーの音”がしっかりと固まってきた印象です。
高木 ソニーの音を作り上げる「サウンドマスター」という称号を持つスタッフを6人アサインしています。そのサウンドマスターがしっかり“ソニーの音”を作り、継承する仕組みを2年ほど前に構築しました。それがきちんと動きはじめた結果、お客様に近づける音になってきたということでしょう。