ネット接続なしでワンタッチ翻訳が可能
Snapdragon搭載のオフライン型・翻訳デバイス。ログバー「ili」の詳細を開発者に聞いた
製品の構想は2015年頃にスタート、それから約1年半後には製品化を実現している。初期モデルは2017年6月からを先行販売するとともに、空港にてレンタルも実施。現在販売されている最新モデルでは内部構成を大きく進化させ、チップセットにクアルコムの“Snapdragon”を採用、一般向けに不具合修正やバッテリー改善などを図っている。
使い方はとてもシンプルで、手に持ってメインボタンを押しながら日本語で話しかけることで、英語/中国語/韓国語の中から選択した言語で翻訳され、音声が流れるという流れ。翻訳される言語は側面にあるボタンで切り替えることが可能だ。吉田氏は、「iliの一番の特徴は、インターネットに接続せず、オフラインで使えること」と語る。
製品開発段階では、Google翻訳などを利用したオンライン対応も考えていたというが、吉田氏自身が実際に海外で使ってみた際、現地でインターネットに接続できなかったり、まだまだ環境が完全でない国も多く、オンライン翻訳はまだ現実的ではないと感じたという。そこでiliでは、本体内部に辞書機能を内蔵し、ネット環境下でなくても素早い翻訳を可能にしている。
「機能としてはもちろんオンライン翻訳も使えますし、採用することも可能でした。ただ、コミュニケーションで使用するにはスピードも大事だと思っています。iliは海外旅行で使うことを想定し、そういったユーザーをメインターゲットに考えていたので、オフラインで素早く翻訳できることが重要だと考えました」(吉田氏)。
内蔵する翻訳システムは、情報通信分野を専門とする公的研究機関「国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)」により開発された、オンラインベースの辞書エンジンを基に、上述のとおりオフライン使用できるよう調整を施して採用した。最新モデルではさらなる翻訳精度の向上を図り、NICTと共同開発したものを搭載しているとのこと。なお、翻訳システムのアップデートには、本体をPCとUSB接続して、インターネットを通して行うかたちとなる。
さらに翻訳にかかるスピードも最速0.2秒と非常に速い。すぐに翻訳されるスピード感と英語/中国語/韓国語の3言語対応、そして小型サイズで軽量というポータビリティの高さなども製品の魅力と説明する。実際の質量は卵一つ分程度で、首から下げて持ち運んだりするにも苦にならない軽さである。
iliの人気の高さについて、吉田氏は「使い勝手のシンプルさが、市場に受け入れられた最大の理由だと実感している」と語る。製品購入者の多くは40代 - 70代で、あまりガジェットに慣れていない人も多く、“ボタンを押して喋るだけ”という操作性が受けているのだという。
日本では昨年3月から一般発売されているが、2017年12月に先行して2018台限定でオーダー受付を実施した際には1時間で完売したという。法人向けにも製品提供を行っており、インバウンド向けに利用されることが多いとのこと。現在空港での貸し出しのほか、郵便局で使用されており、都心部を中心に全国48局で販売も行われている。製品体験も可能で、外国人対応や地方活性化などにも活用が進んでいる。
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