<山本敦のAV進化論 第183回>
“zero”の個性はゲーミングスマホで突き抜けた ー 「AQUOS zero2」開発者インタビュー
■強度にも妥協せず「軽さ」を徹底追求した
初代機のzeroからまた一段と軽量化を押し進めたzero2の質量は約141g。端末が発表された当初は約143gとしていた質量がさらに2gも軽くなっている。zero2はディスプレイが初代機よりも大型化して、カメラもシングルレンズからダブルレンズになった。にも関わらず、なぜ初代機との比較でマイナス5gもの軽量化を実現できたのだろうか。篠宮氏は「内部の重量削減」に徹底的に挑んだことを理由に挙げている。
zero2の基板は初代機と比べて24% - 25%軽量化できた。篠宮氏はこれが細かなところまで突き詰めた軽量化の積み重ねによる成果だと胸を張る。zero2は開発時から「ボディの軽量化」を最も重要なミッションに掲げてきた。既存の部品や構造は強度を十分に確保しながら、その意味を吟味して必要なものだけを残し、あとは全てを削った。「私たち開発陣もここまで軽くできるとは思っていなかった」と、インタビューに応えてくれた3人が目を合わせて笑った。
強度を保ちながら軽量化ができた理由は、初代機zeroの開発により得られた経験を活かせたことだと田邊氏が解いている。田邊氏が専門とする放熱設計も一緒だという。
「放熱は基本的に端末の表面からしかできません。表面全体を効率よく放熱に使うことが設計の面で大事になります。最大の熱源はSoCであるSnapdragon 855になります。SoCから発生した熱をフロントとリアのパネルに逃がして放熱するために、内部に配置する放熱シートのサイズ、熱伝導材の配分はトライアル&エラーを繰り返してきました。1mm単位のブラッシュアップは当社に豊富なシミュレーションのノウハウがあります。これを活かしながらコンマゼロ1g単位での軽量化と、強度を保ちながら放熱効果の高い筐体構造を突き詰めています」(田邊氏)
1mm単位でシミュレーションと実測を繰り返して0.01グラムの世界でミッションを完遂してきた。樹脂キャビネットもSoCの熱が直接伝わらないよう、削った箇所に空気槽を作り熱を効率よく逃がしているという。
zero2はふたつの充電ICを載せて、充電中の発熱を抑えるパラレル充電機構を初代のzeroから継承している。本体の軽量化を図るためには不利になるコンポーネント構成のように思えるが、そこはハイパフォーマンスを維持するためには譲れなかったと篠宮氏が話している。
■ゲームに最適な240Hz駆動の有機ELディスプレイ
端末の軽量化を最重要課題として掲げながら、画面のサイズは約6.2インチから約6.4インチに大きくなった。理由は「トレンドに乗ることも大事と考えたため」だと篠宮氏が説いている。カメラも軽量化を重んじるのであればダブルレンズユニットを搭載することは不利な選択になるが、「多くの人が欲しいと感じてもらえるスマホ」にするためのトレンドを盛り込むことも同様に重要視された。
ディスプレイの性能向上については、通常の4倍にあたる240Hz駆動を実現している。AQUOS R3にもある、屋外でもディスプレイを見やすくする「アウトドアビュー」を採用する。
240Hz駆動は、120Hzの描画性能を持つ有機ELディスプレイの画面表示に、黒画面を挿入して網膜残像によるホールドボケをキャンセルする疑似インパルス駆動技術を土台にしている。
黒挿入による倍速表示技術については、AQUOSのテレビ製品の開発によるシャープの豊富な知見が活かせそうだ。意外にもスマホに載せたケースは今回が初めてだという。倍速表示技術はスマホに最適化するための一工夫を加えた。フレーム全体に黒画面を表示する方法ではなく、画面の50%前後を占める黒い帯が上から下にローリングする表示方法として、滑らかな動画表示と画面の明るさを最重視している。「色々な手法を試して、最終的には自発光方式の有機ELディスプレイにはこの方法が最適だった」と篠宮氏が理由を語っている。
画面の表示に合わせてタッチパネルのレスポンスも240Hz駆動に合わせこんでいる。60Hz表示のゲームを楽しむ際にも快適な操作性につながる。表示の更新に合わせて内部処理も短縮化・高速化している。Snapdragon 855を採用したことでレスポンスの向上だけでなく発熱も抑えられたのだと田邊氏が念を押す。
zero2のユーザーインターフェースは「AQUOS便利機能」の中に「ゲーミング設定」を新設。中に入って「ハイレスポンスモード」をオンにすると、ゲーミング設定を登録したアプリ単位で240Hz駆動による、残像感を抑えた精細な表示と高速タッチレスポンスに切り替わる。
アプリはゲーム以外にも設定ができる。例えば電子書籍アプリを登録すると、ページめくりがとても気持ちよく行える。アプリを一度設定すれば、あとは毎度立ち上げるだけで240Hz表示に切り替わる。通常よりも240Hz駆動の方が表示計の電力消費は増えるが、アプリ単位での設定になるため端末のバッテリー消費は低く抑えられる。