開発者に聞く連続企画 後編
レコードの「生々しさ」をデジタルで再現、ソニーDMP-Z1「バイナルプロセッサー」を深く知る
DMP-Z1では「各種音質設定」のメニューから同機能を呼び出す。スタンダード、アームレゾナンス、ターンテーブル、サーフェイスノイズの4つの項目があり、それぞれにオン・オフが選べるが、スタンダードは他の3つの設定をすべてオンにした状態と同じだ。
Aシリーズなどではこの項目だけのオン・オフができる簡易型を載せているのに対し、Z1は3つを個別に選べるため、アームの共振による低域成分はオンにし、盤の振動効果はオフにするといった使い方もできる。
■レコード特有の生々しさをデジタル音源でも再現
実際にオン・オフの効果を試してみた。さきほど紹介した音源のなかで一番大きな変化が現れたのはスティーリー・ダンの曲で、バイナルプロセッサーをオンにするとヴォーカルとギターの実在感が上がり、旋律やリズムのなかでも特に重要な部分をクローズアップするような効果が聴き取れる。さらにサウンド全体の鮮度が上がる効果も感じられたが、それはオーケストラや合唱などアコースティックな音源でも聴き取ることができた。
振動板をあらかじめ小さく振動させておくことで、立ち上がりの速い音を引き出すという手法がバイナルプロセッサーの核心となる部分だ。レコードの音には特有の生々しさがあると感じている音楽ファンはいまもたくさんいるが、その理由の一端が明らかになり、デジタル音源の再生でも効果を発揮するという事実は実に興味深い。スピーカー再生でも同様な効果が聴き取れるはずなので、機会があればそちらも試してみたい。
(山之内 正)