<山本敦のAV進化論 第177回>
ソニーは「Xperia 1」で“未開の感動画質”に踏み込んだ。「もう後には引けない」レベルのこだわりとは?
画質設定をクリエイターモードにしてからホワイトバランスの値を個別にカスタマイズすることもできるので、やはり色温度の国際基準である6500K(D65)に合わせたいという方は、手もとで測定した値を保存して使うこともできるようになっている。
テレビの映像モードのように複数のプリセットを設けず、あえてクリエイターモードとスタンダードモードの2つに絞った理由については、松原氏が「私たちが提供したいと考えている、クリエイターの意図を忠実に再現できるXperiaという立ち位置をより明確に伝えることを優先したから」だという一本筋の通った答えを返してくれた。
■Xperia 1は5G時代に欠かせない高画質の新基準をつくった
Xperia 1はクリエイターモードにセットした場合に限らず、基本的な画づくりのレベルがとても高いということは、おそらく多くのユーザーが見てすぐにわかるはずだ。でも一方で、クリエイターの意図を忠実に反映した画質であるかどうかについて、ユーザーは個々のクリエイターに直接聞くことができない。何を基準にその価値を判断すれば良いのだろうか。岡野氏がとてもわかりやすい基準を示してくれた。
「例えば設備が整っている映画館で観た映像はよい評価基準になると思います。スクリーンに映される画はマスターモニターでカラーグレーディングを行った画そのものであるはずなので、その映像の記憶をXperia 1のクリエイターモードと比べてみると価値が実感できるのではないでしょうか」(岡野氏)
ソニーグループの知恵と経験を寄せ合ったXperia 1の画づくりは成功を収めたと言って良いだろう。松原氏は「今回の開発から得たノウハウが、今後のXperiaの画質設計のベースになっていくだろう」と考えを述べている。
そして岡野氏をはじめ、ソニーの業務用映像機器の開発チームも「やる気」である。
「一度ここまで突き詰めてしまったら、もう後には引けないですよね(笑)。ソニーが持てる強みは、まさしく今回の私たちの取り組みに代表されるような『好きを極めるものづくり』に対して愚直に挑戦できることであると自負しています。昨今はスマートフォンのテクノロジーが成熟しつつあるとも言われていますが、少なくともディスプレイの画質をより良くするところでは、まだやるべきことが多く残されていると思っています」(岡野氏)
感性の領域にまで踏み込みながらスマホの「画質」「音質」を磨き上げてきたXperiaの「クオリティに対するこだわり」は、おそらく他のメーカーによる追随を許さない所にもう到達している。殊にその感動を呼び覚ます高画質は、今後スマホのディスプレイがどのような形・サイズに変わったとしても、5Gの時代に主流を迎えるであろうモバイル向け高品位エンターテインメントに欠かせない価値としてさらに強い脚光を浴びることになるだろう。
(山本 敦)