サウンドマネージャーがその音作りを語る
“上級機超えの進化”の要はカスタムパーツ − デノンHi-Fi入門機「800NE」を音質担当が解き明かす
デノン最新のHi-Fiコンポーネント「800NEシリーズ」は、CDプレーヤーとプリメインアンプ、ネットワークプレーヤーを約6万円〜7万円という価格帯でラインナップ。入門クラスながら、上級機譲りの高音質を実現していることが高く評価されている。PHILE WEBでもこれまで各モデルのレビューをお伝えしてきた。
>>レビュー記事
・デノンの“新世代エントリー”、CDプレーヤー「DCD-800NE」とプリメイン「PMA-800NE」の実力を探る
・デノン「DNP-800NE」レビュー。上位機譲りの音質と快適な操作性を備えたネットワークプレーヤー入門機
今回、デノンの全製品の音質チューニングを担当するサウンドマネージャーを務める山内慎一氏に、800NEシリーズの開発コンセプト、およびデノンのHi-Fiコンポーネントが目指すサウンドについてお話を伺うことができた。
■800NEシリーズのサウンドコンセプトについて
ーー 800NEシリーズの製品発表会における山内さんの言葉でとても印象的だったのは、「800NEの価格帯では上位機と同様の音質傾向を目指すのは難しく、別の方向でまとめる必要があると開発当初は考えていた。しかし開発を進める過程で、上位シリーズと同じ方向性のサウンドが実現できるという手応えを得た」というものでした。800NEシリーズにおいて上位機から継承することができたサウンドとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
山内氏 「2500NE」「1600NE」と続くNEシリーズで目指した音質とは、私にとってのひとつの“ハイエンドサウンド”なのだと考えています。2500NEや1600NEでは狙ったとおりのハイエンドサウンドを実現することができましたが、800NEの価格帯となるとコスト的にも制約が増えます。そのなかでこうしたサウンドが実現できるのだろうか、という懸念は当初ありました。
“ハイエンドサウンド”という言葉には様々な要素が含まれますが、一言で表現するならば「ステレオイメージ」の再現、つまり「サウンドステージ型」であるということです。「空間表現型」と言ってもよいでしょう。私が考えるに、今のオーディオの面白い部分というのはこのサウンドステージの表現なのです。
具体的な要素を挙げるなら、まずスピーカーからの音離れの良さがあります。それからキレやトランジェントという言葉で表される要素、つまり鈍らせたり平均化させたりしないというところです。音離れの良さ、トランジェントによって、スケール感や躍動感が出てきます。
また、スムーズな音という点もNEシリーズを通じて追求してきたことです。そういったところも入れ込みたいなと思っておりました。
結果的にはこうした点が800NEシリーズにも継承できたのですが、特にスムーズな音という点については、上位モデルよりさらに進めることができたかなと考えています。
ーー この価格帯のモデルでそこまで音質を追い込むことには大きな苦労があったと思いますが、特にどのようなポイントに注力されたのでしょうか。
山内氏 私のやり方は全体的にカスタムの音質パーツを多用する傾向がありますが、800NEシリーズでもやはり多用しています。カスタムパーツを使わなければNEシリーズらしいスムーズな音の実現は難しいということは、改めて痛感しました。
800NEシリーズではPMA-800NE用にブロックコンデンサーを新規開発しましたが、それ以外にも、3モデルそれぞれで上級機において開発した専用コンデンサーなど、カスタムパーツを多数採用しています。
また先ほども触れましたが、800NEシリーズのような価格帯では制約も大きいですし、絶対的なポテンシャル、例えばパワー感のようなものには限界があります。その中でNEシリーズのサウンドにまで引き上げるというのは、非常にハードルが高かったです。実際、最終的なサウンドにもっていくまでには試行錯誤の繰り返しがありました。
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今回、デノンの全製品の音質チューニングを担当するサウンドマネージャーを務める山内慎一氏に、800NEシリーズの開発コンセプト、およびデノンのHi-Fiコンポーネントが目指すサウンドについてお話を伺うことができた。
■800NEシリーズのサウンドコンセプトについて
ーー 800NEシリーズの製品発表会における山内さんの言葉でとても印象的だったのは、「800NEの価格帯では上位機と同様の音質傾向を目指すのは難しく、別の方向でまとめる必要があると開発当初は考えていた。しかし開発を進める過程で、上位シリーズと同じ方向性のサウンドが実現できるという手応えを得た」というものでした。800NEシリーズにおいて上位機から継承することができたサウンドとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
山内氏 「2500NE」「1600NE」と続くNEシリーズで目指した音質とは、私にとってのひとつの“ハイエンドサウンド”なのだと考えています。2500NEや1600NEでは狙ったとおりのハイエンドサウンドを実現することができましたが、800NEの価格帯となるとコスト的にも制約が増えます。そのなかでこうしたサウンドが実現できるのだろうか、という懸念は当初ありました。
“ハイエンドサウンド”という言葉には様々な要素が含まれますが、一言で表現するならば「ステレオイメージ」の再現、つまり「サウンドステージ型」であるということです。「空間表現型」と言ってもよいでしょう。私が考えるに、今のオーディオの面白い部分というのはこのサウンドステージの表現なのです。
具体的な要素を挙げるなら、まずスピーカーからの音離れの良さがあります。それからキレやトランジェントという言葉で表される要素、つまり鈍らせたり平均化させたりしないというところです。音離れの良さ、トランジェントによって、スケール感や躍動感が出てきます。
また、スムーズな音という点もNEシリーズを通じて追求してきたことです。そういったところも入れ込みたいなと思っておりました。
結果的にはこうした点が800NEシリーズにも継承できたのですが、特にスムーズな音という点については、上位モデルよりさらに進めることができたかなと考えています。
ーー この価格帯のモデルでそこまで音質を追い込むことには大きな苦労があったと思いますが、特にどのようなポイントに注力されたのでしょうか。
山内氏 私のやり方は全体的にカスタムの音質パーツを多用する傾向がありますが、800NEシリーズでもやはり多用しています。カスタムパーツを使わなければNEシリーズらしいスムーズな音の実現は難しいということは、改めて痛感しました。
800NEシリーズではPMA-800NE用にブロックコンデンサーを新規開発しましたが、それ以外にも、3モデルそれぞれで上級機において開発した専用コンデンサーなど、カスタムパーツを多数採用しています。
また先ほども触れましたが、800NEシリーズのような価格帯では制約も大きいですし、絶対的なポテンシャル、例えばパワー感のようなものには限界があります。その中でNEシリーズのサウンドにまで引き上げるというのは、非常にハードルが高かったです。実際、最終的なサウンドにもっていくまでには試行錯誤の繰り返しがありました。