「SC-HR2000」スペシャル対談
クリプトン渡邉氏×生形三郎、スピーカーの真価を引き出す「バイワイヤリング接続」の魅力
生形氏:アンプを左右で独立させデュアルモノラルで使えば音質改善への効果はとても大きいですが、その分システムが大規模化してしまいます。ですので、バイワイヤリング接続によってそれと同等の恩恵が得られるというのは実に嬉しい限りです。
渡邉氏:ボイスコイルの巻き数が多くサイズが大きい方が発生する逆起電力も大きくなるため、バイワイヤリング接続の効果を、より顕著に感じられるでしょう。また、ジャンパー線による音質変化を防げることも大きいです。バイワイヤリング接続することで、スピーカーが本来持っている音を引き出せると言っても、過言ではありません。
生形氏:エッジワイズ線を用い、なおかつ巻き数が多いボイスコイルを採用するクリプトンのウーファーは、余計にその恩恵が大きくなりますね。また、最近は、小口径でも低音域を効果的に引き出すために、振動板の振幅動作距離が長いロングストローク設計のウーファーを搭載したスピーカーも多いですから、逆起電力の影響を抑えられるバイワイヤリングの効果が広く享受できると言えそうです。
加えて、おっしゃる通りジャンパー線は接点も増え音質変化が大きいので、スピーカー自体が持つ魅力をよりピュアに味わいたい方にとっては、それを回避できることも大きなメリットと言えます。
■トゥイーター用とウーファー用に最適化されたケーブル接続を1本で実現
生形氏:バイワイヤリング接続による音質の向上は目覚ましいものだと思いますが、システムに取り入れているユーザーが、まだまだ少ない状況です。スピーカーケーブルを別に1ペア追加しないといけないことや、アンプ側がスピーカーターミナルをA/Bの両方が必要になる印象など、ひと手間掛かってしまう点が消極的になってしまう理由だと想像されますが、そういった点においてもSC-HR2000を使用するメリットは大きいのではないでしょうか?
渡邉氏:従来のバイワイヤリング接続のイメージでは、トゥイーターもウーファーも同じスピーカーケーブルを用いることが多いですが、バイワイヤリング対応スピーカーケーブルとして打ち出したSC-HR2000は、トゥイーター用とウーファー用にそれぞれ最適なスピーカーケーブルを組み合わせ、ひとつのスピーカーケーブルに4線の構成を取り入れたことが大きなポイントです。
生形氏:私も、自宅のスピーカーシステムでは、帯域ごとに異なるスピーカーケーブルを使い分けていますが、スピーカーユニットの特性やキャラクターに合った線材を使うことによる音質のマッチング効果はとても大きいと実感しています。その意味で、一本のケーブルの中に、高域用と低域用とに最適化された信号線を内蔵するSC-HR2000は、実に魅力的な製品だと感じているのですが。
渡邉氏:この4線構成は、SC-HR2000と同時に発表した、ブックシェルフ型スピーカー「KX-5PX」の内部配線材を新たに開発したことがきっかけになりましたね。
生形氏:KX-5PXで導入された、トゥイーターとウーファーの各ユニットの特長に合わせて内部配線材を吟味していったことが、新たなコンセプトを打ち出すスピーカーケーブルの開発に繋がったのですね。まさに、よりよいスピーカーの開発を模索する中で生まれるべくして生まれたケーブル、という強い必然性を伴っているところが素晴らしいです。また、トゥイーター用のスピーカーケーブルでは、「KX-3Spirit」で採用されたマグネシウム芯線(単線)にPC-Triple Cの撚り線を巻き付けた内部配線材のノウハウが活かされていますね。
渡邉氏:マグネシウム芯線を導入すると、高域のリンギング、ヴァイオリンの生音とは違ったきつい音などが解消され滑らかな表現になります。そのノウハウをトゥイーター用のスピーカーケーブルに活用し、ウーファー用は従来からの設計をさらに洗練させたスピーカーケーブルを採用しました。
SC-HR2000は、スピーカー開発の段階を経たからこそ誕生したものです。我社で開発したスピーカーケーブルを、スピーカーの内部配線材として使用することは「KX-5P」の開発時から行っており、その際はPCOCC-Aを導体に用いた「SC-HR1000M」を採用していました。
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