高木氏、粂川氏、黒住氏にインタビュー
<IFA>ソニー幹部が語る、なぜコスト度外視のフラグシップは実現できたのか。8Kや5Gの展開も聞いた
黒住 まず、“ソニーの音”を固める前に、アーティストやサウンドエンジニアといった音楽を創る方々がリスナーにどのような音を伝えたいのかを、改めて理解するところから始めました。
ややもすると、メーカーはわがままになってしまい、“メーカーが作りたい音”を押し付けてしまうことがあります。しかし、音楽はリスナーに伝わってこそです。音楽を創る方々が伝えたい音を忠実に伝えられることこそ、我々が目指す“ソニーの音”です。
ーー フラグシップの開発体制が萎んでいたように見えた時期がありました。今回のようなフラグシップを作り込めるようになったのは、何がきっかけになったのでしょうか。
単純に、マネジメントが変わったからです。意思を持って経営をしようという人がいると、そこにしっかりと意思が入ってくる、ということですね。経営の観点から見ると、全体の研究開発費をどの分野のどのような製品に割り振るかというのは非常に重要です。フラグシップの研究開発については、(ソニーの音を世の中に示す)宣伝広告費的な性格も含めて考えながら決めていきます。
■ホームオーディオにも“Signature”を
ーー 世界の各地域別で見ると、中国ではオーディオブランドとしてのソニーの価値は上がっていると思います。ヨーロッパでの状況はいかがでしょうか。
高木 中国は戦略国として取り組んでいます。ヨーロッパでは、ようやく3年くらい前からソニーの製品が販売店店頭にしっかり並び始めたような状況です。例えば、ヘッドホン「WH-1000XM2」はヨーロッパで計画よりも数十パーセントアップで売れています。ヨーロッパもソニーにとって非常に有望な市場となっています。
粂川 ヨーロッパは250ユーロ以上のヘッドホン市場が急拡大しているのですが、そこでシェアを取っていくことに注力しています。結果、直近では台数、金額ともにシェア1位です。店頭で我々の製品がスペースを取れるようになり、高いものをしっかりと売れるような環境が整ってきています。
ーー 以前と比べ、具体的にどれくらい売上は伸びているのでしょうか。
高木 3年前と比べると5倍くらいになっていますね。ただ以前が非常に小さい規模だったとも言えますが・・・。いま、店頭でも他社さんと同等程度にはスペースを割いてもらえるようになっていますが、なぜならソニーの商品は売れるからです。そのような単純な商売の理屈が回りはじめています。
ポータブル以外の、スピーカーシステムなどホームオーディオの今後のビジョンはどうお考えでしょうか。
高木 事業がくすぶっていた一時期、開発体制も萎んでいた時もありました。しかし今は、“仕込み”を始めています。まだ具体的なことは明かせませんが、我々は忘れていませんということはお伝えしたいですね。(オーディオ部門の)事業部長の松本とも「作ろうね」「しっかりやっています」と話しています。
また、スピーカーに限らずその他のホームオーディオも、ソニーとして、“Signature”として、どんな製品が相応しいかを吟味しています。お客様に近づいてきてもらうために、フラグシップとしての“Signature”は非常に重要ですから、その展開の広げ方を考えているところです。
■有機ELテレビ市場の高級価格帯でソニーがトップシェアに
ーー 欧州におけるオーディオ事業は好調とのことですが、テレビ事業の状況はいかがでしょうか。