【特別企画】SACD/MQA CD/ネットワーク再生に対応する多機能プレーヤー
「一番の魅力は音が良いこと」。テクニクス初のSACDプレーヤー「SL-G700」の魅力を開発者、評論家、オーディオ誌編集長が語る
■「これだけの機能を詰め込んでトータル28万円は本当にすごいこと」
伊佐山:しかし多機能なことに加えて、内部を4分割構造にすることで各ブロックを独立させたり、無帰還型スイッチング電源に安定化回路を組み合わせたりと、技術的にも盛り沢山な製品ですよね。改めてすごさを感じます。
井谷:私はかつて、パナソニックブランドの高級DVDプレーヤーの開発も手掛けていました。内部を4分割する構造などは「H1000」というプレーヤーから引き継いでいるんです。そういう蓄積が今になって活きてきているのかな、と思いますね。
それと、個人的にも技術の熟成に自信を持ててきているのが、電源部なんです。この電源はスイッチング電源で、つまりデジタルですが、アナログ電源と違ってトランスが振動を起こさないんですよね。その代わりノイズを発するわけですが、この対策のため、電源部をBOX構造のシールドケースで完全に囲み、しかも天板からも底板からも浮いた構造にしています。これによってノイズをケースの中で閉じ込め、外に洩れないようにしています。
新生テクニクスの初代モデル「R1」「C700」の頃は、どうしてもアナログ電源には敵わず、アナログ電源を使っていました。スイッチング電源の使いこなしにはこの3、4年、かなり力を入れており、ずいぶん蓄積ができてきたと感じます。
鈴木:振動やノイズの問題はAA誌でもよく取り上げますけど、デジタルデバイスのノイズが乗ると、空間がスモーキーになったり、歪みっぽい音になるんですよ。さきほどじっくり試聴させていただき、そこへの対策がしっかり行われているな、ということがよく分かりました。
伊佐山:このスイッチング電源は「無帰還型」ですよね。
井谷:通常の、帰還をかけるスイッチング電源というのは、負荷電流によってスイッチング周波数を変え、レギュレーション即ち電圧の安定性を上げているのです。スイッチング周波数自体は数百kHzのところにいるので、音に直接影響しないんですが、動くことで音を濁してしまうので、効率は悪くなりますが無帰還型にし、周波数を固定しましょう、というのが無帰還型スイッチング電源です。レギュレーションも落ちてしまいますが、そこはアナログのレギュレーターを入れてやることで確保しています。
伊佐山:それが「無帰還型スイッチング電源回路と独自制御による安定化電源回路を組み合わせたハイブリッド電源」ということですね。データでもはっきりと効果が出ています。
井谷:ここは、うちのエンジニアが頑張ったところです。アナログ電源だとハムノイズなどが乗ってきますが、デジタルなら無いですし、ノイズフロアのレベルも、さっき申し上げたように色々手をかけて押さえ込んでいますので、スイッチングでもS/Nの高い電源が出来ました。
鈴木:エンジニアの皆さんが本当に努力して、設計も何回もやり直したんだろうなと思うんですけど、これだけ色々考えられているのにトータル28万円で抑えたというのが本当にすごい。
伊佐山:実際すごく売れているみたいですが、ユーザーもちゃんと見てるな、と思いますね。これだけの機能を備え、これだけの仕様でこの価格というのは、今までにもそうはなかったように思います。開発にも時間がかかりましたか?
井谷:すべてあわせると、2年くらい開発にかけたんじゃないかな…。最初の披露は「IFA 2018」でしたけど、そこから発売までに丸々1年かかっていますからね。
鈴木:僕もその時のこと覚えてます。当時は「へえ、SACDプレーヤー出すんだ」くらいの感想でしたけど、実際に1年経ってみたら「そうだよね、SACDも対応してないとね」って思いましたよ。発表から発売までの1年間でSACDやMQA CDといった、物理メディアでハイレゾデータ再生できるものに対する要求が高まった感覚はありますよね。