高接続安定性と高音質を実現するオーディオ専用端子
オーディオテクニカが開発した「A2DC端子」はリケーブルの課題をいかに解決したのか? キーマンに聞いた
■A2DC端子を採用したリケーブル「HDCシリーズ」
オーディオテクニカは、A2DC端子を採用したリケーブル「HDCシリーズ」を2016年から発売。イヤホンやヘッドホンのタイプ別に、φ3.5mm端子モデルからφ2.5mm/φ4.4mmバランス端子モデルまで豊富なラインナップを取りそろえている。
「A2DC端子によるケーブル着脱に対応したヘッドホンにおいても、当然ながら付属ケーブルで音質的に十分楽しんでいただけるように設計してあります。しかし、一方ではユーザーのみなさんがリケーブルを楽しむことが広まり、さらに音質の優れたケーブルに対する要望もいただくようになったことで、A2DC端子を採用したリケーブルも手がけるようになりました」(京谷氏)。
オーディオテクニカのケーブルは、同社のヘッドホンやイヤホンがもともと持っている能力をいかに引き出すか、というスタンスで開発されている。そのため、音のキャラクターを積極的に変化させるようなラインナップは考えていないという。
HDCシリーズのケーブルはいずれもメイン導体として6NのOFCを採用し、ノイズ低減の効果もあるツイスト構造を採用している。ただし、対応するヘッドホンやイヤホンのちがいに応じて、その性能を最大限引き出せるようにケーブルごとに独自のチューニングも行っている。
■広く使われる規格としてオープンにしていきたい
話をA2DC端子に戻ると、独自端子の開発にはやはり様々な試行錯誤があったという。設計から材料まで様々な形状や種類を試したと田久保氏は語る。
「A2DC端子の試作段階では、材料の選定の問題でバネの戻りが強くなりすぎ、取れなくなってしまうといったこともありました(笑)。形状についても、例えばネジ式のプラグというのも試作したのですが、端子が小さすぎて取り外しがやりにくかった。このように、様々な試作を繰り返しながらA2DC端子の仕様に至りました」(田久保氏)。
MMCX端子の課題を踏まえて開発されたA2DC端子だが、イヤホン本体への採用例は現時点でオーディオテクニカ製品に限られている。しかし、同社としてはA2DC端子はオープンな規格として、その優位性や魅力をより多くの方に知ってもらいたいと考えているという。ケーブルに関しては、A2DC端子を採用したサードパーティーによるケーブルも見られるようになってきた。
京谷氏は「A2DC端子について興味を持っているメーカーに対しては、ご相談があれば対応できるようにしていきたいと考えています」と話す。特にケーブルについては、A2DC端子を使いたいというメーカーからの問い合わせも過去にいただいているという。
イヤホン/ヘッドホンを手がける老舗にして大手であるオーディオテクニカが開発したA2DC端子。オーディオ専用として設計されていることから、イヤホンで求められる耐久性、接続安定性、そして音質のいずれにおいても優れた長所を持っている。そのポテンシャルが同社製品だけにとどまらず、他社にも広がっていくことに期待したい。