<山本敦のAV進化論 第176回>
「AQUOS R3」は“シャープらしい”着眼点で使いやすさ追求。開発者に聞く多機能のポイント
■15秒のダイジェストムービー記録機能「AIライブストーリー」がベンリ
スマホのカメラはマルチレンズユニット搭載が標準になりつつある。機能が高度化する一方で、その内容が複雑すぎてユーザーが置き去りにもされがちだ。AQUOS R3に内蔵されているカメラも非常に高機能だ。
背面にはツインレンズ仕様のカメラユニットを搭載する。ユニークな点はひとつを12.2メガピクセルの静止画撮影用標準カメラ、もうひとつを20.1メガピクセルの動画専用カメラとして役割を分けたことだ。ユーザーが必要な操作はカメラアプリを立ち上げて静止画・動画の撮影モードを切り替えるだけで、それぞれの違いを特別に意識しながら使う必要はない。
ただ、スマホのカメラがどれほど高機能になったところで、写真はともかく、スマホで撮影した動画は二度と見返すこともなくライブラリのファイルの山の中に埋没しがちではないだろうか。シャープがAQUOS R3で撮影した動画を「見る」ために搭載した新機能「AIライブストーリー」に注目したい。
これはAQUOS R3のカメラである程度の長さの動画を記録すると、AIがよいシーンを自動的に抽出してダイジェストムービーを作成してくれる機能だ。小野氏が新しい機能を載せた狙いについて次のように説明する。
「多くの場合、撮影者は動画の中で次に起きる出来事を覚えているものです。だから繰り返し見たくなるモチベーションを高めづらいのではないかと考えました。AQUOS R3ではAIエンジンを活用して、被写体の笑顔や動き、構図を評価して“スコア”の高い映像から約15秒のダイジェストムービーを作ります。異なるエフェクトやBGMなどを加えた3パターンのファイルが自動生成されます。15秒という長さは繰り返し見ることが比較的苦にならず、SNSなどでシェアもしやすい長さであると考えました」(小野氏)
ユーザーに求められることはカメラアプリを開いて、AIライブストーリーがオンになっていることを確認してから動画の撮影を始めるだけ。一定の長さでカメラを回すと、撮影終了後に自動でダイジェストムービーが記録される。動画の画質は最大フルHDだ。
AIライブストーリーのアルゴリズムは、ユーザーが「シャッターを押した瞬間」を含めて、笑顔、人物と動物の顔と動き、構図の順に重み付けされ、機械学習の結果とマッチングをかけながら見どころとなるシーンをピックアップしてつなぐ。各シーンは起きた出来事の順番で並ぶようになっているが、それぞれ長さはランダムで編集されて、足すと15秒前後のフッテージになる。プリセットされているシーン切り替えやフィルター効果、数十曲のBGMをバックグラウンドに置いた動画が作成される。
動画が見応えあるものになるよう、プロの映像クリエーターの協力によるシナリオを複数パターン読み込んで、そのアウトラインに沿って“ヤマ場”のあるダイジェストムービーが作られるところがポイントになるという、小野氏の説明が実に興味深かった。
撮影後には「スタンダード」「ファン」「リラックス」という3パターンの雰囲気が異なる動画がつくられる。小野氏は「動画を撮影するユーザーの方の“気持ち”まではAIでも解析ができません。そのため明るくテンポの良い『ファン』と、しっとりとした雰囲気の『リラックス』をスタンダードの他にもバリエーションとして設けています」と機能の成り立ちを語っている。
筆者も本機能を試してみて、何よりユーザーが細かい設定を事前に行わなくても、デフォルトでAIライブストーリーがオンになっていて、何も考えずにダイジェストムービーが記録できる手軽さにとても惹かれた。もちろんダイジェストの元ムービーも残るので安心だ。AQUOS R3のディスプレイが高精細なので繰り返し再生したくなる。
AIライブストーリーの動画には撮影した日付がすぐにわかるタイトル画が自動生成される。欲を言えば動画の見栄えするシーンをキャプチャーしてサムネイルにしてくれると、いっそうカメラを回したくなるだろう。そして、現状ではダイジェストムービーは1本のファイルを元にしてつくることしかできないので、今後複数の動画ファイルを指定してダイジェストムービーが作れたら、よりストーリー性に富んだ動画作品がつくれそうだ。スマホのストレージも節約できると思う。
■被写体ブレを徹底的に抑えたカメラ
AQUOS R3のカメラは静止画・動画撮影の手ブレ対策にも余念がない。静止画撮影は光学式、動画撮影は電子式と異なる方式の手ブレ補正を載せている。端末を手に持って動きながら撮影する機会も多くなる、スマホのカメラならではの強化だ。
さらに静止画撮影時にはAIが被写体の動きに合わせて最適なシャッタースピードを決定する新画質エンジン「ProPix2」の威力が発揮される。河野氏が機能の詳細を説明してくれた。
「例えば小さなお子様を撮るときなど、被写体が思いがけず動いてしまう場合があります。このような場面ではカメラ側の手ブレ補正機能だけでは対処できません。そこで、ユーザーがシャッターを押す前後の動画もキャッシュして、その中から出来のよい写真をベースに前後のフレームを比較してノイズなどを除去、合成して被写体ブレを可能な限り除去します」(河野氏)
なお本機能は連写撮影時など一部の場合を除いて、AQUOS R3のカメラに常時オンの状態で実装されている。例えば動物を撮影する際など、スマホをAQUOS R3にしたらキレイに撮れるようになったと感じることが増えそうだ。
インタビューの最後に楠田氏はAQUOS Rシリーズの進化の歴史を振り返りながら、今後も5G時代の到来に向けてディスプレイやカメラの機能を磨き上げていきたいと意気込みを語ってくれた。しかし同時に、誰でも手軽にビジュアルコミュニケーションが楽しめるユーザーフレンドリーなAQUOS Rを幅広い世代のスマホユーザーにアピールすることの大切さについても、楠田氏はインタビューのあいだ繰り返し強調していた。
筆者も今回新しいAQUOS R3に触れてみて、優れた機能をユーザーが楽しみやすいよう上手に料理した開発陣の腕前に感服した次第だ。
(山本 敦)