高接続安定性と高音質を実現するオーディオ専用端子
オーディオテクニカが開発した「A2DC端子」はリケーブルの課題をいかに解決したのか? キーマンに聞いた
オーディオテクニカがイヤホンやヘッドホンのリケーブルのために開発したA2DC端子は、既存の端子の課題を踏まえてオーディオ専用として設計されたことが特徴だ。同社はなぜA2DC端子を開発するに至ったのか。また、A2DC端子はMMCX端子など既存の端子に比べてどの点が優れているのか。今回、A2DC端子の開発に携わった同社の京谷崇央氏、田久保陽介氏にお話を伺うことができた。
■ケーブル着脱対応イヤホンとリケーブルの普及
ケーブル着脱式のイヤホンは今やごく一般的なものとなり、リケーブルを楽しむ文化も大きく広がった。その中で、イヤホンとケーブルを接続するコネクター(端子)で最も採用例の多い規格のひとつが「MMCX(Micro Miniature Coaxial Connector)」だろう。しかし、MMCX端子も万能ではなく様々な問題を抱えていることは、ケーブル着脱対応のイヤホンが登場した頃から知られているところだ。
オーディオテクニカも当初はMMCX端子を採用していたが、2015年に発売した「ATH-CKS1100」から、オーディオ専用に自社開発した独自端子「A2DC(Audio Designed Detachable Coaxial)」を採用。以降のケーブル着脱式のイヤホンでは一貫してA2DC端子を用いている。また、A2DC対応のリケーブルも同社で手がけており、最近ではサードパーティーからもA2DC対応のリケーブルが登場してきている。
■MMCX端子の懸念点とは?
イヤホン市場で一般化しているMMCX端子だが、そもそもはオーディオ用の端子ではなく、無線機器などの接続に用いられていた規格だ。これを断線などのトラブル対策としてシュアなどが採用したことからイヤホンでも普及し、サードパーティーが手がけるMMCX対応リケーブルも増えていった。
ただ、普及するにつれて問題点も洗い出されてきた。よく知られているのは、接合した時ゆるすぎて外れやすい、あるいは逆にきつく嵌りすぎて取り外せなくなるケースがあること。また、接合部が回転する仕様のため、端子が動いた拍子にノイズや音切れが起こる、ケーブルがヨレやすい、などという問題も生じた。
田久保氏は「MMCX端子を採用していた当初の懸念点として、その構造上、端子を動かしたときにオス側とメス側が完全に接しない箇所が存在しているということです。これが音切れやノイズの原因になるのです」と説明する。
「接しない箇所はごく小さなものなので、リスニング中に端子が動いてしまっても、一瞬なのでたいていは気づかないというレベルではあります。しかし、ノイズや音切れの可能性は極力排除しておきたいと考えています」(田久保氏)
また、同じMMCX端子同士がうまく接合しないという問題も、その構造に起因する。MMCX端子は公差(規格上許容される寸法の誤差)の範囲であっても、その値が大きいと構造上うまく接合ができないのだという。また、接合したとしても、公差が大きいと前述の“接しない箇所が存在する”問題がよりシビアになり、接続安定性の確保が難しくなってしまう。
そもそもオーディオ用端子ではないのだからMMCX端子に責任は無いが、リスナーとしては大問題だ。田久保氏はMMCX端子が普及し始めた当初から「オーディオ用として最適な仕様を備えたイヤホン端子を開発したい」と考えていたという。
■いかにしてA2DC端子開発に至ったのか
オーディオテクニカ初のケーブル着脱式イヤホンは、2011年に登場した「ATH-CK100PRO」だ。本機はBAドライバーを3基搭載した当時のハイエンドモデルで、やはりMMCX端子を搭載していた。
ただ、この時点で同社の開発陣はMMCX端子の懸念点を認識していたこともあり、ATH-CK100PROでは本体サイズを可能な限り小さくして装着感を向上させるため、より端子が小さいオス側をイヤホン本体に、より端子が大きいメス側をケーブルにという、一般的な組み合わせとは逆の仕様を採った。従って、ケーブル側がオス端子のサードパーティー製汎用リケーブルは利用できなかった。製品の完成度を高めなければならないメーカーの立場からすれば、確実な接続が保証できないものを排除するという判断も、妥当なものと言えるだろう。
2013年に登場したイヤホン「IMシリーズ」では、MMCX端子ではなく、独自仕様の2pin端子を採用した。この2pin端子は接続安定性などでは優れていたものの、脱着のしやすさなどの機能面でまだまだ問題があったという。さらに、将来的にヘッドホンへの展開も見据えた結果、オーディオテクニカは独自端子の開発へ舵を切ることとなった。
■ケーブル着脱対応イヤホンとリケーブルの普及
ケーブル着脱式のイヤホンは今やごく一般的なものとなり、リケーブルを楽しむ文化も大きく広がった。その中で、イヤホンとケーブルを接続するコネクター(端子)で最も採用例の多い規格のひとつが「MMCX(Micro Miniature Coaxial Connector)」だろう。しかし、MMCX端子も万能ではなく様々な問題を抱えていることは、ケーブル着脱対応のイヤホンが登場した頃から知られているところだ。
オーディオテクニカも当初はMMCX端子を採用していたが、2015年に発売した「ATH-CKS1100」から、オーディオ専用に自社開発した独自端子「A2DC(Audio Designed Detachable Coaxial)」を採用。以降のケーブル着脱式のイヤホンでは一貫してA2DC端子を用いている。また、A2DC対応のリケーブルも同社で手がけており、最近ではサードパーティーからもA2DC対応のリケーブルが登場してきている。
■MMCX端子の懸念点とは?
イヤホン市場で一般化しているMMCX端子だが、そもそもはオーディオ用の端子ではなく、無線機器などの接続に用いられていた規格だ。これを断線などのトラブル対策としてシュアなどが採用したことからイヤホンでも普及し、サードパーティーが手がけるMMCX対応リケーブルも増えていった。
ただ、普及するにつれて問題点も洗い出されてきた。よく知られているのは、接合した時ゆるすぎて外れやすい、あるいは逆にきつく嵌りすぎて取り外せなくなるケースがあること。また、接合部が回転する仕様のため、端子が動いた拍子にノイズや音切れが起こる、ケーブルがヨレやすい、などという問題も生じた。
田久保氏は「MMCX端子を採用していた当初の懸念点として、その構造上、端子を動かしたときにオス側とメス側が完全に接しない箇所が存在しているということです。これが音切れやノイズの原因になるのです」と説明する。
「接しない箇所はごく小さなものなので、リスニング中に端子が動いてしまっても、一瞬なのでたいていは気づかないというレベルではあります。しかし、ノイズや音切れの可能性は極力排除しておきたいと考えています」(田久保氏)
また、同じMMCX端子同士がうまく接合しないという問題も、その構造に起因する。MMCX端子は公差(規格上許容される寸法の誤差)の範囲であっても、その値が大きいと構造上うまく接合ができないのだという。また、接合したとしても、公差が大きいと前述の“接しない箇所が存在する”問題がよりシビアになり、接続安定性の確保が難しくなってしまう。
そもそもオーディオ用端子ではないのだからMMCX端子に責任は無いが、リスナーとしては大問題だ。田久保氏はMMCX端子が普及し始めた当初から「オーディオ用として最適な仕様を備えたイヤホン端子を開発したい」と考えていたという。
■いかにしてA2DC端子開発に至ったのか
オーディオテクニカ初のケーブル着脱式イヤホンは、2011年に登場した「ATH-CK100PRO」だ。本機はBAドライバーを3基搭載した当時のハイエンドモデルで、やはりMMCX端子を搭載していた。
ただ、この時点で同社の開発陣はMMCX端子の懸念点を認識していたこともあり、ATH-CK100PROでは本体サイズを可能な限り小さくして装着感を向上させるため、より端子が小さいオス側をイヤホン本体に、より端子が大きいメス側をケーブルにという、一般的な組み合わせとは逆の仕様を採った。従って、ケーブル側がオス端子のサードパーティー製汎用リケーブルは利用できなかった。製品の完成度を高めなければならないメーカーの立場からすれば、確実な接続が保証できないものを排除するという判断も、妥当なものと言えるだろう。
2013年に登場したイヤホン「IMシリーズ」では、MMCX端子ではなく、独自仕様の2pin端子を採用した。この2pin端子は接続安定性などでは優れていたものの、脱着のしやすさなどの機能面でまだまだ問題があったという。さらに、将来的にヘッドホンへの展開も見据えた結果、オーディオテクニカは独自端子の開発へ舵を切ることとなった。