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Wink結成30年を経て登場した“オリジナル・マスタリング” UHQ-CD、その制作背景に迫る
それでは具体的に、Winkの今回のオリジナル・リマスターUHQ-CDは、どのようなテーマで作られたのだろうか?
中澤「今回は特に5年前のデジタル・リマスタリングとの比較を小林さんにしていただきながら進めたんです」。
小林「前回は、その名のとおりマスターがデジタル音源でした。それはつまり、「完成している音」なんですよね。だけど今回は元がアナログ。古いデジタルマスター特有の高域で感じる「痛い」音の部分にポイントを絞って、「柔らかく」することをしました。あとは若干の音圧。これはあくまで若干ですけど、音圧を自然に聴こえる範囲で調整しています」。
中澤「当時の音源というのはもう30年前なので、いま改めて聴くと当然聴感上の音量も低いし、音圧もちょっと低い。そして小林さんがおっしゃったみたいに高域が少し痛い。楽曲がユーロビートということもあったんですけど、そのあたりも小林さんとの会話のなかで「30年後に新しい音源としてリマスターを出すのであれば、聴きやすいユーロビートの音源が良いよね」ということで、出すぎているところは少し抑えてという方針で進めています。ただ、特に中低域は僕からのリクエストで強めにしていただきました。もともとが古いんで、中低域が弱いんですよ。最初はものすごく苦戦していたんですけど(笑)」
小林「今回、コンプなどの一連処理を全部行っているんですよ、基本はですけどね。でも実は、一度デジタル化した音源だと、細かい音という面では古いエフェクターというのはあんまり反応が良くないというのが私の考えです。音をいじっても反応が鈍いんですよね。ですので、送り出しに使うDAW側でもエフェクトをかけているんです。僕は音処理としてノイズ処理をお願いされることも多いんですよ。クラシックの時なんかは「この音を消して」とか、そういう注文も多い(笑)。でも、今回のWinkに関しては、ノイズ処理は基本的にやっていません。「基本的には」というのは、オリジナルのCDを聴いて比較しながら、オリジナルであったものに関してはそのまま残す。『ある音はいじらない』方針でいきました。あくまで質的な面、例えば足りないところとか出すぎたところをどう補うか、ということを重視してマスタリングしたんです」。