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D/A変換における独自技術についても解説

マランツのSACDプレーヤー「SA-12」開発陣が語り尽くす、ディスクリートDACの核心<前編>

公開日 2018/11/14 06:30 インタビュー・構成:山之内 正
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ーー 出力部分に並んでいる抵抗の精度やグレードで音は変わるんですか?

河原氏 1bit DACは原理的に抵抗の精度の影響はありませんが、音には影響します。音質だけでなく音のキャラクターも大きく変化しますので、ここは何種類も検討して、メルフ(MELF)と呼ばれる金属皮膜抵抗を採用しました。

ーー 基板の試作はどのぐらい続いたんですか?

河原氏 前任者の時代も含めると1年以上かかっていると思います。

ディスクリートDACとして歪率0.0003%を実現

ーー さきほど名前が挙がったフィンクさんとの役割分担はどんな感じだったのでしょう。DACの前段と後段両方に関わっているんですか?

ライナー・フィンク氏

河原氏 はい、両方です。フィンクが基本的なアルゴリズムを考案し、それを実際に動くように落とし込んでいくのが私の役割でした。ただ、行き詰まることも多々あったので、ドイツから来てもらって一緒に基板作りに取り組んだこともあります。

ーーあらためて振り返ったとき、開発はスムーズに進んだんですか、それとも・・・

河原氏 間違いなく大変な道のりでした。パラメーターが無数にあるので、検討する要素が非常に多くなってしまい、とにかく時間がかかるんです。PLDのプログラムやクロックの吟味はもちろんのこと、抵抗やDフリップフロップなどデバイスの選択といった具合に、確認が必要な要素が非常に多いんですね。とはいっても日程の目標は決まっていたので、間に合わないのではという状況になったこともあります。ディスクリートで組むのを諦めて普通のDACを使う判断もしなければと考えたほどです。

ーー フィンクさんや河原さんを中心にその課題をなんとか解決できたわけですね。

河原氏 最終的には目標を大幅にクリアすることができました。さきほど挙げた歪率については0.0003%まで実現しています。カタログにはうたっていませんが。

デジタルフィルターなどの設定変更で24種類から音質を選択できる

ーー 次に、前段のMMM-Streamについてうかがいます。PCMをDSDに変換する役割を担う部分ですが、SA-10とSA-12はデジタルフィルターの特性など、ユーザーが選べる機能をたくさん盛り込んでいますね?

MMM-Streamingを含むデジタル基板。右がSA-12、左がSA-10のもの

河原氏 新規に盛り込んだ機能としてはたしかにMMM-Streamの方が多いですね。どちらの製品も選べる設定の組み合わせは24種類あります。

ーー それぞれの設定の違いや選び方なども教えてください。

河原氏 基本的にはDSPを使ってPCMをDSDに変換するのですが、その変換は元のPCMに対して1:1で同じDSD信号になるわけではなく、変換の方法は非常に自由度が高いんです。

最初にオーバーサンプリングを行います。具体的には44.1kHzのPCM信号の場合11.2MHzのPCM信号に変換しますが、そこで音質が変わるパラメーターとしてデジタルフィルターの特性があります。

ーー 設定は2種類ありますね?

河原氏 はい。MMM-Streamではフィルター1とフィルター2を選ぶことができ、1はレスポンスが非常に短いフィルター、2はアナログフィルターをシミュレートした特性になっています。

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