今後のロードマップにも言及
ウルトラゾーンCEOが語る、静電型ドライバー搭載「SAPHIRE」は“真にプレミアムなイヤホン”を目指した
■GTCドライバー採用の密閉型ヘッドホン「Edition 15 Veritas」
Editionシリーズの新しい密閉型ヘッドホン「Edition 15 Veritas」についても、ウィルバーグ氏のコメントをうかがえた。ベースとなっている開放型ヘッドホンの「Edition 15」のコンセプトや特徴については、2017年のウルトラゾーン訪問レポートの際に詳しく聞いているので合わせて読んでみてほしい。
本機が誕生した背景には「Edition 15から採用した“GTCドライバー”のサウンドがとても高く評価され、同じ音をアウトドアリスニングで楽しめる密閉型ヘッドホンを求めるファンの強い声に後押しされたことがあったと」ウィルバーグ氏が述べている。
結果として、現在のウルトラゾーンが理想とするサウンドを開放型と密閉型、両方のヘッドホンで実現できたことはウィルバーグ氏をはじめ、ウルトラゾーンのチームにとって大きな経験になったという。そしてこれほど短期間に密閉型のバリエーションが展開できた最大の理由は、チューニングの面でも柔軟性と適応力の高いGTCドライバーがあったからこそだという。
Edition 15を発表した時にも、ウィルバーグ氏は「ウルトラゾーンは決してトレンドを追いかけて開放型のプレミアムヘッドホンを発売したわけではないのだ」ということを強調していた。「最高のコンセプトと技術を手にした時に初めて、ウルトラゾーンから誕生すべき製品が見えてくる」のだとウィルバーグ氏はビジョンを説く。彼のコメントは自由奔放に聞こえるかもしれないが、その真意は「ウルトラゾーンを愛してくれるファンの手に中途半端な製品を届けて、失望させることは絶対に避けたい」からなのだというから納得だ。
今回のインタビューでは、近い将来にウルトラゾーンからいま注目されている完全ワイヤレスイヤホンやノイズキャンセリングヘッドホンが登場する可能性についてもウィルバーグ氏に聞いてみた。ウルトラゾーンではいま、どちらのカテゴリーもまだ技術的に発展途上にあり、体験も成熟しきっていないとみているようだ。それぞれが満足できるレベルに到達したとウィルバーグ氏らが判断しない限り、実現する見込みは低そうだ。
ただウィルバーグ氏と話し込むうちに、代わりにバランス接続によるヘッドホンリスニングについては、今後4.4mm/5極のペンタコン端子を採用する据え置き型ヘッドホンアンプとの連携など、色々なアイデアがターゲットに入っているように感じられた。「日本をはじめ、世界中のオーディオファイルからいただく声に耳を傾けながら、これからもウルトラゾーンは大きく成長していきたい」とウィルバーグ氏は語っている。ユーザーのためにウルトラゾーンがあるべき姿を真摯に模索し続けるウィルバーグ氏の姿勢は、筆者が今から約10年前に初めてお会いした頃から少しも変わっていなかった。ふたつの新製品の成功を心から期待したいと思う。
(山本 敦)