<山本敦のAV進化論 第176回>
「AQUOS R3」は“シャープらしい”着眼点で使いやすさ追求。開発者に聞く多機能のポイント
■HDR画質にも自信あり
Pro IGZOディスプレイは画面のリフレッシュレートが120Hz駆動になった。関氏によれば、一般的にスマホの画面が大きくなるほどリフレッシュレートを高めることが難しくなるのだという。約6.0インチの100Hz駆動に対応するIGZOディスプレイを搭載していたAQUOS R2よりも、最新のAQUOS R3は画面が少し大きくなったうえにリフレッシュレートが高速化している。
これは最新世代のPro IGZOを搭載していることに加えて、ソフトウェアのチューニングによる改善と、ハイパフォーマンスなクアルコムのSnapdragon 855 Mobile Platformの採用により実現しているのだという。その好影響は画面スクロール時に残像感の少ない描画が実現できることと、滑らかで心地よいタッチ操作に現れる。
HDRはHDR10とDolby Vision、HLGのほかにYouTubeなどが採用するVP9を含む4つの方式に対応した。SDRの映像をHDRライクにエンハンスして表示する「バーチャルHDR」機能も従来通り備えている。
Dolby Visionの映像について関氏は、有機ELディスプレイを搭載するAQUOS Zeroに採用したことから得たノウハウを土台に、Pro IGZOではさらに画面輝度が高くなって明暗の表現力に豊かさが増して、立体感も向上しているはずと語っている。Dolby Visonの映像モードは標準/シネマ/ダイナミックに分かれており、この中からダイナミックモードについてはより映像が鮮やかに見えるように、ドルビーとシャープが協業しながら独自にパラメータを調整しているそうだ。
AQUOS R3で視聴できるDolby対応のモバイル向けコンテンツはDolby Vision・AtmosがひかりTV、Dolby AtmosがU-NEXTで配信されているものに現時点では限られている。近くこれに、Dolby VisionはU-NEXT、Dolby AtmosはTSUTAYA TVで配信を予定するコンテンツが加わるようだ。本機の実力が発揮されるコンテンツがますます増えることを期待したい。
■アトモスコンテンツの楽しみ方は自由自在。完全ワイヤレスイヤホンの接続性も高めた
映像と音が一体となった没入感体験を導くために、AQUOS R3ではシリーズ初のステレオスピーカー内蔵を実現。Dolby Atmosの立体サラウンドを内蔵スピーカーとイヤホン端子経由の両方で楽しめるようにした。イヤホン・ヘッドホン再生はBluetooth対応ワイヤレス機器にも対応する。
Dolby Atmosのデモコンテンツを内蔵スピーカーで視聴してみたが、音のチューニングはやや明るく派手め。包囲感はとても豊かだ。低音がこもるような感覚はなく、セリフは輪郭線が明瞭。細かな音が鮮やかに粒立つ手応えが得られた。
楠田氏はAQUOSのスマホは従来から視覚的なリアリティを追求してきたが、サウンド部分のブラッシュアップについて今回は入念に行ったという。特にユーザーがスマホで撮影した動画もいい音と一緒に楽しめるように録音機能も強化している。
AQUOS R3の本体には最大130dBの爆音もクリッピングせずに録れるという高性能マイクユニットを内蔵している。その目的は爆音を録るためではなく、録音性能の限界を高く設けておくことで、日常の風景を録画したときに、例えば人の声や自然の音をクリアに収録できるようにするためであるという。
ワイヤレスオーディオについてはクアルコムのSoCであるSnapdragon 855 Mobile Platformが標準提供するQualcomm TrueWireless Stereo Plusに対応した。QCC3026などクアルコムのオーディオ用SoCを搭載する完全ワイヤレスイヤホンと組み合わせれば、音切れやノイズの少ないリスニングが楽しめる。
同じくSnapdragon 855のチップセットに標準搭載されるBluetoothオーディオの最新コーデックである「aptX Adaptive」(関連記事)にもAQUOS R3は初めて対応する端末になった。イヤホンやスピーカーなど、aptX Adaptiveに対応するレシーバー側のデバイスはまだ商品化されていないが、シャープの開発陣は高品質なサウンドと低遅延性能を両立した体験を提供できる技術であることに魅力と感じて、いち早くaptX Adaptiveに対応することを選んだという。
スマホでモバイルゲームを楽しむユーザーも増えていることから、音楽再生以外にも広がる高品位なサウンド体験にAQUOS Rシリーズがいち早く対応したことを今後も特徴としてアピールできると思う。